2009年12月11日

【マジック裁判・刑事】最高裁決定!

マジックに使うギミックコインを作るために、日本円硬貨を収集したとのことで、貨幣損傷等取締法違反、そして、海外で作らせたコインを日本に輸入したとのことで、関税法違反で起訴され、これでは事実上日本円のギミックコインが使えなくなるとの理由で、マジシャンの表現の自由を不当に制約するものとし、憲法21条1項違反を理由に、無罪主張をしていた事案。

第1審当時、法廷において初めてギミックコインを用いたマジックが行われたということで話題になり、TV、ラジオ、新聞等でも取り上げて頂いた事件の最高裁の決定が、平成21年12月9日付けでようやく出ました。

上告して約2年。さぞかしまともな判決がでるかと少しは期待していたのですが・・・・
紙っぺら1枚の、上告棄却の決定。以下、理由部分の全文引用します。(事件番号 平成19年(あ)第2066号)

「弁護人小野智彦の上告趣意のうち、憲法21条1項違反をいう点は、貨幣損傷等取締法は、貨幣の信用を維持し、経済取引の円滑を期するとの見地から、貨幣を損傷等する行為及び損傷等する目的で集める行為を禁止するものであり、また、関税法は、同様の目的から、貨幣の偽造品、変造品及び模造品の輸入を禁止するものであって、手品ないしマジックを演ずる自由を規制するものではないから、前提を欠き、その余は、単なる法令違反の主張であって、刑訴法405条の上告理由にあたらない。
よって、同法414条、386条1項3号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。」

なぜ、これだけの決定を書くのに、2年もかかるのか・・・。
もちろん、決定の内容はある程度推測していたにしても、さんざん待たされた被告人を納得させるだけの充実した理由付けが欲しいところです。なぜなら、被告人は判決の確定まで、執行猶予の起算が始まらないのです。明らかに、被告人の地位を蔑ろにしています。

最高裁が日本に一つしかなく、事件数が多いのも分かりますが、もっと、被告人の立場に立った刑事司法を実現して頂きたいものです。

不本意ながらも、これで、決着がつきました。
長い間応援して頂いた方々、見守ってくれた方々、ありがとうございました。

投稿者 ono : 16:40 | コメント (0)

2009年04月22日

【マジック裁判(民事・控訴審)】判決言い渡しがありました。

今日、午後1時15分より、東京高等裁判所824号法廷にて、判決の言い渡しがありました。

控訴棄却判決でした。

なかなか裁判官には、こちら側の言い分を理解し難いようです。
報道の自由というのは、そんなに伝家の宝刀になるのでしょうか?
マジックを趣味としている庶民の楽しみを奪うことが、いとも簡単にできてしまってよいものなのでしょうか?仮にも、報道をしているのは、社会的権力であるマス・メディアなんです。

とは言え、この裁判を起こしたことで、マジシャンも怒るんだということ、法的な土俵の上で戦うことができるんだということを、マス・メディア側に示すことができただけでも、大きな前進だったように思います。

この裁判の後、マジックの番組は減ったものの、内容の良いマジック番組が放映されるようになったように思います。

民事裁判については、ひとまずこれで終了ということとし、上告はしない方針です。
これまでご協力頂いた、数多くの方々、特に、原告団に名前を連ねて頂いた方々、寄付をしていただいた方々、誠にありがとうございました。

まだ、刑事事件の方の最高裁判決が出ておりません。H19.12に上告しましたので、もうそれから1年半が経とうとしています。
有罪判決になるにしろ、無罪判決になるにしろ、きちんとした判決が出されることになると思います。こちらの方が出ましたら、また記者会見を開くなり、こちらのブログで発表するなりさせて頂きます。今後とも、動向を見守りください。

ありがとうございました。

投稿者 ono : 17:12 | コメント (5)

2009年03月16日

【マジック裁判(民事・控訴審)】和解期日並びに第2回弁論報告!

2月26日に和解期日が、そして、本日第2回口頭弁論が開かれました。

2月26日の和解期日は、裁判所からの職権による和解勧告に基づくものであり、私たちも当然のように和解で解決することを望んでおりました。

そして、今後テレビ局とは協同関係という良い関係が作れるべく、そして、マジシャン側が常に「また、種明かしをされるんではないだろうか。」という恐怖から逃れられるような和解案を作成し、和解期日に望みました。

まずは、マジックのことを理解していただくためには、マジックを見ていただいて、その種の重要性を認識していただくのが一番だと思い、相手方も含めて、藤山さんによるマジックの実演を申し入れましたが、相手方は断固としてみようともしない。
結局、裁判官相手にマジックを演じていただき、それなりにこちら側の主張内容を理解していただいたように思いましたが、何分、相手方が「全く和解の意思はない。」との強硬な態度の下、全く話し合いにはならず、和解は決裂に終わりました。

ただ、この問題については、昔から発生し続け、全く改善の歴史が見られないところでもあります。私の意見としましては、公の機関(私は、(社)日本奇術協会が音頭をとるべきだと思っていますが)が、マジックの種の扱いについてのガイドラインを急遽作成し、マジシャン側の種の扱いについての考え方をしっかりと関係各所に送付して示していくような努力をしない限り、いつまで経ってもこの問題は改善されないものと考えます。是非、ご検討していただきたいところです。

そして、本日、第2回目の口頭弁論です。

今回の準備書面では、①「報道の自由」という金科玉条のごときお題目があれば、マジックを演じるという表現者の権利は全く無視されても良いのか、しかも、相手は大手テレビ局という社会的な権力であって、国家にも比肩すべき存在であり、安易な利益衡量によってテレビ局の肩を持つような判決をするべきではないという点、つまり、憲法の人権規定を斟酌してくださいという点、そして、②社会的弱者であるマジックを演じる表現者の権利を制約する以上は、それ相応な正当な理由をしっかりと示すべきであるという点を主張しました。そして、以下の2点について求釈明を行いました。
(1)本件のような物珍しいといういわば珍事件と言うだけで、過去にここまで、つまり4日間にわたって報道の対象にしたことがあるのか。
(2)4日間にもわたってまで種明かしを含めて報道をしなければならなかった理由は何か。
しかしながら、相手方からの回答は、無きに等しいものであり、残念なこと、この上なしといった感じでありました。テレビ局の奢りさえ感じるものでした。
少なくとも、結果はどうなるにしろ、国民に対して社会的責任を負ったテレビ局は、もっと誠実に回答するべき義務があるのではないでしょうか。

ということで、残念ながら、本日で弁論終結です。
判決は、4月22日午後1時15分から、東京高等裁判所824号法廷で行われます。

なお、1審の判決が、判例時報2027号32頁に搭載されました。ご興味のある方は、ご覧になってみてください。

追伸 日本テレビの久保伸太郎社長が「真相報道バンキシャ!」裏金誤報問題で引責辞任したとのことです。視聴率至上主義になっている報道のあり方が、根本的に問われなければならないと思います。

投稿者 ono : 14:20 | コメント (2)

2009年02月16日

【マジック裁判(民事・控訴審)】第1回弁論報告!

本日、東京高等裁判所第824号法廷にて、日テレ、テレビ朝日相手の不当な種明かし訴訟の第1回目の控訴審がありました。

今後の方針について裁判長から聞かれましたので、
1 話し合いの道を探りたい。
2 非公式な場で構わないから、一度藤山新太郎氏によるマジックの実演を見て頂き、マジックに対する理解を深めて頂きたい。
3 種明かし部分をモザイクで消し、種を尊重した番組作りをしたフジテレビの某番組について、反訳書面を出したい。

という話をしました。

相手方の意見を裁判長が問うと、
「即座に弁論を終結し、判決をいただきたい。」
とのこと。どうやら、テレビ局は、円満解決の選択肢すらないらしい。マジシャン側の怒りは、全く意に介せずといった感じだ。

裁判官らが今後の進行について合議をした結果、
1 審理を続行する。
2 同時に、職権による和解を勧告する。
とのことでした。
裁判所も、話し合いによる解決が良いと当然に思っているのでしょう。

ということで、次回和解期日が2月26日午後1時から(こちらは傍聴できません)、次回弁論期日が3月16日午前10時から(こちらは傍聴できます・824号法廷です)と指定されました。

とりあえず、2月26日には、こちら側が和解案を練って、提出することになっています。
和解案についての構想は、既に藤山氏、両代理人(小野・外岡)の話し合いにより、あるのはありますが、中々難しい面もあり、皆さんのご意見をいただきたく、よろしくお願いします。

投稿者 ono : 18:34 | コメント (1)

2009年02月10日

【マジック裁判(民事・控訴審)】第1回弁論 2月16日!

日本テレビ、テレビ朝日を被控訴人とした、マジックの不当な種明かし裁判の控訴審が、いよいよ始まります。

2月16日午前10時より、東京高等裁判所824号法廷です。

場所は、東京地方裁判所と同じ建物です。

裁判所から、傍聴人の人数等の問い合わせが来ておりますので、傍聴希望の方は、一報頂けると助かります。

引き続き、報道目的の不当性、報道方法の相当性の逸脱を主張することとなりますが、いつまでも喧嘩をしていても仕方がありませんので、今後のテレビ局とマジック界とのより良い協同関係を築くべく、良い形での和解を探りたいと思っております。

引き続き、注目して頂ければ幸いです。

投稿者 ono : 17:16 | コメント (2)

2008年11月13日

【マジック裁判・民事】控訴申立て及びカンパのお願い

先日、敗訴判決を受けたマジック裁判(民事編)の件でございます。
記者会見場で、原告団長である藤山新太郎氏が「最高裁まで徹底的に争う。」という趣旨の発言をいたしました。原告団が総勢98名おりますし、中には「控訴すべし」「控訴すべきでない」等、様々なご意見だと思いましたので、原告団全員に意見を求めるべく、委任状の送付とカンパのお願いを任意でお願いしたところ、「是非控訴審、頑張ってください。」「応援してます。」という力強い声が多く、カンパも有り難いことに集まり始めましたので、昨日(11/12)、控訴を申し立てましたので、報告します。

ただ、控訴審も、皆様のカンパによって行う以外に資力がございません。原告団の方々、また、原告団には加わっていないけど、趣旨に賛同して頂ける方々、何卒カンパを頂きたく、ご協力の程お願いします(一人、一口1000円で、一口以上であれば、いくらでも構いません)。

 【振込先】
三井住友銀行 巣鴨支店
普通 7098744
マジック裁判カンパ 弁護士 小野智彦

なお、控訴審からは、外岡潤弁護士が加わります。彼もマジック愛好家の一人であり、協力しながらやっていきたいと決意を新たにしています。

以下に、この裁判と判決の概要を記しておきます。ご自由に転載してくださって結構です。
 

私たち原告団は、一審で、被告らの不当な種暴露放送によって、我々が所有しているギミックコインの財産的価値が下がった、ということをメインに主張しました。それは、あたかも推理小説を買ったそばからその結末を公表されるがごとしであり、当然「金返せ。」となります。これと同じ理屈を立てました。
これまでは、特にクラシックマジックについては、その種の部分が著作権や特許権のような法的保護になじむものではありませんでしたので、不当に種を明かされても法的な土俵に乗せることは困難だったのですが、先のような理屈で勝負できると考えました。
もちろん、テレビ局による種暴露放送の内容が、不当、違法であることが前提となりますので、私たちとしては、犯罪報道に際して「なぜ種を暴露する必要があるのか。」ということを問い続けてきたのです。

ところが、裁判では全く議論がかみ合わず、平行線のままでした。テレビ局の主張は、手品の種は調べればわかるし、道具を購入すればついてくるものだし、「絶対的な秘密」には当たらず、種明かしは「秘密の暴露」には当たらず、放送は不当、違法ではないとの主張を相変わらず続け、10月30日に下された判決は、このようなテレビ局の主張を追認する形になりました。
判決の引用部分です。
「本件報道の対象となったギミックコインの存在及び奇術の種は、本件報道以前から、それを説明する書籍やギミックコインを購入した際に付されている取扱説明書等によって一般に知り得る状況にあったものであり、現在も上記の書籍等やインターネット上の記事において知り得るところ、これらは本件報道でのギミックコインの種の説明によってされるようになったものではなく、本件報道とは関係がない」
裁判の中で、あれほど書籍や取扱説明書での説明と、テレビ局による全国放送とは、性格が全く違う(求めて行き着く情報と、晒される情報の違い)ということ、そして、マジックの種がマジックの現象の命そのものであることを、裁判所は全く理解していないことが、ただ露呈されただけでした。この事実誤認が前提となり、こちら側の請求は全て棄却されたのでした。

 私たちは裁判の中で、種明かしには、大きく分けると3種類あると主張しました。
① レクチャーとして指導目的で種を「教える」場合。
② 学習目的でお金で種を買う場合(ギミックを購入した時の解説書面を含む)。
③ 単なる「暴露」の場合(興味本位の場合を含む)。最後の場合を、特に英語では''exposure''と表現しています。的を得た表現だと思います。

本件は、③以外の何ものでもない、全く根拠不明な種の「暴露」だったのです。しかしながら、判決は、「被告らが本件非議事実をテレビジョン放送によって視聴者に分かりやすく報道するために、単にギミックコイン自体の映像及びこれに対する出演者等の説明、ナレーション等の音声情報に加え、ギミックコインの現物及びその一般的な使用方法を実演する映像などを用いた説明によって、ギミックコインの構造ないし仕組みを動きを伴って説明したことが不相当なものとまでは認められず、この実演等による説明過程でギミックコインの種が視聴者に明らかになることもやむを得ないものと認められる。」と示されました。全くマジシャン側の事情が汲まれていない内容となっています。

中々裁判官に理解させることは難しいのかも知れませんが、精一杯力を尽くしていきたいと思います。ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いいたします。

 

投稿者 ono : 17:26 | コメント (2)

2008年10月30日

【マジック裁判・民事】判決言い渡し!

本日、判決の言い渡しがありました。
結果は、請求棄却判決、平たく言えば、敗訴判決です。

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20081031k0000m040039000c.html
判決は、28頁に及ぶ大部のものでしたが、中身は全くありません。

言い渡し後、記者会見を開き、手品の種を知ると言うこと、そして、ギミックコインという存在を知ると言うことが、どれだけ手品のおもしろさを減殺しているかということについて、藤山新太郎氏が実演を交えながら説明をしていました。記者の方々は、感嘆の声を上げておりましたが、やはり裁判においても、もっと裁判官にはマジックの楽しみが分かってもらえるくらい、見てもらわない限り、この辺のことは理解不可能なんだろうと改めて思いました。

判決内容の詳細は、また別の機会にアップします。

刑事事件の最高裁の判決もまだ下りていませんので、ここで火を消すのはどうかという問題もあり、今後控訴するかどうかも含めて、皆さんの意見を聞きたいと思っています。

控訴することとなったら、また原告団の方々には委任状を書いて頂くべく、封書が届くかと思います。また、カンパの方をお願いすることになるかと思います。その折りには、またよろしくお願いします。

http://video.mainichi.co.jp/viewvideo.jspx?Movie=48227968/48227968peevee216421.flv

http://fnn.fujitv.co.jp/news/headlines/articles/CONN00143257.html

投稿者 ono : 17:01 | コメント (5)

2008年10月29日

【マジック裁判・民事】明日(30日)の判決言渡しについての補足です。

予定通り、判決の言い渡しがあります。
午後1時に東京地方裁判所の正門(地下鉄霞ヶ関駅A1出口を出てすぐ)に待ち合わせでお願いします。藤山さんが和服でいらっしゃるようですので、それを目当てにお集まりください。

言い渡しの法廷は、708号法廷です。
傍聴席は、全部で32席あるそうですが、記者席だけで14席すでに埋まっているとのことですので、一般用には18席しかないとのことです。

我々が正門から裁判所に入るところと、法廷で判決言い渡し前のシーンで、テレビカメラが入ります。
その後の記者会見でも、もちろんテレビカメラが入ります。

記者会見に一緒に出席して頂ける方は、判決言い渡し後、708号法廷に来て頂き、一緒に司法記者クラブ(裁判所内)へ同行して頂くことになります。
会見場で、私たちと一緒に、会見される側の席に着いて頂くことになります。お話しや実演は、私と藤山さんが行いますので、座って頂けるだけで結構です。

何かご質問等がありましたら、私宛にメールをください。それでは明日、よろしくお願いします。

投稿者 ono : 13:25 | コメント (0)

2008年10月28日

【マジック裁判・民事】10月30日午後1時15分、いよいよ判決言い渡し!!

日本テレビ、テレビ朝日相手に、訴訟を行ってきた、不当な種明かし裁判の判決が、いよいよ明後日に言い渡されることになりました。

10月30日午後1時15分
東京地方裁判所708号法廷

当日は、裁判の結果にかかわらず、午後1時45分より、司法記者クラブにて記者会見を開きます。
もしお時間のある、原告団の方、或いは、マジシャンの方、一緒に会見席に座りませんか?

会見には、テレビカメラが入ります。そこで、今回問題となったギミックコインを含めて、藤山新太郎さんがコインマジックを行います。藤山さんのクロースアップマジックを見る機会は、とても希少だと思います。

NHKからの要望で、原告らが裁判所へ入るところを、カメラに収めたいのだそうです。映っても良いよ、という方は、午後1時に裁判所正門前にお集まりください。

参加予定の方、私宛に、メールをいただけると事前の人数の把握ができて助かります。よろしくお願いします。

投稿者 ono : 13:51 | コメント (1)

2008年09月08日

【マジック裁判・民事】9月2日結審、10月30日いよいよ判決言渡し!!

9月2日、第10回目の口頭弁論が開かれ、原告ら側の最終準備書面が陳述され、結審にいたりました。
前代未聞の裁判でもあり、どのような判決が示されるのかが注目されるところです。
注目の判決は、10月30日午後1時15分より、東京地方裁判所708号法廷にて言い渡されます。
判決言渡し後に、記者会見を開く予定です。

なお、今回こちら側で出した最終準備書面を、長くなりますが貼り付けておきます。
前回の藤山さんの尋問内容を受けて、争点がさらに絞れましたので、まとめ直した形になります。
お時間のあるときにでも、ご一読ください。

平成19年(ワ)第10875号 損害賠償等請求事件
平成19年(ワ)第18783号 損害賠償等請求事件
原 告 ら 土 戸 直 哉 外104名
被 告 ら 日本テレビ放送網株式会社 外1名

原告最終準備書面

                          平成20年8月29日
 東京地方裁判所民事第25部甲1A係御中

             原告ら訴訟代理人弁護士  小  野  智  彦

 「秘すれば花なり、秘せずば花なるべからずとなり。」
                    花伝書(風姿花伝)世阿弥編より
第1 本件の問題点
 1 本件の被告らの報道は、ギミックコインの製造について、貨幣損傷取締法違反の容疑で製造者兼マジシャンが逮捕されたことを契機として、いわゆる犯罪報道の一環としてなされたものであり、その報道の必要性は、報道局の判断によるところが大きいし、珍しい容疑だということであれば、話題性もあることから、契機となった事件を報道すること自体に疑問を差し挟むものではない。
   問題は、犯罪報道としての相当性を超えているのではないか、という点であることは繰り返し述べているところである。
 2 相当性を超えるのではないか、ということで原告らが問題としているのは、いわゆる「種明かし」の部分である。
 (1)まずは、「種」の種類についてである。
    土戸証言からも明らかなように、「種」という言葉には2種類の使われ方がある。一つは「ハード面についての種」であり、もう一つは「ソフト面についての種」である。
    つまり、前者(ハード面)については、ギミックコインで言えば、どういう構造になっているのかということであり、例えばシガースルーコインであれば、コインの真ん中に開閉式の穴が開いている、ということであるとか、フォールディングコインであれば、2つ折り、3つ折りに折れ曲がる構造になっており、折曲がった状態から手を放すと元のコインの状態に戻るとか、そういう客観的なギミックの構造のことである。
    被告テレビ朝日の準備書面(4)によれば、警視庁も(捜査官)が報道陣に対し、「本件コインの損傷状況及びそれと手品との関係を説明したことについて、種明かしになるがやむを得ないことであると認めている」として、土戸本人調書16頁を引用するが、全くの的はずれである。警察が報道陣に説明をしたのは、例えば甲2の4の3,6頁、一番上の2枚の写真については、左側(フォールディングコイン)は、500円玉が3つ折りになる客観的な構造を示しているだけであるし、右側(パンクチャーギミック)は、100円玉に穴があり、そこにボールペンが突っ込まれている客観的な状況を説明しただけである。確かに、マジックに使われるコインという説明をしているのであろうが、これらのコインをどのようにマジックに使うのか、についてまでは説明がなされていない。
    マジックの道具は、往々にしてそうであるが、説明書がなければどのように使ったらよいのかすらわからないものであり、ただ折れ曲がるコインをみせられても、どう使うのかまでは分からないため、マジシャン側(ギミックコイン所有者)も、そこまでの説明であれば、客観的な構造の説明のみで現象と結びついていないために、実害もそれほど大きくなく、公共の福祉のために甘受せざるを得ないと考えられる。
    しかしながら、これらのギミックをどのようにマジックに使うのか、という現象を起こすためのやり方(ソフト面についての種)についてまで説明するのは、マジックそのものを崩壊させるもの以外の何ものでもない。
    つまり、同じ種であっても、原告らが最も問題としているのは、「ソフト面についての種」であって、これは「ハード面についての種」と厳格に区別されなければならない。
    これまで述べてきた「種暴露」の問題における「種」については、いずれも「ソフト面についての種」を前提に主張してきたものである。マジックの現象が「花」たるや、「ソフト面についての種」が秘すればこそなのである。
 (2)次に、テレビ局は、マジックの種(ソフト面についての種)の重要性をしっかりと認識していながら、本件のような「種暴露」を行ったことに悪質性がある。
    20年ほど前、Mr.マリックが日本テレビの番組で、100円玉にタバコを通したマジックを披露したことで、一大センセーショナルが起き、今日に続く超魔術ブーム、クロースアップマジックブームに引き継がれ、これまで何度となく、テレビ局によりマジックの特番が制作されてきた。
    その中には、毎回のようにギミックコインによるトリックがあった。もちろん、その時々の「テレビ局のプロデューサーは、当然それがどういうコインを使っているものであるかは知っていたはずです。知らなければ、カメラ位置も決まらないし、ショートしての構成も作れないわけですから。その番組に関わった何人かの人たちは、それがトリックコインであることはもちろん承知で番組を作っています。ですが、彼らは視聴率を取るためにそのことは言わなかったわけ」なのである(土戸本人調書6頁)。
    ところが、本件では、「本来なら種さえ分からなければ、同じ番組を幾つでも作れるものを、とにかく1回の視聴率を取りたいがために暴露した結果が今回のことだろうと思」われる、とする土戸本人の供述は、合理的である。
    つまりは、確信犯だったわけである。
    さらには、本件報道の取材の一環として、被告らはギミックコインを高い金額を出して購入している。被告らは、視聴率を取るための必要経費と考えれば、ギミックコインにかかる費用など安いものであろうが、マジック愛好家にとっては、ギミックコイン1枚の値段は、相当に高価である。本件のような報道がなされれば、少なくとも今後ギミックコインでは視聴率がとれないと認識していたと合理的に推測され(事実、本件以降、日本円のギミックコインを用いたマジックの番組が制作されていない)、ギミックコインを持っていることの価値、即ち、ギミックコインそのものの財産的価値が著しく減損されることを十分に認識していたはずなのである。つまり、この意味においても確信犯だったのである。
    この点、土戸供述は、非常にわかりやすく解説している(土戸本人調書11頁)。
    「3つめの問題が単なる暴露です。何の理由もなく、マジックの種明かし、あるいはマジックの教室の番組でもないのに、テレビのニュースをつけたら種明かしをやっていた、これが問題です。それを見てるお客さんがその種を知りたいかどうか、実際ほとんどの人は知りたくも何ともないんです。じゃ仮にコインのマジックを、そこで種明かししたからと言って、だれがそれできるんですか。そのコイン、あああれは面白い、じゃ作ってみようって作りますか、作れば犯罪になるんでしょう。じゃ種明かしする理由どこにありますか。じゃインターネットで買えばいい、だけどタバコを通す100円玉が1万円からするんですよ。普通に生活をしてる人がそんなものを買いますか、あり得ないですよね。そんだけの金払ってでもたばこを通したいと思う人のほうが、これはむしろ奇特な人たちです。で、それをなんで報道番組で種明かししますか。全く理解に苦しみます。みんな迷惑をしてます。覚えた視聴者は全然出来ません。種明かし知っただけに終わってしまいます。誰の得になるんですか。だから私はそのことに対しては反対しているんです。3つの種の公開のうち、暴露は一番だれのためにもならないから反対しているんです。」
第2 マジシャン(手品師)に恰も罪があるかのような番組を制作したことについて
 1 甲2の4の3、3頁以下で、隠しカメラにより、庄野氏のお店(フレンチ・ドロップ)に潜入し、庄野氏のシガースルーコインを演じる様を撮影したものを報道した記録がある。
   隠しカメラで潜入しなければならない理由などない。シガースルーコインを製造する場面であれば、まさに犯罪実現行為であるから、これを断って撮影することは不可能であろう。
   しかしながら、シガースルーコインを用いてマジックを演じることは何ら違法でも何でもない。これを隠しカメラで、潜入レポをする必要は全くないのである。
   このような手法は、ギミックコインを用いてマジックを演じるマジシャンが、恰も犯罪実現行為を行っているかのような錯覚を起こさせるような報道の仕方であり、それ故にこの報道番組以後、ギミックコインを用いてマジックをすると、「それって犯罪でしょ。」と白い目で見られ、マジシャンたちは、多大なる精神的苦痛を負ったのであった。
 2 土戸供述の該当箇所を引用する(土戸本人調書19頁)。
   「それはハードの部分の法律違反じゃないですか。ソフトの部分の解説をなぜくどくどなさるんですか。なぜそれをビデオカメラで潜入して撮らなきゃいけないんですか。ビデオカメラで潜入しなくても、お金さえ払えば見られるし、手品見せてくれって言えばいくらでも見られるものを。」
   「(潜入したその映像で、何かからくりが明らかになっていますか。)明らかになっております。だって演出をそこで伝えるんですから。」
   「だからそれをなぜ秘密カメラで撮らなきゃいけないんですか。撮らしてくださいと言って撮れば幾らでも撮れるものじゃないですか。」
   「あたかも手品をすることそのものが間違いのように放送してるではありませんか。」

第3 不法行為の特定について
   原告第3準備書面において、放送における不法行為部分の特定をしたが、今回改めて争点が絞れたことから、若干の修正を行う。
【被告日本テレビについて】
 1 甲2の4の2について(ザ・ワイド(2006年11月15日放送)3頁より)
(1)3頁目3行目から5行目まで
   金子氏による、シガースルーコインの種暴露の状況。
   「まずこちらの、百円玉と、たばこにご注目ください。この百円玉にたばこを乗せて、おまじないをしますとごらんのように、たばこが百円玉を貫通しました。おなじみのマジックなんですけれども、実は、裏返しますと、本物の百円玉に真ん中に穴をあけてあるんですね。」(3頁目写真2枚がこれに対応)。
(2)3頁下から2行目以降4頁下から4行目まで
   隠しカメラで、潜入レポを行い、庄野氏の行うシガースルーコインの演技を撮影、放送していること。
2 甲2の4の4(NNN NEWSリアルタイム(2006年11月15日放送)12頁より)
(1)14頁目(2:15)~15頁目(2:32)までの8枚の写真に対応する映像を放映したこと。
   写真は、いずれも100円玉のシガースルーコインの種が暴露されている状況である。レポーターにより、一見本物にみえる100円玉の中央部分を指で押し凹む様を撮すと共に、コインの裏側(仕掛け側)をも撮影し、凹んだ穴の部分がコイン本体を離れ、ヒンジでつながれている状態まで撮影・放映されている。
(2)15頁目(2:46)~16頁目(2:50)までの4枚、及び17頁目4枚の写真に対応する映像を放映するとともに、以下のナレーションを行ったこと。
   写真は、いずれも500円玉のフォールディングコイン(バターコインをフォールディングコインとして使用している。)についての種が暴露されている状況である。2つに折りたたまれる500円玉の様子及び、これがペットボトルの口の部分を通過し、中に入る様が撮影・放映されている。
   ナレーターにより「通るはずのない口をコインが通ってしまうおなじみのマジック。しかし、このコインにもトリックがあった。真ん中に割れ目があるが、ゴムの力でもとに戻る。こうすれば簡単に狭い口も通すことができる。」(16頁最終行から17頁3行目にかけて)とのナレーションが行われた。
(3)20頁目4枚の写真に対応する映像を放映すると共に、以下のナレーションを行ったこと。
   写真は、いずれも近藤氏による100円玉シガースルーコインの種が暴露されている状況を撮影・放映したものである。
   「このように、たばこがあっさり通ってしまうんですが、これをもっていたり販売をしても、罪には問われません。この仕掛けは、このようにたばこを差し込みますと、ふたがばねでとめてあって、それがこのように開くんですね。簡単な仕組みです。」(20頁1行目~4行目)。
3 甲2の4の5(NEWS ZERO(2006年11月15日放送)21頁より)
   以下のナレーションと共に、23頁から25頁(3:20 その2)にいたるまでの写真に対応する映像が放映されたこと。
   「インターネットで高額な値段で売買されているマジック用の硬貨。私たちはその幾つかを入手した。百円硬貨にたばこを通すマジック。この場合、硬貨の真ん中に丸い穴があり、ワイヤーで動く仕掛けになっている。こちらは五百円硬貨が、ペットボトルの小さな飲み口から入ってしまうマジック。折れ曲がるように細工され、ゴムでもとに戻るようになっていた。そして、十円硬貨が消えてしまうマジックでは・・・。十円と五百円が表裏になっていて、もう一方の硬貨と合わさると、五百円硬貨ができあがる。通常のものとマジック用のものを比べてみても、全く見分けがつかないほど精巧につくられている。」(23頁1行目~25頁2行目まで)とのナレーション部分。
  ① 23頁(2:29)(2:35)の写真
    100円玉シガースルーコインの種が暴露されている状況。丁寧にも「丸い穴がワイヤーで動く」とのテロップまでもが流された。
  ② 23頁(2:49)~24頁(3:01)までの3枚の写真について
    いわゆる500円玉のバターコインをフォールディングコインと同じ使い方によって、ペットボトルの口から折り曲げて中へ入れる様子を撮影したもの。丁寧にも「500円硬貨が折れ曲がる」とのテロップまでもが流された。
  ③ 24頁(3:04)~25頁(3:20)までの8枚の写真
    500円玉と10円玉によるスコッチ&ソーダの種が暴露されている様(3:04)では、500円玉と10円玉が示されており、これをかぶせると10円玉が500円玉の中に組み込まれる様が、(3:11)~(3:14)までの3枚の写真によって示されている。なお、10円玉の裏側には500円玉の表(桐側)が張り合わされており、500円玉の中に組み込まれたときには、裏を見せても普通の500円玉にしかみえないような仕掛けになっている。その部分の暴露されている様が、(3:15)~(3:20)の4枚の写真によって示される。なお、マジシャンの間では、特にシークレット度の高いギミックである。
4 甲2の4の7(スッキリ!!(2006年11月16日放送)36頁より)
(1)以下のナレーションと共に、36頁目(0:25)(0:30)の写真に対応する映像を放映したこと。
   「百円硬貨にたばこを通すマジック。この場合、硬貨の真ん中に丸い穴があり、ワイヤーで動く仕掛けになっています。」(36頁7行目~8行目)
   写真は、100円玉シガースルーコインの種が暴露されている状況である。丁寧にも「100円硬貨にタバコを通すマジック 硬貨の真ん中に丸い穴を作りワイヤで動く仕掛けに」とのテロップまで入れる過剰な報道である。
(2)以下のナレーションとともに、37頁目(0:38)(0:39)の写真に対応する映像を放映したこと。
   「こちらは、五百円硬貨がペットボトルの小さな飲み口から入ってしまうマジック。硬貨が折れ曲がるように細工され、ゴムの仕掛けでもとに戻るようになっています。」(36頁最終行~37頁2行目)
   写真は、いわゆる500円玉のバターコインをフォールディングコインと同じ使い方によって、ペットボトルの口から折り曲げて中へ入れる様子を撮影したものである。丁寧にも「500円硬貨がペットボトルに入るマジック 硬貨が折れるように細工されゴムの仕掛けで元に戻る」とのテロップまでもが流された。
(3)以下のナレーションとともに、37頁目(0:45)~38頁(0:58)までの8枚の写真に対応する映像を放映したこと。
   「そして、十円硬貨が消えてしまうマジックでは、十円と五百円が裏表になっていて、それぞれを合わせると五百円硬貨ができ上がる、という仕組み。」(37頁3行目~最終行)。
   写真は、500円玉と10円玉によるスコッチ&ソーダの種が暴露されている様子である。(0:45)では、500円玉と10円玉が示されており、これをかぶせると10円玉が500円玉の中に組み込まれる様が、(0:48)~(0:54)までの3枚の写真によって示されている。なお、10円玉の裏側には500円玉の表(桐側)が張り合わされており、500円玉の中に組み込まれたときには、裏を見せても普通の500円玉にしかみえないような仕掛けになっている。その部分の暴露されている様が、(0:54)~(0:58)の4枚の写真によって示される。「10円硬貨が消えるマジック 10円と500円が裏表になっていてそれぞれあわせると500円硬貨に」と懇切丁寧な字幕付きでの解説まで行っている。なお、これは、「スコッチ&ソーダ」と呼ばれるコインであり、マジシャンの間では、特にシークレット度の高いギミックである。
(4)以下のナレーションとともに、38頁目(1:22)(1:25)の写真に対応する映像が放映されたこと。
  「阿部 えー、で、こちらが今VTRにもありましたが、加工されたコインです。例えばこの百円硬貨にたばこを刺すと・・・突き抜ける。
   加藤 えー、よくできてるな。
   阿部 なぜかというと、裏がふた状になっているからなんです。わかりますか。
   加藤 ははあ、単純な仕掛け、仕掛けですよね。」(38頁下から3行目~39頁2行目)
   写真は、100円玉シガースルーコインの種が暴露されている様子である。
(5)以下のナレーションとともに、39頁目5枚の写真および40頁目3枚の写真に対応する映像が放映されたこと。
   「そしてもう1つ、こちらは五百円玉なんですけれども、パキッと折れて中に、ゴムが、透明のゴムが通されているんです。それで形状記憶ができるんですが、普通ならば、このペットボトルの口からは入らない五百円硬貨がこのためきれいに入ってしまう。こういう仕掛けになっているんです。」(39頁3行目~39頁2行目)
   写真(39頁目)は、いずれも500円硬貨のバターコインの種の部分である2枚の破片をゴムでつなぎ合わせて1枚のコインに見立てている構造を、2枚の破片を両側に引っ張ることにより、ゴムの通っている部分までわざわざ見せ、さらには元に戻る様子を撮影したものである。
   写真(40頁目)3枚は、上記バターコインをフォールディングコインとして使用し、種の構造を明かしつつ、ペットボトルの口から500円玉が入る様を撮影したものである。なお、テロップには、「売り上げは3億円!? コインマジックで逮捕」とあり、「!?」という不確実なクエスチョンマークとともに、「逮捕」とは全く関係のない種明かしが意気揚々と行われている。
5 甲2の4の9(ウェークアップ!ぷらす(2006年11月18日放送)56頁より)
(1)以下のナレーションと共に、56頁目(1:15)(1:16)の写真に対応する映像を放映したこと。
   「こんなことができちゃったのも、本物の硬貨に細工がされていたから。」(56頁8行目~9行目)
   写真は、100円玉シガースルーコインの種を暴露しているところを撮影したものである。
(2)57頁の写真2枚に対応する映像を放映したこと。
   写真は、いわゆる500円玉のバターコインをフォールディングコインと同じ使い方によって、ペットボトルの口から折り曲げて中へ入れる様子を撮影したものである。なお、「硬貨に穴開けマジシャン逮捕 売り上げ3億円!!」とのテロップまでもが流され、ギミックコインの売り上げだけで3億円の売り上げがでたとしか解釈できないテロップが流された。

【被告テレビ朝日について】
1 甲2の4の1(ワイド!スクランブル(2006年11月15日放送)1頁より)
  以下のナレーションと共に、1頁目写真3枚に対応する映像を放映したこと。
  いわゆる「バイツアウトコイン」についての種明かしの状況である。
  丸川氏により「一見普通の百円玉にみえますが、実はこうして折れ曲がるように、この縁の部分にゴムが仕込んであるんです。」とナレーションが入ると共に、実際にバイツアウトコインを片手に、折れ曲がる様を映像で放送した。
2 甲2の4の3(スーパーJチャンネル(2006年11月15日放送)6頁より)
  以下のナレーションと共に、8頁目(1:40)~9頁目(1:48)にかけての7枚の写真に対応する映像を放映したこと。
  「龍円 こちら、一見普通の百円玉にみえますが、このようにマジシャンがまるでかみちぎったようにみせる加工がしてありました。」(8頁3行目~9頁1行目)
  龍円氏による100円玉のバイツアウトコインの種を暴露したものである。100円玉が食いちぎられる様を撮影した後、種の部分である「かみちぎったように見せて部分的にコインの裏側へ折り曲げて隠してしまう様」を暴露している部分が放映された。
3 甲2の4の6(やじうまプラス(2006年11月16日放送)27頁より)
(1)以下のナレーションとともに、27頁(0:29)~28頁(0:43)までの8枚の写真に対応する映像が放映されたこと。
   「龍円 こちら一見、普通の百円玉にみえますが、このようにマジシャンがまるでかみちぎったようにみせる加工がしてありました。」(27頁下から3行目~最終行)
   写真は、龍円氏による100円玉のバイツアウトコインの種を暴露したものである。100円玉が食いちぎられる様を撮影した後、種の部分である「かみちぎったように見せて部分的にコインの裏側へ折り曲げて隠してしまう様」を暴露している部分が放映された。
(2)以下のナレーションとともに、33頁目の写真全て及び34頁目(4:04)までの写真に対応する映像が放映されたこと。
   「龍円 こちら一見、普通の百円玉にみえますが、このようにマジシャンがまるでかみちぎったようにみせる加工がしてありました。」(33頁)
   写真は、いずれも龍円氏による100円玉のバイツアウトコインの種を暴露したものである。100円玉が食いちぎられる様を撮影した後、種の部分である「かみちぎったように見せて部分的にコインの裏側へ折り曲げて隠してしまう様」を暴露している部分が放映された。
4 甲2の4の8(ワイド!スクランブル(2006年11月17日放送)44頁より)
  以下のナレーションとともに、50頁目(6:18)(6:20)、(6:26)(6:27)51頁目の写真に対応する映像が放映されたこと。
  「大和田 鮮やかだね。これはあのー、今回問題になった、まあ実際のそのコインなんですけど、まあみてみると、こういうふうに折れるように改造してある。でー、ま、この百、百円玉も普通にみえるんだけど、こう曲がるように改造してある。そして、まぁ、これはもうわかりやすいんですが、百円玉、穴があけてあって、ここにたばこを通したりするように偽造している。」(50頁8行目~51頁2行目)
  写真(6:18)(6:20)は、キャスターの大和田氏が、500円玉のフォールディングコイン(二つ折りタイプ)を折って、種を明かしているシーンが撮影・放映されたものである。
  (6:26)(6:27)の写真は、同じくキャスターの大和田氏が、100円玉のバイツアウトコインの種の部分を折り曲げて種を明かしているシーンである。
  51頁目の写真は、キャスターの大和田氏が100円玉シガースルーコインの中央穴あき部分を強調して、カメラに示しているシーンである。

第4 アメリカ合衆国における貨幣損傷等の取り扱いについて
   被告テレビ朝日が引用した法令に関しては、残念ながら日本における貨幣損傷等取締法の射程範囲と異なるものであり、的はずれである。以下に解説を加える。
   2006年12月に、米国において同様の法律が公布された。内容的には、5セント及び1セント硬貨の輸出、鋳潰し、処理の禁止についての法律である。米国内における報道(U.S.ミントプレス)によれば、金属の価格が急激に上昇した(1セント硬貨は1.12セントの価値が、5セント硬貨は6.99セントの価値がある)ことから、鋳つぶすことを禁止したとのことである。
   また、同趣旨の法律は、以前にも、金属の急激な上昇により、1967年から1969年にかけて銀貨の鋳潰しを禁止した法律や、1974年から1978年にかけて1セント硬貨の鋳潰しを禁止した法律があったと報道されている
   米国における同趣旨の法律の制定背景は、まさに貨幣損傷等取締法の立法趣旨(立法経緯)と全く重なるものである。
   米国内においても、当然ギミックコインは存在するが、それでは上記新法によってギミックコインの製造が禁止されるのかというと、もちろんそうではない。
   セクション82.2に例外規定が定められており、その(b)において、禁止規定は、教育、娯楽、装飾品、宝飾等の目的のためのこれらのコインの処理については、適用されるべきではない、とされており、ギミックコインが「娯楽目的」にあたることから、その製造は適用対象にはならないという扱いになる。
   つまり、上記法律が貨幣制度の維持を目的としており、仮に、原判決と同様に「米国発行の貨幣に対する信用を維持し、その円滑な流通を確保するとの観点」と捉えているとしたとしても、上記適用除外事由にあたる場合には、このような法益は犯されないとの認識に立つものということができ、いずれにしろ本件のような場合に、同法が適用されることにはならないのである。 

第5 マジックは、「秘された」「花」を楽しむ芸術であり、その花の仕組みが暴露されてしまっては、全く成り立たないのである。これは、人間で言うところのプライバシーと同じものであり、これが暴露されてしまっては人格的生存が成り立たないのと同じである。
   花伝書には、「秘事といふことを現はせば、させることにてもなきものなり。これを、させることにてもなしという人は、いまだ秘事といふことの大用知らぬがゆゑなり。」(講談社文庫 川瀬一馬訳:秘事ということの内容を暴露して見れば、たいしたことでもないものである。それを秘事というものはたいしたことでもないと言う人間は、まだ秘事ということの大きな効果を知らないからだ。)とある。
   芸における秘事は、芸人だけが守ろうとしても守れるものではない。秘事を守ることにTV局をはじめとするマスコミも協力しろとは言わないが、積極的に暴露してよいとする合理的な理由は全くないし、本件においても暴露してよい理由は全くない。
   最低限のルールとして、このような秘事を暴露するに当たっては、それを守っていこうとする専門の団体、それぞれの芸能界があり、マジックの世界においても、(社)日本奇術協会、SAM等の団体があるのだから、事前のお伺いを立てるべきであったし、そうすべき義務が被告らにあったと認定することは、社会通念上当然のことである。
   本件において、御庁におかれては、このような被告らの義務違反を見過ごすことがないよう、公正かつ文化的な判決を求める次第である。
以   上

投稿者 ono : 11:37 | コメント (4)

2008年07月09日

【マジック裁判・民事】尋問実施!!

昨日、東京地裁にて、マジック裁判のクライマックスである、藤山新太郎さんの本人尋問が行われました。

この尋問は、多くの方が気に掛けて下って人気事件となり、傍聴券発行事件となりました。朝早くから、多くの方が裁判所前で、傍聴券をもらうために並んで頂き、誠にありがとうございました。
日本奇術協会からは、笑太夢さんが、また、日大の神部先生も傍聴にいらしてくれました。

前回の裁判で、手品の実演を申請し、却下されてしまいましたが、この藤山さんの尋問の中で、どうしてもせざるを得ないような状況に持ち込み、この事件の端緒ともなった「パンクチャー」の実演を企み、事前に藤山さんとネタ合わせをし、本番に臨みました。

尋問の内容は、後世に語り継がれるような、非常に熱のこもったものでした。
これまで数々の種明かし番組に対して、一人で抗議をし、謝罪文と和解書を勝ち取ってきた藤山新太郎さんが、なぜ今回はそれをしないで本訴を起こしたのか(謝罪文と和解書を勝ち取った方法についても、尋問の中で種明かしがされました。実にお見事な方法でした。)、テレビ局の今回の報道において、具体的にどういう点に問題点があるか、テレビ局が手品という芸能をどれだけ理解していないで放映しているのか、等々、手品を愛する方が聞いたら、涙を流して聞き入ってしまうような、素晴らしいお話しが聞けました。

お話しの内容は大部に及ぶもので、今、裁判所の方で録音された内容を反訳しているところです。いずれ、何らかの形で皆さんの目に映るような形にしたいと思っています。

結局、パンクチャーの実演が叶いました。この「パンクチャー」は、日本のマジシャンが使い方を誤った(穴の空いた100円玉をお土産として観客にプレゼントした、また売る方も格安で穴の空いた100円玉を大量に販売した)ことによって、今回のような不幸が起きてしまったネタでした。そう言う意味では、もっと売る方も買う方も演じる方も慎重にならなければならなかったように思います。「売れればよい」「受ければよい」という考え方を、手品界でも見直さなければなりませんね。

ということで、次回が、最終回となります。9月2日午後1時30分から、615号法廷です。
これまでのまとめの書類(最終準備書面といいます)を、私の方で作成し、それを提出するという形になります。

投稿者 ono : 17:03 | コメント (0)

2008年06月30日

【マジック裁判・民事】7月8日のマジック裁判の傍聴について(告知)

ブログでも告知しましたように、7月8日午前11時から、藤山新太郎さんの尋問があります。
この裁判のクライマックスでもあり、今まで原告団の一員として名を連ねてはいたけれど、傍聴には行けてないな、なんて方、是非いらしてみませんか?

この裁判ですが、傍聴券発行事件となりました。
原告側で10席、被告側で10席確保し、残り22席を巡っての一般傍聴になります。

当日傍聴にいらっしゃりたいという方、先着順で既に確保している傍聴券(10人分・既に数名分が決まっております。)を差し上げます(つまり、くじ引きで並ぶ必要がありません)。

予め私宛に、ご連絡ください。よろしくお願いします。

一般傍聴の方は、当日早めに裁判所に来て頂き、傍聴券を巡ってのくじ引きにご参加ください。

【追記】
この裁判のこれまでの経緯が、「ザ・マジック 76号」(東京堂出版)と、「プリあらマガジン第3号」に、私の書き下ろしの記事として載っておりますので、興味のある方はお読みください。


投稿者 ono : 18:46 | コメント (0)

2008年05月21日

【マジック裁判・民事】次回いよいよ尋問!!

昨日、10時30分より、裁判(第8回口頭弁論)がありました。足下の悪い中、傍聴に来て頂いた方々、本当にありがとうございます。

原告らとしては、藤山さん、田代さん、中島さん(クライス)の尋問申請をしていたのですが、裁判所の判断としては、陳述書(事前にそれぞれの方からお話しを聞いて、それを書面化し、裁判所に既に提出済みのもの)を検討した上で、藤山さんの尋問のみを採用されました。
また、私の方で、尋問の中で、マジックの実演の申請をしていたのですが、裁判長は、「私としては見せて頂きたいという気がしないでもないのですが、他の裁判官とも合議した結果、そこまでの必要はないとの結論に達しました。」とのこと。「見せて頂きたい。」という本音のところで採用してくれれば良いのに・・・残念です。

今回は、こちらから、先の3名の陳述書を裁判所に事前に提出し、それに対して、日本テレビがそれぞれに反論を加えた書面を出してきました。相変わらず、今までのものと内容的に変わりがなく、どこまで行ってもかみ合わないというか、平行線というか。やはり、マジックを趣味にしないと、こういう問題は本当にわからないんだろうか・・・???そんなに難しい話しをしているわけではないのですが・・・と、途方に暮れてしまいます。

今回は、陳述書の作成に、助太刀してくれた方がいました。
東大の奇術部出身で、大のマジック愛好家でもある、外岡潤弁護士です。強力な助っ人の登場で、私も相談する弁護士相手ができて、非常に助かりました。

次回は、いよいよ藤山さんの尋問です。裁判長は、法廷での発言等から、結構なマジック好きとお見受けできます。実演が無理でも、藤山さんの、あの説得力のある言葉のマジックで、一気に勝負をかけるべく、良い尋問になるよう頑張りたく思います。

ここがこの裁判の一番のハイライトです。是非是非、関係者、興味のある方等々、お誘い合わせの上、傍聴に来て頂いて応援して頂きたく、宜しくお願いします。

7月8日午前11時から(約1時間)、場所は、東京地方裁判所615号法廷(6階)です。

投稿者 ono : 15:50 | コメント (5)

2008年03月17日

【マジック裁判・民事】報告

3月11日に、日本テレビ、テレビ朝日相手の、マジック裁判の弁論手続が行われました。

アンケートに不備があったところに関して、まとめるというのが、こちら側の宿題でしたが、アンケート未提出者に再度アンケートをお願いしたものが、未だ回収できず、その分について次回持ち越しになりました。
こちらからアンケートの再提出をお願いした原告団の方、早急に提出の程、よろしくお願いいたします。
アンケートがないと、請求の理由がなくなってしまいますので、次回その方については、訴えを取り下げざるを得なくなります。ご了承ください。

さて、今回は、以下のような書面を提出してきました。主に、許される種明かしと許されない種明かしの境界について論じました。
何か判らないこと、或いはご意見等がありましたら、お気軽に書き込みあるいは、メールをください。

次回は、4月15日午前10時30分から、東京地裁615号法廷です。
原告団長の藤山新太郎さんもまた、出席してくださいます。裁判終了後、皆さんで懇親ができればと思います。是非、ご参加ください。

平成19年(ワ)第10875号 損害賠償等請求事件
平成19年(ワ)第18783号 損害賠償等請求事件
原 告 ら 土 戸 直 哉 外104名
被 告 ら 日本テレビ放送網株式会社 外1名

原告第3準備書面

                          平成20年2月29日
 東京地方裁判所民事第25部甲1A係御中

             原告ら訴訟代理人弁護士  小  野  智  彦

第1 ギミックコインの価値についての補足
 1 被告日本テレビは、「ギミック部分の価値」ないし「魔法を起こせる付加価値」について、パブリック・ドメインに属することを根拠に経済的には「0円」として、恰も原告らに経済的な損害がないかのごときまやかしの主張を繰り返している。
   しかしながら、原告らは、1枚のコインに対して、数千円あるいは数万円を投じているのである。ギミックコインが取引市場にある限り、需要と供給のバランスの中で、価格が設定され、お互いの自由意思の中で設定された価格に金銭を投じるのは、実に資本主義自由経済のもとでは当然の話であり、パブリック・ドメインに属しているかどうかとは、全く次元を異にするものである。
   知的財産権そのものを考えたときに、原価に上乗せされる価値は、その発案者に帰属されるべきであり、その上乗せされた価値が発案者以外の第三者に帰属されることは、いわゆる海賊コピーなどのケースの場合、第三者の側の抗弁として、パブリック・ドメインであることを主張する余地はあろう。
   しかしながら、本件で問題となっているギミックコインは、いうならばパブリック・ドメインであることを前提に、供給側が原価を大幅に上回る価格を設定し、需要側(原告ら)がその価格を納得の上で支払ったものであり、それによって、供給側が儲けることは何ら法的には問題ない。
   種が知られていない、という暗黙の了解のうちに、「ギミックコインの価値」ないし「魔法を起こせる付加価値」に期待して、供給側の設定した高額な料金を支払って、ギミックコインを所有している以上、このような「ギミックコインの価値」ないし「魔法を起こせる付加価値」が、こともあろうに公の電波を使って、不用意な種暴露をされることによって、ギミックコインを使ったマジックを演じる機会が極端に減ったどころか、演じること自体が不可能となったことは疑いようがなく、これをもって財産的価値の減損と称したまでである。
   被告日本テレビは、意図的に「パブリック・ドメイン」を引き合いに出し、知的財産権特有の議論に引きずり込もうとする、論点のすり替えを行っているものである。
 2 70%についての説明
   客観的に、ギミックコインの付加価値が70%といえる根拠というのは、正直なところ難しいと言わざるを得ない。
   訴状で述べた「ギミックコイン所有者意見の平均値」、第1準備書面で述べた「製造業者の卸値プラスアルファ」等の説明は、それなりに説得力があるものと思われる。
   本来であれば、例えば、500円玉のエキスパンデットシェルであれば、1枚のコインの中身をくり抜いているだけであるから、材料費は500円である。フォールディングコインやシガレットスルーコイン、バイツアウトコインであれば、500円玉を2枚を形が合うように削り、恰も1枚であるかのごとき組み合わせによって、ギミックコインができあがっており、これらに関しては材料費は1000円である。
   ギミックコインの所有者にしてみれば、材料費以外はすべてギミックであるがゆえの価値に相当すると考えるのが、最も単純といえる。しかしながら、このようなギミックコインを実際に製造した業者の仕事に対する感心、このような珍しいコインを所有しているという所有欲を満たしている部分、10年後にまた使用できるかも知れないという淡い期待等々から、材料費プラスアルファの部分に見いだす価値は、人それぞれによって異なるのは至極当然のことである。
   であれば、既に述べた説明によって、付加価値が70%と算定することは、むしろ合理的な算定であると考える。
 3 取引価格について
   被告日本テレビは、準備書面(4)において、本件報道によってギミックコインの取引価格がかえって上昇していることを根拠に、原告らの損害がないことを主張するようであるが、誠に身勝手な主張である。
   本件報道がもたらしたものは、「日本円によるギミックコインは法に触れるやばいものである。」ということを世間に知らしめ、それにかこつけて得意げに種を暴露したことにある。この際、種の暴露についてはおいておくとして、少なくとも本件報道の後、日本円によるギミックコインは、正規のルートでは手に入らなくなった。被告らが調査しているようなマジックショップは、軒並み日本円のギミックコインの取り扱いを中止した。
   現在手にはいるとすれば、被告日本テレビが調査したとおり、ヤフーオークションくらいであろう。手に入らないと思えば、どうしても欲しい人はいくらお金を出してでも手に入れる。アンダーグランドで取引されるようになれば、供給者間のバランスも崩れることから、当然に値段もつり上がる。かといって、被告らによって「違法な存在」とレッテルを貼られた日本円のギミックコインを、価格が上がったからと言って、ヤフーオークションに所持者が出品するのが通常である、といえるのであれば、確かに被告日本テレビの主張は成り立つ。しかしながら、「違法な存在」とのレッテルを付けられたものをヤフーオークションに出品するような不道徳な人間はむしろ少数であり、事実、本訴原告らのギミックコイン所有者は、誰一人としてオークションに出品したものはいない。
   被告日本テレビの取引価格についての主張は、いかにもナンセンスである。
 4 なお、被告テレビ朝日が、準備書面(1)において、「そもそも本件コインは、いずれも貨幣損傷等取締法違反の違法行為によりマジック用コインとして加工されたもので、社会的にその存在及び価値を肯定することができないものである。したがって、仮に本件コインのマジック用コインとしての使用価値が減殺されたとしても、原告らに損害が発生したということはできない。」との主張は、上記補足説明からして、全く見当はずれのものである。また、そもそも本件で問題としているギミックコインは、日本円に限るものではなく、その意味でも的はずれである。

第2 種明かしについて
 1 被告らは、手品の種は調べれば分かるし、道具を購入すればついてくるものだし、「絶対的な秘密」には当たらず、種明かしは「秘密の暴露」には当たらない、との主張を相変わらずしている。しかしながら、「種明かし」には、大きく分けると3つの意義があり、それらを混同して使用しているものであることから、この点について考察することとする。
 2 種明かしの意義
   種明かしには、①いわゆる「レクチャー」と言われるものであり、特定のマジックを習いたいという人に、通常有料で教授する場合(教授の態様は、講習会方式、本による場合、DVDによる場合等がある)、②手品の道具(ネタ)等を購入したときに付いてくる「解説」、そして、③単なる「暴露」の場合(興味本位の場合を含む)が挙げられる。特に③の場合を、英語では「exposure」と表現しており、言い得て妙である。
 (1)①について
    乙イ1、乙イ4、乙ロ9は、これに分類される。特に乙イ4、乙ロ9に掲げられている「コインマジック事典」は、日本においては、コインマジックを学習する上で必携、必読の書であり、この本を手にして初めてギミックコインの存在や各種技法の存在を知ることになる。但し、いずれも外国のコインを基準に説明してあり、日本円のギミックがあることは明かされていない。大手書店でしか手に入らない。
    乙イ1については、初心者用の入門書であり、一般の書店にて販売されたとしても、プロマジシャンやマニアのアマチュアマジシャンにとって、その活動の妨害になるようなものではなく、むしろ、マジックを啓蒙する上で、それに必然的に伴う種明かしとして、奇術界においてその種が明かされることが暗黙のうちに了解されているような内容のものである。
    さらに、マニアやプロマジシャン向けの講習会やDVD、書籍の販売等もされる。これらは一般書店では手に入らず、また、DVDもレンタル屋で借りられず、値段も高額になる。
    このように、実際にマジックを演じたい、真剣に勉強したいという方に対して、有料にて、その段階に応じた種を教授することは、全く問題がない。それを学習した人は、当然に演じようとするマジックの種を自ら暴露するはずがないからである。なぜなら、観客が驚いてくれなくなるからである。
    被告らの行った種明かしとは、明らかに次元を異にするものであり、これと同列に論じようとする被告らの考え方は、全く理解できない。
 (2)②について
    道具を買って、「解説」がないのでは意味がないのは当然である。プラモデルを買って、その作り方についての「説明書」がなければ作れないのと同じである。パソコンを買って、操作の仕方についての「説明書」がないのと同じである。当然に許される種明かしである。
    また、手品の道具の使い方を知っている人に「解説」が不要なことは、既にプラモデルの作り方やパソコンの操作の仕方について知っている人にとって、「説明書」が不要なことと同様である。だからといって、「説明書」は入らないからその分値段を下げろ、という訳にもいかないことも、同様である。
    乙イ6の1、乙ロ3~8の説明書については、これに分類される。
    被告らの行った種明かしとは、明らかに次元を異にするものであり、これと同列に論じようとする被告らの考え方は、全く理解できない。
 (3)③について
世界の2大マジック協会である、IBM(International Brotherhood of Magicians)およびSAM(The Society of American Magicians)が共同で承認している倫理規定には、
   「(1)奇術のあらゆる原理や、奇術の現象・イリュージョンに用いられる手段を、故意に世間に暴露することに反対する。」と条文化されている。
    また、全世界で有名なアメリカの会員制マジッククラブである、マジックキャッスルの倫理規定には、
   「1.マジックに使用されるあらゆる原理や方法が、いかなる口頭、書面、電子コミュニケーション手段においても故意かつ不必要に一般へ種明かしされることに反対する。」とある。
    つまり、上記①、②に該当しないものは、これに分類されるのである。乙イ2は、その典型である。また、訴状にて紹介した、2001年6月16日から被告日本テレビにてシリーズ化して放送された、「噂の覆面マジシャンが禁断のトリック大暴露」などという番組を放映したのも、まさにこの典型である。
    なぜパブリック・ドメインになっている手品の種も含めて、不必要な暴露にマジシャン達が反対するのかと言えば、マジシャンはその秘密(種)を手に入れる為に労力を使うし、財力も使うのである。手に入れた後も労力を使って、手順構成をするからなのである。
    レクチャー、あるいは道具を買ったときの解説によって秘密を手に入れた場合、誰も損害を被るものはいない。しかしながら、そのような態様ではなく、一般人が欲してもいないのに、ただ興味本位で種を「暴露」されたら、マジシャンにとって迷惑この上ない話であるし、一般人にとっても手品が楽しく見られなくなるという被害を被ることとなる。
    本件の被告らによる報道は、まさにマジシャンにとっても、一般人にとっても迷惑なものであり、被告らのみの自己満足による報道であり、その種明かしの態様は、「暴露」以外の何ものでもなかったのである。
    エンターテイメントとして確立されているマジックは、種の秘密が守られて初めて成り立つものであり、安易な種明かしをもって「正当な業務行為」というのでは、マジック業界は常にマスコミの脅威によって怯えなければならなくなるのである。
    なぜ、種明かしがいけないのか、については、「マジック種明かしの真実」と題する書面において、ウォルター・ブラニー氏によって紹介されているあるマジシャンからの手紙の内容が参考になる。
 2 先に紹介した、「噂の覆面マジシャン」による種暴露については、実は世界中で問題になったし、被告日本テレビも当然知っているものと思われる。
   この覆面マジシャンは、ヴァレンチノという名のブラジル出身のマジシャンであったが、このことをきっかけにブラジル連邦警察によって拘留の上、国外退去処分にさせられた経緯がある。
   アメリカにおいても、このヴァレンチノの暴露が番組で放送されたことに伴い、世界のマジシャンの代表である、ジョエル・バウアーが、公開のテレビ番組でヴァレンチノと対決し、現職の裁判官であるラリー・エルダーがその番組の中で、裁きを下すという、「モラル法廷」という番組が2001年5月に放送された。
   同裁判官のコメントの中で、先の「暴露」が何故行けないのかについて、端的に触れている箇所があるため、ここに引用する。
  「ジョエルがいい指摘をしましたが、あなたが公開してきた''ネタ''というのは、一生懸命努力すれば手に入れることができるものです。この、''一生懸命努力する''というのが大切なキーポイントです。''一生懸命努力する''ということとはどういうことか。マジシャンたちは、それこそ何百時間もかけて芸を完成させようとします。そして努力する理由は、マジシャンたちがマジックの持つ不思議さを保ちたいからなのです。」
   結局、同番組の中で、ヴァレンチノは、2000ドルの支払いを命じられることになった(「ヴァレンチノ対マジシャンたちの『モラル法廷』での判決」と題する書面参照)。
   本裁判においても、十分に参考になる内容である。

第3 原告らマジシャンに対する人格権侵害について
   原告らは名誉毀損のみを主張しているわけではない。今回の、被告らによる不当な種暴露により、原告らをはじめとするマジシャンは、怒りを表しているのである。
   これまで、様々な形で、TV局の番組によって、種が明かされてきたし、それに対して各マジシャンが苦情を申し立てたり、異議を申し立てたりしてきたが、本件のごとく裁判にまでなることはなかった。というのも、エンターテイメントとして番組が作成されたり、あるいは、教育目的で番組が構成されたりという面も少なからずあり、あるいは、番組作成にマジシャンの関与があったり、マジシャン自身による種明かしであったりということがあり、それぞれが怒りを抑えて裁判沙汰にはしてこなかった。
   しかしながら、本件では100名以上のマジシャンが立ち上がった。つまり、「受忍限度を超えた」のである。被告らの放映した番組を見て、どれだけのマジシャンが愕然とし、怒りを覚えたか。そして、立ち上がり本訴に至ったのである。
   被告らはこのような自体を招くことを全く予想だにしなかったのだろうか。そして、犯罪報道とは関係のない種明かしを得意げに報道して、何が「正当な行為」なのだろうか。刑事事件における被疑事実は、あくまでも「貨幣を損傷」したことであるのに、その損傷した貨幣の形態を撮影・放映するくらいならまだしも、それにかこつけてマジックの種を説明することは、明らかに「相当な範囲」を超えるものである。真に報道の為に、その種明かしがどれほど必要不可欠なものであったかを、原告らに納得がいくように説明を求める次第である。

第4 被告日本テレビの指摘するアンケートの疑問点について
   前回の口頭弁論終了後、指摘されたところに関しては、電話にて聞き取ったり、資料を送ってもらったり、アンケートの再提出を依頼したりしたが、今日現在、未だ該当者全員からの回答が戻ってきていない為、今しばらくお時間をいただきたい。
   アンケート未提出の方の訴えの取り下げ等も含めて、検討のうえ次回までに提出する。
   なお、アンケートにおいて手品歴の欄を設けたのは、あくまでも参考までであり、手品を愛する心にその歴が関係しないことは明きらかである。

以  上

投稿者 ono : 13:50 | コメント (2)

2008年01月15日

【マジック裁判・民事】続報!

今日、日本テレビ及びテレビ朝日相手の裁判がありました。
前回、こちら側で「何(どの文言)が不法行為か」を特定し、それに対しての反論が今回の法廷で出されました。

相手方の主張は、手品の種は調べればわかるし、道具を購入すればついてくるものだし、「絶対的な秘密」には当たらず、種明かしは「秘密の暴露」には当たらない、との主張を相変わらず続けています。

ここには、2つの問題があります。
ひとつは、種明かしの意味をはき違えていることです。
種明かしには、3種類あります。概ね、以下のような趣旨です。
ひとつは、レクチャーとして指導目的で種を「教える」場合。
ひとつは、学習目的でお金で種を買う場合。
もう一つは、単なる「暴露」の場合(興味本位の場合を含む)。最後の場合を、特に英語では''exposure''と表現しています。的を得た表現だと思います。

つまり、マジシャンは秘密を手に入れるために労力を使うのです。財力も使うのです。手に入れた後も労力を使って手順構成をするのです。
指導・学習目的で秘密を手に入れた場合、誰も損害を被るものはいません。
しかしながら、そのような目的なしに、一般人が欲してもいないのに、ただ興味本位で種を「暴露」されたらどうでしょうか。マジシャンにとっても迷惑な話ですし、一般人にとっても手品が楽しく見られなくなるという被害を被ります。
明らかに一線を画するのです。なぜ、そのようなことがテレビ局はわからないのでしょうか?

もうひとつの問題は、種明かし全般を、知的財産権の問題としてこの訴訟において問題視しているわけではないということです。
仮に、ギミックコインの発案者がいたとしても、その発案自体がパブリックドメインになっていることは、こちらは認めているのです。ただ、パブリックドメインになったとしても、手品としての特殊性から、種の部分は重要な要素を占めるし、かつ、種があるからこそ不思議な現象を引き起こす道具は、原価でとりひきされることはあり得ず、財産的な価値を持つのであって、この財産的な価値を不当な種明かし報道によって侵害された、と主張しているのです。どうも、テレビ局側は、この点をはき違えているのか、わざと論点のすり替えをしようとしているのかわかりませんが、パブリックドメインになっているから保護されるような価値はないのだ、という主張を繰り返しているのです。

次回の裁判は、こちら側から以上のようなテレビ局側からの主張に対して、反論を加えることになっています。

それと並行して、原告団の方々からいただいたアンケートについて、日本テレビから疑問点がだされました。こちらについて対処させて頂くべく、私の方からまた原告団の方々にお手紙が届き、それに対して返信をして頂くという、お手間を取らせることになります(全員ではありません)。
よろしくご協力下さい。

次回、こちら側が、この裁判でどのような証人を立てるのかについて申請をすることになっています。
原告団の方の中から、また、それ以外の関係者の方から、私からお願いをさせていただくことになるかと思います。
そちらの方も、是非ご協力頂きたく宜しくお願いします。

次回は、3月11日午前10時30分から、東京地方裁判所615号法廷です。
ご興味のある方は、傍聴してください。原告団代表の藤山新太郎氏も出席されますので、裁判後にお茶会が開かれる予定です。

投稿者 ono : 17:37 | コメント (2)

2007年11月27日

【マジック裁判・民事】続報!

第4回口頭弁論が、今日ありました。
謝罪請求の内容特定、および、放送における不法行為部分の特定が、本日の検討事項でした。

謝罪請求の内容については、以下のようにしました。
「1 被告日本テレビ放送網株式会社は、「ザ・ワイド」「NNN NEWSリアルタイム」「NEWS ZERO」「スッキリ!!」「ウェークアップ!ぷらす」の各々の番組内において、「平成18年11月中旬頃に放送した、貨幣損傷等取締法違反に基づくマジシャンら逮捕事件の犯罪報道において、犯罪報道そのものとは直接関係のない、ギミックコインの種を不必要に暴露してしまったことにつき、多くのマジシャンに迷惑を掛け、不快な思いをさせてしまったことを、深く謝罪します。」とのコメントを各々の番組のメインキャスターによって口頭で、及び、テロップにてそれぞれ2度ずつ放送せよ。
 2 被告株式会社テレビ朝日は、「ワイド!スクランブル」「スーパーJチャンネル」「やじうまプラス」の各々の番組内において、「平成18年11月中旬に放送した、貨幣損傷等取締法違反に基づくマジシャンら逮捕事件の犯罪報道において、犯罪報道そのものとは直接関係のない、ギミックコインの種を不必要に暴露してしまったことにつき、多くのマジシャンに迷惑を掛け、不快な思いをさせてしまったことを、深く謝罪します。」とのコメントを各々の番組のメインキャスターによって口頭で、及び、テロップにてそれぞれ2度ずつ放送せよ。」

懸案の訴額、それに伴う印紙代についてですが、もし相手方が言うような莫大な額が算定されるようでは、マスコミによる被害にあった人間の謝罪要求を事実上封鎖することになる・・・と意見を書いたところ、それを受けてくれたのか、算定不能により、現在納めている印紙代で結構との決定をいただきました。有り難い話です。

不法行為の特定の方ですが、今回改めて、下記の資料をもとに検討してみましたが、悪意としか思えない、ギミックコインの暴露放送に改めて怒りを覚えました。放送内容を、文字と写真にして客観化すると、今までみえてこなかったものが、改めてみえてきたようなところが多分にありました。

実は、今回、相手方(日テレおよびテレ朝)の放送内容について、放送画面をキャプチャリングして書面に起こす作業、および、業者にお願いした反訳書面のDVDとの付き合わせ作業を、原告団の有志の一人(長沼さん)が、ボランティアで頑張ってやってくれました。2日間に亘り、私の事務所に詰めてもらい、無理をきいてもらって、相当良いものができあがり、裁判所、原告、被告らの共通の資料ができあがりました。
59頁にもわたる文書の作成、本当にありがとうございました。この場を借りてお礼を申し上げます。

今後、また、ご協力をお願いすることがあるかと思います。その時には、他の方々も協力していただけると、嬉しく思います。宜しくお願いします。

次回は、年明けの、1月15日午前10時30分より、東京地方裁判所615号法廷にて行われます。

PS なお、貨幣損傷等取締法違反の刑事事件の方ですが、最高裁判所に上告しました。年末までに上告趣意書を書き上げることになっていますので、完成しましたら、またアップしたいと思います。

投稿者 ono : 17:33 | コメント (2)

2007年10月09日

【マジック裁判・刑事】ギミックコインの刑事裁判、明日(10/10)判決言い渡し!!

いよいよ、ギミックコインの刑事裁判(貨幣損傷等取締法違反、関税法違反被告事件)の、控訴審における判決言い渡しが、明日、午前10時から、東京高等裁判所718号法廷にて行われます。

今回のポイントは、アメリカにおける同種の法律との比較法的な視点、また、紙幣との均衡論の視点を新たに加え、その点についてどのような判断が下されるのかが、注目点です。

高裁の法廷は広いですので、お時間のある方はお誘い合わせの上、是非傍聴にいらっしゃってください。
判決の言い渡しは、30分以内で終わると思います。

投稿者 ono : 17:12 | コメント (1)

2007年09月13日

【マジック裁判・民事】経過報告!

9/11、日本テレビ、テレビ朝日相手の民事裁判がありました(第2回口頭弁論)。

書面のやりとりと、手続き上の問題点について話し合いが多少ありました。

我々が懸念するのは、謝罪要求の点です。
当然、今回参加して頂いている方々の大きな希望の一つでもあるわけですが、テレビの番組の中で謝罪の放送を求める場合、その放送に係る費用が訴額ということになります。我々は、その訴額に対応する印紙を裁判所に払わなければなりません。

この点については、色々な考え方や運用があるようです。
一つは、自局の放送で謝罪放送をするわけだから、放送にかかる費用はゼロだという考え方、一つは、費用計算が難しいことから、算定不能ということで訴額160万円に固定してしまうという考え方。今のところ、裁判所には、算定不能ということでお願いし、訴額160万円に対応した印紙を納めていますが、実際にこちら側が求めている謝罪の内容をそのまま放送すると、その計算してはじき出される金額は、莫大な額になるだろう、との相手方の意見でした。

裁判所には、算定不能のまま運用して頂きたい旨お願いしていますが、もし莫大な金額が計算され、それに伴う印紙代を納めろ、ということになった場合には、皆様からお預かりしている寄付金では、到底まかないきれない状況に陥ることになります。
その場合、新たに寄付を募るか、謝罪要求について取り下げるか、苦渋の選択をせざるを得なくなります。藤山氏と相談しながら、また、皆さんのご意見を聞きながら、進めていきたいと考えています。

次回は10月30日午前10時30分から、同じく東京地方裁判所615号法廷で行われます。

色々と準備をしなければならない関係上、誰かボランティアでお手伝いして頂ける方がいらしたら、是非ご連絡ください。

9/12、ギミックコインの刑事事件の控訴審がありました(第2回公判)。

検察官提出にかかる証拠の取り調べだけが行われ、結審しました。
ギミックコインの製造について行政特区の申請をしたところ、財務省によって拒否されたわけですが、その時の財務省の回答内容が証拠として提出されました。

こちらの方、次回判決の言い渡しになります。
10月10日午前10時。10が3つ並びました。
場所は、今回と同じ、東京高等裁判所 718号法廷です。

第1審の判決に対して、猛烈に反論を加えましたし、新たな視点を出したところもありますので、それらについてどのような判断を下すのかが見物です。
勝にしろ負けるにしろ、第1審の時の判決よりは、まともな内容の判決になることを期待しています。

投稿者 ono : 14:56 | コメント (0)

2007年09月10日

【マジック裁判・民事】日程告知!

民事裁判 9/11 午後1時30分より 615号法廷(東京地方裁判所)
藤山新太郎氏も原告代表者として出廷します。

刑事裁判 9/12 午前11時 718号法廷(東京高等裁判所)
検察官より、書証の取り調べ請求があります。ギミックコインの製造について、行政特区申請がなされており、それに対する財務省の回答が証拠として提出される予定です。
その後、結審になると思います。

お時間がありましたら、是非傍聴にいらしてください。
いずれも、東京霞ヶ関の裁判所で、同じ建物内です。(営団線A1出口をでますと、目の前が裁判所です)

投稿者 ono : 16:43 | コメント (2)

2007年08月18日

【マジック裁判・民事】 藤山新太郎氏による意見陳述全容! 

7月24日に行われました、日本テレビおよびテレビ朝日に対して提訴された、種暴露裁判の第1回口頭弁論のときに、原告団を代表し、藤山新太郎氏による、冒頭の意見陳述を行いました。

マジック関係者(傍聴人)一同、法廷で藤山氏の陳述を聞きながら、頷くばかりであり、法的な観点から離れた、マジシャン側の生の声を、とても説得力のある言葉でお話ししてくださいました。

裁判の冒頭で、このような意見陳述が行われることは異例でもあり、原告団側の重要な問題提起としての裁判という場において、このような意見陳述を行うことを許可して頂いた、裁判所に感謝しています。

以下、藤山氏による意見陳述の全容を引用します。

                           意 見 陳 述
                                              藤 山 新太郎

 私は本名を土戸直哉と申します。芸名は藤山新太郎と申しまして、もう40年以上もマジシャンとして活動しております。私は社団法人奇術協会の副会長を務めております。と同時にSAM、これはソサエティオブアメリカンマジシャンズと申しまして、世界で最も古いマジックの団体の日本局の総支配人をしています。今回はSAMのメンバーが主体となって告訴に踏み切っており、私はその代表者としてここに来ております。
 
 私は20代の時から日本奇術協会の役員をしており、その頃からテレビ局の種明し番組があると抗議に出掛けておりました。出掛けて行くと多くは謝罪文を出すなど対応をしてはくれましたが、セクションが違えばたちまちまた種明しを繰返すといった事の連続で、鼬ごっこを繰り返すばかりでした。
 また表向きは丁重に謝罪はしても、帰り際に廊下にまで追い掛けてきて「こんな事を繰り返しているとテレビに出られないようにするぞ」と脅しを掛けてくるプロデューサーもありました。実際タレントはテレビ局にとっては出入りの業者も同じ事で、使わないと言われれば何の抵抗も出来ません。全く弱い立場の者が抗議に行くのですから捗々しい結果がでなかったのも当然と言えます。
 しかし、今回このように正規の手続きをもって告訴出来た事は、それだけで一歩前進したと考えて良く、何らかの進展があるものと大いに期待しております。
 
 今回のニュース報道は、明らかにニュースの枠を逸脱した内容に問題があります。確かに、貨幣の変造は現段階では違法です。しかし、そのコインを使ってマジシャンがマジックをする事は違法でしょうか?違法ではないはずです。貨幣の変造をニュース報道するなら、その素材を公表するだけで充分なはずです。それを使い方や、演技にまで立ち入って種明しするのは明らかに行き過ぎでしょう。
 仕掛けは、ただ演じただけでは一瞬の不思議に過ぎません。そこに手順を作りストーリーを作って初めて、不思議が観客の面白さに変わるのです。そこにマジシャンは苦心をし、僅か2~3分の演技でも、手順を作り上げるまでには2年も3年もかかるのです。ところがその核となる種仕掛を暴露され、やり方まで種明しされては、マジシャンのかけた時間や工夫が無駄になります。仮に仕掛けを作った業者が違法であったとしても、その演技や工夫までも種明しする資格が誰にありますか。
 マジックは、その仕掛が秘密であるから価値があります。それは、推理小説の真犯人が最後まで分からないから推理小説の本が売れるのと似ています。もし作家が何年もかけて作り上げた本を、テレビで小説の中の真犯人の名前を先に言ってしまったらどうなりますか。その瞬間からその本は売上ダウンになるでしょう。それは作家にとって、明らかなる生活権の侵害です。今回の報道はそれと全く同じ事をマジシャンに対してしたのです。
 
 もし推理小説の真犯人をテレビ局が明かしたなら、出版社は直ちに損害賠償の請求を起こすでしょう。しかし、マジシャンはそれができません。タレントは、テレビ局から見たなら使う立場で、出入りの業者と同じです。テレビ局を抗議すると言う事は、仕事を失う事になるのです。
 初めにあなたがたは「何でここに呼ばれたのか分からない」とおっしゃいました。しかし、テレビで露骨な種明しをされればマジシャンが迷惑する事は、子供でも分かる事です。誰が考えても分かる事が、なぜあなたがたには分からないのですか、それは分からないのではなくて、テレビ局はマジシャンが弱者である事、仕返しが出来ない事を知って種明しをしているのです。これはいじめなのです。
 
 あなたがたのニュース番組では、「いじめはいけない」と報道しませんか。しますよね、そうした報道をするあなたがたが、なぜいじめをしますか?あなたがたはなぜいじめがなくならないかご存知ですか?答えは簡単です。あなたがたが弱者に無理解だからです。弱い者が弱いと知って、弱いものの生活を平気で犠牲にしている。そして、そこに罪の意識を持たない。これがいじめなのです。
 しかし、マジシャンがいつまでも黙っているわけではありません。人は生存権のぎりぎりまでも侵されれば、誰でも怒ります。どんなに弱い人間でも立ち向かいます。今回の裁判はマジシャンのギリギリの選択なのです。

投稿者 ono : 12:49 | コメント (1)

2007年08月14日

【マジック裁判・刑事】ギミックコイン刑事裁判控訴審始まる!!

昨日、午前11時より、ギミックコイン刑事裁判(貨幣損傷等取締法違反および関税法違反被告事件)の控訴審が、東京高等裁判所にて始まりました。

今回の法的主張のポイントは、紙幣との均衡論と、比較法的な視点です。
以下、控訴するにあたって裁判所に提出した、「控訴趣意書」および「補充書」を掲げますので、興味のある方は是非お読み下さい。

なお、裁判官には、コインに手を加えることと、紙幣を破ることと、どちらが犯罪のにおいがするのか区別できるか、そしてそれらをマジックという不思議を演出する芸術に絡めるとどういう印象を実際持つのか、ということを実感してもらうために、紙幣を用いたマジックの実演を試みましたが、残念ながら採用してもらえませんでした。

とはいえ、こちら側から要請した藤山新太郎証人の尋問、被告人質問、書証(アメリカにおける貨幣損傷等取締法の法文等)は採用してもらうことができ、最低限の裁判にはなったように思います。

今回の控訴審では、検察庁の威信もあってか、控訴審の第1回の前に、検察官から「答弁書」がとどき、それとともに、分厚い資料がとどきました。

また、外にも、財務省に対して、貨幣損傷等取締法についての資料がないか、調べてもらっているそうで、是非こちら側もその資料を見てみたいという思いもあり、その資料の検討を待って結審ということになりました。

次回は、9月12日午前11時より、東京高等裁判所718号法廷にて行われます。

では、趣意書の方、また長いですが、心してお読み下さい(笑)。

平成19年(う)第1178号

控 訴 趣 意 書

平成19年6月13日

東京高等裁判所第3刑事部 御中
被告人      A  

弁護人  小 野 智 彦

第1 原判決は、法令の適用において誤りがある、つまり、貨幣損傷等取締法及び関税法の本件への適用は不当であって、原審において主張したとおり、無罪であることを確信する。以下、理由を述べる。
第2 貨幣損傷等取締法違反について
 1 原審における弁護人の主張は、原判決4頁記載の3点(①乃至③)である。しかしながら、弁護人は、原審における弁論において、貨幣損傷等取締法の適用においては慎重にならなければならない理由として、既に立法の経緯が現在において当てはまらないことを主張すると同時に、現実的に、本法の適用対象がマジック用コイン(以下「ギミックコイン」という)以外に考えられないことからすると、およそ法律は一般的・抽象的なものでなければならないというテーゼ(憲法41条)に反し、法令違憲の可能性すら否定できないことから、その適用には慎重でなければならないとの警鐘を鳴らしたものの、この点についての原判決におけるコメントは全くなかったどころか、安易に立法事実の変遷まで持ち出して、安易に同法の適用をした内容になっている。
   以下、原判決のマジックに対する認識不足から曲解された原判決の内容を指摘するとともに、比較法的な観点をも考慮して、詳述することとする。
 2 立法事実の変遷について
   原判決5頁によれば、「弁護人は、貨幣損傷等取締法が貨幣の券面額よりもその地金自体の価格の方が高く不釣り合いであった時代に貨幣を鋳つぶして地金として販売することを防ぐ目的で制定されたもので、現在はそのような状況はなく、同法はその使命を終えたと主張するが、同法は、日本国政府発行の貨幣に対する信用を維持し、その円滑な流通を確保するとの観点から、特にその貨幣としての経済的価値が比較的低いが故に損傷等されるおそれがあるとしてかかる行為を処罰の対象としたものと解されるから、現在においてもなお一定の存在意義を有しているというべきである。」と判断している。
 (1)原判決が「同法は、日本国政府発行の貨幣に対する信用を維持し、その円滑な流通を確保するとの観点から」と指摘し、保護法益を貨幣に対する信用維持及びその円滑な流通の確保と捉えた点についての問題点
   ア 紙幣との均衡論
     同法の対象は、あくまでも硬貨であって、紙幣は含んでいない点において、仮に同法の保護法益が原判決指摘のような内容のものであるとすれば、片手おちであり、バランスを失することは明らかである。
     原判決が指摘するような保護法益は、既に刑法において通貨偽造・変造罪によってカバーされているのであり、かつ、同罪が「行使の目的」を特に構成要件要素として掲げたのは、そのような目的があってはじめて通貨の円滑な「流通」が害される危険が発生するからなのであり、「行使の目的」を構成要件要素としない同法において、さらに貨幣の円滑な「流通」を保護法益とするのは、矛盾である。
     また、原判決が「特に貨幣としての経済的価値が比較的低いが故に故意に損傷されるおそれがある」と判示したことの意味が不明である。現在の通貨が本位貨幣ではなく、全て補助貨幣であることから、貨幣自体の経済的価値が低いという意味であれば、なぜ硬貨のみが処罰対象とされ、紙幣が処罰対象とされないのかを説明できない。そもそも紙幣は、「紙」なのであり、硬貨の材料となっているアルミ、銅等に比べると、さらに経済的価値は低いものである。
     他方、そうではなく、同じ補助貨幣とはいえ、紙幣は高額通貨に使用され、硬貨は低額通貨に使用されるという意味において、硬貨が具現する経済的価値が低いという意味であれば、ことマジックの世界においては、硬貨、紙幣を問わず、真価に加工がされることはよくあることであり、テレビ画面において、セロ氏やミスターマリック氏が、紙幣の一部を破って復元させたり、或いは、火のついたタバコを1万円札に通して焼き切った後に復元させたりした場面を、ほとんどの国民が見たことがあるはずである。貨幣が具現する経済的価値の高低と損傷のされやすさということの間に因果関係が全くないのは、マジックの世界においては高額紙幣を用いた方がより不思議に見えることからも裏付けられるし、また、マジックの世界以外でも、紙幣は破っても銀行へ行けば新しいものに交換してくれるし、半券を持って行っても残存物の価値に応じて換金してくれる扱いがされている事実からしても、容易に説明できるところである。
   イ 比較法的な観点
     2006年12月に、米国において同様の法律が公布された。内容的には、5セント及び1セント硬貨の輸出、鋳潰し、処理の禁止についての法律である。米国内における報道(U.S.ミントプレス)によれば、金属の価格が急激に上昇した(1セント硬貨は1.12セントの価値が、5セント硬貨は6.99セントの価値がある)ことから、鋳つぶすことを禁止したとのことである。
     また、同趣旨の法律は、以前にも、金属の急激な上昇により、1967年から1969年にかけて銀貨の鋳潰しを禁止した法律や、1974年から1978年にかけて1セント硬貨の鋳潰しを禁止した法律があったと報道されている。
     米国における同趣旨の法律の制定背景は、まさに本法の立法趣旨(立法経緯)と全く重なるものであり、本法の立法趣旨を原判決のように殊更に曲解する必要は全くないし、原判決のように変更する合理的理由は全くないのである。
     むしろ、米国における同趣旨の法律が、立法趣旨が妥当しなくなった時点で廃止されているところからすれば、日本においても同様の立法趣旨が妥当しなくなった時点において廃止されるべきだったのであり、廃止しないでそのまま適用もされないまま今日まで放置されていたことに、国会の法律の廃止をしないという怠惰な不作為状態が継続していたのであって、むしろこのことに問題がある。
     米国内においても、当然ギミックコインは存在するが、それでは上記新法によってギミックコインの製造が禁止されるのかというと、もちろんそうではない。
     セクション82.2に例外規定が定められており、その(b)において、禁止規定は、教育、娯楽、装飾品、宝飾等の目的のためのこれらのコインの処理については、適用されるべきではない、とされており、ギミックコインが「娯楽目的」にあたることから、その製造は適用対象にはならないという扱いになる。
     つまり、上記法律が貨幣制度の維持を目的としており、仮に、原判決と同様に「米国発行の貨幣に対する信用を維持し、その円滑な流通を確保するとの観点」と捉えているとしたとしても、上記適用除外事由にあたる場合には、このような法益は犯されないとの認識に立つものということができ、いずれにしろ本件のような場合に、同法が適用されることにはならないのである。         
 (2)結論(本法が紙幣を対象としていないこととの理論的な整合性)
    あくまでも、本法の保護法益は、原審において弁護人が主張したところにとどまるのであり(貨幣制度に対する信頼の保護は、あくまでも立法経緯で述べた点に限られる)、この範囲において特に硬貨についてのみ規制をかけるべき理由があったと解さなければ、紙幣を対象としていないこととの整合性がとれないのである。
    よって、原審のごとく本法の保護法益を広く曲解した原判決は、その解釈において誤りがある。
 3 違法性阻却事由の有無について
 (1)正当業務行為について
    上記のごとく、そもそも教育、娯楽、装飾等の目的によるものは、構成要件から排除されるべきであるし、米国においては適用除外になっているところである。
    米国において適用除外になっているということは、米国においては社会的に見てそもそも違法な行為とはいえないという認識があるからであって、社会的に見て相当な行為であることが明らかであるからである。
    国民性等の違いから、多少の価値観の違いはあるものの、社会常識の点において大きな隔たりがあることは、経験則上考えられないところである。
    例えば、義務教育中の理科の実験で、アルミに熱を加えるとアルミを構成する分子が分離をはじめ、アルミ自体が軟らかくなるということを証明するために、1円玉をアルコールランプであぶって子供の力でも曲げられるという授業を受けたことがある人は数多くいるものである。しかしながら、この実験を「法律違反だ、刑事罰に値する」などと声高に主張する人はまずいなかろうと思われる。この原理を利用したメタルベンディングというマジックの分野があるが、マジックとして行うと社会的に不相当になるのであろうか。教育の現場にマジックを導入する動きは近時顕著であり、マジックと見せかけて、「実は科学的な根拠があるのです。」というコンセプトで授業を進める先生方も多くいる。NHKの教育番組等においては、米村でんじろう氏が有名である。
    弁護人の見解としては、違法性の阻却の前にそもそも片づくはずの問題であると考えているほどであり、何故に「社会的に不相当」なのかの理由が、原判決からは理解できない(原判決は、貨幣損傷等取締法の趣旨をも理由の一つとするが、原判決の認定した趣旨が誤った解釈に基づくものであることは既に述べたとおりである。)。
 (2)可罰違法性について
    可罰的違法性の問題においても、弁護人は「質的な」可罰的違法性の問題を提起したにもかかわらず、それに対する回答にもなっていない検察官による「量的な」可罰的違法性についての主張をそのまま採用しており、実質的な審理がなされていない、杜撰な判決内容であると言わざるを得ない。
第3 関税法違反について
 1 原判決は、関税法が貨幣の変造品を輸入禁止する目的を「貨幣に対する信用を保護し、経済秩序を維持することにある」(6頁)とするが、貨幣損傷等取締法の目的同様、貨幣に対する信用の保護については、どれほどの要保護性があるのか、根拠不明確な電子マネーが乱立状態にある現状から甚だ疑問である。つまり、貨幣への損傷、貨幣の変造等が引き起こす貨幣に対する信用毀損は物理的に限度があるが、むしろ電子マネーが引き起こす貨幣に対する信用毀損の方が、深刻な問題であると思われる。
   貨幣等の信用の保護は、偽造貨幣、変造貨幣が流通過程におかれることを目的とすることによって初めて犯される危険に曝されるのであって、抽象的に変造品が存在することによって、貨幣等の信用の保護が犯されるわけではない。ましてや、手品用に使われるギミックコインは、あくまでも手品用にしか利用することができず、かつ、額面の数十倍の価格を費やしてまで購入するものであって、このようなギミックコイン所持者は、誤って流通過程におかないために、専用の小銭入れを用意しているほどである。
   このような事情から考えるに、手品用のギミックコインが、仮に同法の「貨幣の変造品」に形式的にあたるとしても、保護法益を犯す抽象的な危険すらないものであることから、やはり構成要件に該当しないと言わざるを得ないのである。
第4 憲法21条1項違反について
 1 原判決は、「手品ないしマジックを演じる自由が表現の自由(憲法21条1項)に含まれるものとして保障されるとしても、その自由が公共の福祉による制約を受けるのは当然のこと」とし、立法目的の正当性を論じ、かつ、各罰則規定がその目的達成の手段として必要最小限度の規制と判断している。
 (1)立法目的の正当性について
    原判決が示した貨幣損傷等取締法および関税法の立法目的が、妥当性を持ち得ないことはすでに述べたとおりである。
    また、仮に、万が一、ギミックコインを製造することによって原判決が指摘するような保護法益が侵害される抽象的な危険があるとするのであれば、実際に所持することの方がその危険はより高まるのであって、製造だけを処罰し、所持を処罰しないのは片手落ちのそしりを免れない。
    いずれにしろ、原判決が指摘する立法目的は正当性を持たず、元に戻って原審において弁護人が指摘した、貨幣損傷等取締法の立法趣旨が現在においてもはや妥当する立法事実がないことは、原判決が暗に認めているとおりである。
 (2)立法目的達成手段の必要最小限性について
原判決によれば、各罰則規定が必要最小限度の規制との判断である。原判決が認定する、各法律の立法目的そのものが妥当なものではないこと、先に述べたとおりであるが、仮に目的そのものが正当であったとしても、必要最小限、つまり、より制限的でない他に選びうる手段がないとは到底言えない。
    原判決によれば、「確かに、これらの法律により、日本円の貨幣を材料としたギミックコインによるマジックを行うことは事実上困難になる」ことを認定しており、この点においては正しい認識といえる。
    しかしながら、そもそも規制手段の必要最小限性を検討すべきところ、原判決は「これらの法律は、マジックを演じる自由を直接規制するものではないから、マジックを演じる自由に対する公共の福祉に基づくやむを得ない制約」と全く的はずれな判断を示しているのである。
    過去において、特に貨幣損傷等取締法が適用された事例は、本件及びギミックコインの作成についての事件に限られ、しかも、いずれも遡ること1年以内に起訴された事例であり、現在この法律は、実質的にはマジック規制立法としての役割を担わされており、多いに問題であることは、すでに原審の弁論において述べたとおりである。
    そして、「演じる自由そのものを規制するものではない」というのは、もはや詭弁であり、演じる道具の作成、輸入がいずれも規制されているということは、もはや演じる手段がないということであり、ひいては演じる機会が奪われたということに等しいのであり、コインマジックの一分野とはいえ、ギミックコインを用いたコインマジックの重要性に鑑み、その規制はコインマジックを演目に加えるマジシャンにとって、耐え難い制約なのである。
    すでに米法との関係でみたように、教育、娯楽、装飾、宝飾の目的の鋳つぶしの場合には、貨幣損傷等取締法の目的である貨幣制度の維持は守られることから、少なくともこのような目的か否かの境界線が明確になれば、敢えてこれらの目的の場合の鋳つぶし(損傷を含む)を罰則によって規制する必要はないものと考えられる。
    そして、そのような境界線を明確にするための手段は、許可制、免許制、登録制を導入することで十分に可能なのである。
    同様に製造そのものを処罰する法律として、大麻取締法が存在し、同法は免許制(第2章)を採用し、第3条第1項において「大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。」と規定し、罰則も、同法24条により、「みだりに」との要件を掲げて免許を得た者を適用除外し、かつ、「営利の目的で」と要件を絞る等、刑法の謙抑主義的思想を良く反映しているし、どういう場合に罪になるのかどうかという明確性も確保されており、国民の行動予測性も担保されており、罪刑法定主義(憲法31条)の観点からも妥当な規制手段といえる。
    しかしながら、貨幣損傷等取締法の場合には、そのような限定がないどころか、貨幣損傷等取締法および関税法の各規定が表現の自由に対する規制としての側面を有しているにもかかわらず、そして、そのような精神的自由権を規制する法律については、その萎縮的効果を国民に及ぼさないようにするべく、国民の行動予測性がたつように、その規定の内容は明確でなければならず、また、明確であったとしてもその適用対象が過度に広汎であってはならないにもかかわらず、何等の限定を付けずに「損傷」の一言で行為を規制する同法の規定は、そもそも憲法21条1項、31条に違反すると解すること(法令違憲)が十分可能である。
    いわんや、上記のような免許制等を採用することにより、同法が保護しようとする法益は十分に確保できるのであって、より制限的でない他に選びうる手段が存在することが明らかである以上、必要最小限の規制とは断じて言えるものではないのであり、適用違憲であることに疑いはない。
    なお、エンターテイメント界における「表現」の重要性が再認識されている昨今において、その法律的保護は十分になされるべきであり、これまで日本国内において軽視されてきたことに対する運動の一環として、NPO法人エンターテイメント・ロイヤーズ・ネットワーク(弁護士久保利英明会長)が設立され活動されているほどであり(弁護人もその一員)、そのような意識すらない昭和22年制定の法律が今なおそのままの姿で残っていること自体が問題であるし、いわんやそのような法律を適用するなどは言語道断であるといわなければならないことを付言しておく。
第5 結論
   以上のとおり、原判決には法令の適用において誤りがあることを、御庁におかれましては慎重に検討して頂いた上で、本件への貨幣損傷等取締法及び関税法の適用が不当であることを判断して頂き、原判決破棄の上、是非とも無罪判決を頂きたい。
以 上


平成19年(う)第1178号
控訴趣意書補充書
      平成19年8月2日
東京高等裁判所第3刑事部 御中
                     被告人     A

  弁護人  小  野  智  彦

第1 マジック用ギミックコインの流通の可能性
 1 マジシャン気質について
   裁判所には、マジシャンの気質というものをまず理解して頂きたい。
   マジックを演じる者をマジシャンと言うが、マジシャンという生き物は、およそ投資に見合った回収というものを考えず、考えるとするならば自ら演じたマジックによって、どれだけお客さんや周りの方が喜んでくれるかという、一点に尽きる。
   いわゆるマジックを演じるだけで生計が成り立つ専業プロマジシャンは、残念ながら多くないため、世の中のマジシャンの大半はアマチュアマジシャンである。
   マジックの道具は、得てして高額であり、特にギミックコインに関しては、一般人から見たら想像もつかないくらいの金額である。しかしながら、無理をしてでも、アマチュアマジシャンはこれを購入するのである。アマチュアであるが故に、これに投下した資本を回収する術は全くない。ただ単に、周りの人間を楽しませよう、周りの人間の笑顔が見たいという、純粋な気持ちから、一般人から見たらばかばかしいと思うような高額の出費も惜しまないのが、マジシャンの気質である。
 2 マジック道具を販売する側の気質(特に被告人の場合)
   販売する側であった被告人は、やはりマジックを演じる側の人間、つまりマジシャンであるが故に、マジシャン気質を良く理解している。また、そういうマジシャンの気質を良く理解しているが故に、ギミックコインが欲しいと頼まれれば、喜んで探してきて提供してあげたいとの姿勢の元に、仕入れ、販売を行ってきた。
   このようなマジシャンの気質を理解した、道具の提供者として、マジシャンを応援したい気持ちは、これまでギミックコインの製造、輸入によって刑事裁判になった例がなかったことからしても、決して責められるようなものではない。
 3 日本円のギミックコインの販売方法について
   販売する側としては、通常、ギミックコインを買いに来たお客様に対しては、外国のコインをまず勧めるとのことである。なぜなら、値段的に見て日本円に比べると手軽であること、そして、日本円のギミックコインの存在が外国のコインに比べて知られておらず、不必要に日本円のギミックコインを勧めることはかえってマジシャンの首を絞めることになることからである。
 4 以上のことから、日本円のギミックコインを購入する人というのは、相当程度のマジックマニアと呼ばれる人たちであり、ギミックコインを一旦購入したならば、それをマジックを演じる道具としてのみ使うことを予定しているのであって、また、後生大事にそのコインを保管する人たちであって、実社会において不必要に、ギミックコインが出回り、真価との混同が生じるような状況はおよそ考えられないのである。
   つまり、ギミックコインが真価と共に流通する可能性はないことから、本件のごとき被告人の行為は、何ら法益侵害を犯していないものである。

第2 必要最小限度の規制か否か
 1 マジック関係者、また、弁護人としても、貨幣損傷等取締法を全面廃止して、ギミックコインが全面的に解禁になり、いつでもどこでも誰でもが容易に日本円のギミックコインが入手できるようになることを歓迎しているわけではない。
   これまでのところ、マジック業界(販売側)としては、日本円のギミックコインによる現象の不思議さが強烈であることから、そのネタの不思議さを保つために、その機密性を保持しなければならず、そのための手段として、値段を高く設定するという状況にあった。
   今回、原審判決により、改めて有罪判決が下りたことにより、市場にある日本円によるギミックコインは、ますます闇取引の対象となり、値段も破格につり上がった金額で取引されるようになっている。果たして、有罪判決を下すことにより、闇取引の世界へ追いやることが解決になるのだろうか。
 2 アメリカにおける同法の規定では、適用除外の場合を明確に規定し、一つは教育、娯楽、装飾品、宝飾の目的、或いは、単にコインの金属部分の価値から利益を得る手段として用いるものではないと明確にされる限り、適用されないと規定することにより、境界線を明確に引くことによって一つの解決を図っている。マジックの先進国であるアメリカ合衆国の配慮である。
   また、同法は、財務省長官により発行された免許を有する場合には、同様に適用除外になっている。一律に禁止するのではなく、免許制を採用することによって、必要最小限度の制限とする措置がとられており、あたかも趣意書で弁護人が指摘した、大麻取締法と同様の構造であり、比較法的に見ても、貨幣損傷等取締法に同様の規定をおけない理由はない。
 3 これらの点を勘案するならば、セクション82.2(b)(c)に相当する規定の置かれていない貨幣損傷等取締法は、必要最小限度の制限を超えるものとして、原審において主張したのと同じく、憲法21条1項違反であるとの判断を免れないものである。
以  上
 
   

投稿者 ono : 18:07 | コメント (0)

2007年07月23日

【マジック裁判・民事】マジック裁判、明日(7/24)第1回弁論です!

いよいよ、日本テレビ及びテレビ朝日相手に起こした、不当な種暴露放送事件の第1回の口頭弁論(裁判)が、明日行われます。日時、場所は、以下の通りです。

東京地方裁判所 615号法廷
午前11:00~

この法廷には、40席の傍聴席があるとのことです。
傍聴される方は、時間ギリギリに来られると、入れない可能性もありますので、余裕を持ってお越し下さい。

なお、明日は、藤山新太郎さんに、訴状陳述にあたって、裁判所への意見陳述をしていただく予定です。
説得力のある藤山節が聞けるかも知れません(あくまでも裁判所が許可してくれないとできませんが・・・)。

日本テレビ、テレビ朝日から、答弁書が届いています。
テレビ朝日は、全くの強気で、全面否認ですし、日本テレビに至っては、藤山さんのレクチャー本を持ち出して、「原告代表者だって種明かししてるじゃないか。」と。
全く持って、的はずれな反論で、情けなくなるばかりか、開いた口が塞がりません。

今後の展開で、原告団に加わって頂いた皆さんに、色々とご協力いただくことがあるかもしれませんが、その時にはよろしくお願いします。

(答弁書の内容については、後日、要旨をアップしたく思います。)

なお、原告団第2陣は、昨日までの段階で、56名の応募がありました。
第1陣とあわせて、合計105名となりました。ありがとうございました。
第2陣は、近日中に提訴することになります。提訴しましたら、またご報告します。

投稿者 ono : 14:36 | コメント (2)

2007年07月02日

【マジック裁判・刑事】ギミックコイン刑事裁判における弁論要旨、全文掲載!

ザ・マジックの72号の「そもそもプロというものは」の項において、藤山新太郎氏が、刑事裁判において私が読み上げた「弁論」について、非常に褒めていただき、その内容を是非、外のマジック関係者にも読ませてやってくれないか、とのお話がありましたので、ここに実名だけを伏せて、全文を掲載することにします。

なお、この刑事裁判の控訴審は、8月13日に行われ、すでに控訴趣意書(1審における弁論に相当するもの)はすでに書き上げ、裁判所に提出済みです。
こちらの方も、以下に示す弁論要旨とはまた違った角度で再検討をさせて頂いており、こちらの方もいずれ公開したく思っています。

長いですので、心してお読み下さい(笑)。

平成19年(特わ)第76号 貨幣損傷等取締法違反、関税法違反被告事件

弁 論 要 旨

                           平成19年3月6日

 東京地方裁判所刑事第10部 御中

                    被 告 人     A
                    被 告 人     B
                    被 告 人     C

                    弁 護 人  小  野  智  彦

第1 総 論
   本件においては、具体的事実については争わないものの、以下のごとき法律上の主張により、本件被告人らの行為は、無罪であると考える。
   ただ、本件において被告人らは、法を犯したことについて素直に反省していることから、被告人らの意向に沿ってまず情状論を述べ、その後に弁護人の意見としての法律上の主張を行うこととする。
第2 情 状
 1 被告人らは、本件につき、発覚当初から捜査官の取り調べに対しても全て正直に話しをし、隠し立てをすることはなかった。取り調べ、店舗での立ち会い、押収への協力等、一連の捜査に対して協力的な態度をとることが、まずは法を犯してしまった者のすべき努めであると自覚し、それに沿って行動してきたことは、被告人らの反省として十分に酌むべき事情である。
 2 被告人らの罪の意識及びこれに関する調書の記載の信用性について
   被告人らの本件に対する罪の意識は、国内においてギミックコインを製造することが法に触れるくらいの意識しかなく、また、製造したとしても本当に逮捕され、処罰されたという情報を聞いたことがなく、聞いたとしてもそれは噂の域を出るものではなかった。ましてや、本件のごとく、ギミックコインを海外に発注することが罪に当たるかどいうかということまで明確な知識はなく、国内製造よりもさらにグレーゾーンくらいの意識しかなかったのが正直なところである。
   この点、平成18年12月5日付員面調書(被告人A)9枚目に
  「以前、加工した日本の貨幣を売ると罪になるという話を聞いたことがあるから、輸入して売るのは危ないと思うが、大丈夫か」との記載があるが、司法警察員の先導による追認という面があり、被告人Aの真の供述性という意味では、信用性が低い。
   また、同様に、平成18年10月18日付東京税関による調書(被告人A)4枚目に
  「日本円の真貨で作ったギミックコインを輸入することは違法であることが分かっていました」とあるが、これに関しては、財務事務官から、「本件は、韓国の貨幣を500円に似せて偽造した案件と同じように扱わざるを得ないが、もし輸入することが違法であることを最初からわかっていたと答えたら、変造コイン扱いにしてやる。」という趣旨のことを言われ、少しでも罪が軽くなるのならばと応じたものであり、この供述の信用性も疑わしい。
   平成18年12月21日付検面調書(被告人A)4枚目に
  「私は、本物の日本円の硬貨に加工したマジック用コインを輸入するというのは、何らかの法律に触れるだろうと思いました」という記載が、一番被告人Aの真の供述に近いものである。
   同様のことは、被告人Bの平成18年11月6日付東京税関による調書2枚目に
  「私たちは、ギミックコインを日本に輸入することが法律に違反することだと判っていました」とあり、
   また、平成18年12月4日付員面調書2枚目には
  「当然、日本国内で日本国政府発行の貨幣を損傷することが違法なわけですから、海外で加工して日本に輸入した場合も法律に違反すると言うことは知っておりました」とあるが、マジック関係者の認識としては、むしろ逆であり、国内で製造しては法律に引っかかる可能性があるため、安全のために海外の業者が加工したものであれば大丈夫、というのが一般的であったのであり、これらの供述部分も、捜査官の先導的な作文を追認したものであって、信用性がないことは被告人Aの場合と同じである。
   こちらも、平成18年12月25日付検面調書2枚目で
  「日本円のギミックコインを持っていることが罪になるのか、売ることが罪になるのか、作ることが罪になるのかといった詳しいことまでは分かりませんでしたが、いずれにしても、日本円のギミックコインが、何らかの形で法に触れるということが分かりました。」というのが一番近いものと思われる。ただ、この供述からも分かるとおり、本来罪にならない所持や売却行為まで法に触れるかも知れないと供述しているとおり、その「分かりました」という表現も罪の意識を明確に持っていたわけではないのが現状である。
   被告人Cについても、平成18年12月4日、5日付員面調書3枚目において
  「日本円を加工したギミックコインを輸入することが日本の法律に違反することは、マジックの世界では常識として知られています。」と記載されているが、まさに上記のマジック界における認識と真っ向から異なるものであり、捜査官による作文的な要素が強く、被告人Aの場合と同様、信用性に乏しい。
   また、平成18年9月8日付東京税関による調書4枚目の5、という項目に同様の記載があるが、同じ理由により信用性に乏しい。
   これらを裏付けるかのように、平成18年12月22日付検面調書では、4枚目に
  「私自身、日本円のギミックコインを輸入することが法律に触れるかどうかについてはよく分かっておらず、ただ『販売』と同じように、法律に違反するかも知れないと思っていました」と記載されているのが真実であり、その程度の認識しかなかったというのが現状である。
   この程度の罪の意識しか持っていなかったことが責められるべきなのかどうかについては、そもそも昭和15年の大蔵省令として制定されて以来、前例がないことに照らし合わせてみても、これをもって刑事責任を問われるべしとするのは、あまりにも過酷すぎると考える。
   なお、日本円のギミックコインを店頭で販売せず、常連客等から頼まれれば店内から出してきて特別に売るという販売方法だったが、これはけっしてやましいからと言うわけではなく、日本円ギミックというのは、他の手品の種に比べるとほとんど知られていないものであるため、その秘密性は相当に守られなければならず、店頭に置いて初心者がおもしろ半分に買っていくのを阻止する必要があったためである。
 3 被告人らのギミックコインの販売意図
捜査官らによる調書からも明らかなとおり、ギミックコインの販売は、決して利益の多いものではない。もしかしたら法に触れるかも知れないというリスクを抱えながら発注し、販売するには、採算が合わない。あくまでも手品を深く愛して演じてくださる愛好家の方から、「ファンタジアはこんな商品まで扱っていてくれるんだ」と思って頂きたいという思いからである。
   日本円によるギミックコインによる演技は、マジシャンであれば誰もが行いたいと思う演目である。1989年2月に日本テレビで、ミスターマリックが超魔術ブームを起こしたときに(弁1)、同氏が日本円の100円玉によるシガースルーの演技(お客さんから100円玉を借りるという設定で、そのコインにたばこを貫通させるという演技)を行った。その時以来、この現象をテレビで目の当たりにして衝撃を受けたことがきっかけでマジックを始めた人間がどれほどいるだろうか。現在30代、40代のマジシャンのほとんどがそうであろうし、被告人B、Cもその例に漏れない。また、被告人Aはこの番組で日本円のギミックコインが存在することを初めて知るに至った。
   また、最近では、テレビでおなじみのマジシャンのセロや、ドクターレオンの名前でテレビにでているマジシャンのヒロ・サカイによる、日本円によるギミックコインによる演技が、本件の騒動が起こるまでことある毎に放映されてきており、それに影響を受けた若いマジシャンが、「日本円による」ギミックコインを欲しがるという需要がある。どうしても「日本円」でやりたいのである。
   確かに、外国コインによる同様のギミックコインは昔からあるが、自国のコインで行うからこそ、その表現できる不思議さ加減は倍増するのである。マジックの世界では、マジシャンであれば知らない人はいないというほどカリスマ的なマジシャンで、ダイ・バーノン(1894-1992)の教えで、「自然であれ(Be Natural !)」というものがあり(弁2)、日本のマジシャンが、コインマジックだけ海外のコインを使うことが不自然だったのである。
   そういうマジシャンからの需要と、またそのような現象を是非起こして、お客さんを楽しませて欲しいという供給者側の願望によって販売していたのであって、決して国家の法益を犯そうという犯罪意図とはかけ離れた意識の下に行われていたものであることを、裁判所にはご理解頂きたい。
 4 被告人らの具体的な反省及び今後の対策
   被告人らは、今後は法律に触れる可能性が少しでもあるように感じた場合には、専門家に問い合わせる等して専門的な意見を仰ぐようにし、自らの素人判断では動かないように心がける旨を本法廷において誓っている。
   被告人Bはすでにマジックファンタジアを退職しているものの、今後日常生活において法に触れる可能性にぶつかった場合には、細心の注意を払い、専門家の意見を仰ぐことことを同様に誓っている。
 5 ここ3年ほど前から、テレビ番組でマジックが日夜取り上げられ、空前のマジックブームが続き、その影響を受けて、プロマジシャンとして活躍する被告人Aもマジックの依頼が殺到し、多忙な毎日を送っている。本件のごとき事件沙汰になるのは、それによる時間的、精神的負担によって本業が妨げられることにもなり、ひいてはマジックを演じることによって、よりたくさんの方達を喜ばせるという、マジシャンとしての究極の目的を殺いでしまうことになる。この点について、本件ではいくらグレーゾーンとは言え、危険な橋は絶対に渡らないという決意が新たに芽生えたといえよう。   
第3 法律上の主張(弁護人の意見)
 1 貨幣損傷等取締法の問題点
 (1)立法趣旨および保護法益について
    本法律は、もともと昭和15年に大蔵省令として制定されたもので、日本国憲法の制定により、省令による罰則には法律による委任が必要になったことにより、昭和22年に法律として制定されたものである。
    本法律が制定されるに当たって、昭和22年11月10日の参議院における財政及び金融委員会の議事録(弁3の2)によると、政府委員の伊原隆氏の発言として以下のようなものがある。
    まず、昭和15年の大蔵省令の内容と本法の内容の説明として次のような記載がある。
   「それから内容的には違った点はありませんが、補助貨幣損傷等取締法と、現在ございます補助貨幣の蒐集、鋳潰又は毀傷の取り締まりに関しまする大蔵省令とで、字句が多少違いましたのは、現在は『地金トシテ販売シ又ハ使用スル目的ヲ以テ補助貨幣ヲ蒐集、鋳潰又ハ毀傷スルコトヲ得ズ』というふうになっておりますのを、今回の法律では『地金トシテ』というふうな字を抜かしました関係で、多少の字句の整理をいたしました。何故『地金トシテ』というふうな字を取りましたかと申し上げますと、これは法律用語といたしまして、純金又は純銀を称しておることになっておりまするので、例えばアルミ貨幣というふうなものは、多少合金になっておりまするので、これらを鋳潰しました場合には、罪になるかならないかというふうな、裁判官の判断の問題として、疑わしい点がございましたために、『地金トシテ』という字を取りまして、字句の整理をいたしました点が多少違っておるだけでございます。」
    この説明から、本法も、あくまでも地金(アルミを含む)として販売あるいは使用する目的で、貨幣を損傷あるいは鋳潰す行為を処罰の対象としていることが明らかである。
    そして、実例として以下のような事例が挙げられいる。
   「それから補助貨幣の損傷鋳潰等につきましても司法省に伺いますと、事件になった奴はちょっとないようでありますが、なにか二十一円だけのアルミ貨幣を集めますと五十円の弁当箱ができるというような実例がありまして、それらの鋳つぶしのことが警察に報告をさせられたという実例があるそうでありますが、これは別に事件になっておらないそうであります。」
    このように、貨幣(コイン)の券面額よりもコインの地金自体の価格の方が高く不釣り合いがあった時代に、容易にコインを鋳つぶして地金として販売することにより不当な利益を得ることを防ぐ目的で制定されたものである。
    しかしながら、現在はもはやこのような状況は皆無である。従って、もはや同法律はその使命を終えたものといわざるを得ない。
 (2)憲法41条から導かれる、法律の一般的・抽象的法規範性との関係
    マジックの道具としてコインに手を加えるという行為に本法を適用すべきかについては、昭和22年当時の議事録にも、昭和62年当時の議事録でも、全く議論にも昇らず、ギミックコインの製造等に本法が適用されることを予定していたものとは到底考えられない。
    現在において、理由もなくコインに傷つけたり鋳つぶしたりする状況が考えられない以上、本法律が仮に適用される余地があるとするならば、昨年に至って突如として適用され始めた、ギミックコインの製造以外には考えられない状況である。
    およそ法律は、その適用される人および事件が不特定多数でなければならないという、一般的・抽象的な法規範でなければならないという命題が憲法41条から導かれるが、現在の本法の適用のされ方は、恰もマジック用のギミックコインの製造等に限定されており、いわばねらい打ちの状態である。
    また、日本円によるギミックコインによる手品の現象が、1989年以来20年近くテレビ等でお茶の間に露出され続けていたにもかかわらず、これに対して本法の適用がなかったという継続した事実状態は、もはやギミックコインに対して本法を適用しないという不文法ができあがったのに等しいと解釈することもできる。
 (3)憲法21条1項との関係
    後で詳しく述べるが、手品を演じる自由は、憲法21条1項の表現の自由の一種として認められる基本的人権の一つである。
    そして、ギミックコインによる手品というのは、1634年の文献に現れているほど(弁4,弁5)、マジック界においては古くから歴史のある確立された分野の一つである。
    ギミックコインを製造すること自体は、確かに表現そのものではないものの、ギミックコインによるマジックを演じるにあたっては、その不可欠の手段であり、手品を演じるための道具を作る自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値するものといわなければならない。
    しかしながら、本件における起訴のされ方は、同法がギミックコインを製造することおよびそのために集めることが処罰の対象とされるものであり、手品を演じるための道具を作る自由が、全く尊重されていないどころか、不当に制約されているものである。
 (4)このように、貨幣損傷等取締法自体、法令違憲の疑いをはじめ、その存在意義がそもそも疑わしいものであり、安易に同法が適用されるようなことがあってはならないものである。
 2 貨幣損傷等取締法違反は成立しない。
 (1)構成要件である「損傷」にそもそも該当しない。
    先に述べたように、本罪は立法の経緯からも明らかなように「地金として販売あるいは使用する目的」によることが必要であり、マジック用品として販売する目的がここに含まれないのは明きらかであって、本法の適用はあり得ない。仮に適用されるとするならば、それは被告人に不利益な類推適用に他ならず、憲法31条に違反することとなる。
    なお、付言するならば、構成要件論の解釈は、あくまでもその保護すべき法益との関係でされなければならないのは自明の理である。
    とすれば、ただ単に貨幣に対して形式的に傷を付けたかどうかということを検討するのではなく、安易に損傷あるいは鋳つぶすことによって不当な利益を得ようとするかどうかの基準で、「損傷」があったかどうかを判断するべきである。
    この点、国家(政府)の発行した貨幣に対して傷を付けるということがそもそもお金を大事にしないから処罰するんだ的な、一種の拝金主義的な考えから、「損傷」に当たるかどうかは形式的に判断すべきだとする見解もあるかもしれない。
    しかしながら、同法はあくまでも貨幣(コイン)についてのみ適用されるのであって、紙幣については適用が除外されており(通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第5条参照)、また、これを処罰する法律がない以上、このような片手おちの見解が通るはずはない。
    また、損傷等によって通貨の流通が阻害されることを法益とする見解もあるかもしれないが、そもそも記念コインの存在を説明できないし、また、発行枚数の少なかった年代のコインにプレミアムをつけて売るコインショップの存在も説明できず、とり得ない見解であることは言うまでもない。
    ギミックコインは、より不可能な現象を演出するための手段であって、その製造は、不思議を演出する芸術である手品(あるいはマジック)を表現する上で、不可欠のものである。
    また、ギミックコイン自体は、すでに1634年に発行された、古い文献である「Hocus Pocus Junior(ホーカス ポーカス ジュニア)(弁5)で、すでに「コインの積み重ねたものをいかにしてテーブルを貫通して消えたように見せるか」(How to make a pile of Counters seem to vanish thorow a Table.)、という表題の下、いわゆる「スタックコイン」(4,5枚から7,8枚くらいのコインが重ね貼り合わせてあるもので、一番上のコイン以外のコインの中央に穴が空けてあり、その中にさらに小さいバラバラのコインを重ねて入れておけるようになっているもの。)が紹介されており、ギミックコインの歴史自体、少なくとも400年以上の歴史がある。
    マジック界において、すでに歴史的にも確立されているギミックコインによる演技に不可欠なギミックコインの製造が、このような形で本法の「損傷」にあたると解すること自体、後述するようにマジックを演じる行為が憲法21条1項あるいは13条によって保障されるべき基本的人権の一種と解されることとの関係でも、大いに問題があるものと考える。
 (2)可罰的違法性がない、或いは、マジックを演じるという正当な業務行為に必要不可欠な行為であって、違法性が阻却される。
    「違法」か否かが判断されるに当たっては、当然のことながら形式的に違法かどうかを論じるのは無意味であって、実質的に違法かどうかを検討されなければならない。
    マジックの分野、主にクロースアップマジックといわれる分野には、大きな種目としては、カードマジックとコインマジックがある。本件ギミックコインによるマジックは、コインマジックに該当する。
    確かに、ギミックコインを用いないで、何の仕掛けもないコインを用いてコインマジックを行うこともよくあるが、しかしながら、スパイスとしてギミックコインを演目の中に少し入れることによって、より不可能性を表現するということは、通常のコインマジシャンでもよく行われることである。
    裁判所におかれては、ギミックコインを用いた現象、例えばコインにたばこが貫通する、噛み切ったコインが一瞬にしてもとに戻る、入るはずのない瓶の口からそれよりも大きなコインが入る、コップの底をコインが貫通する等をこれまでの人生において、一度や二度は見られていると思われるが、それらの現象をみて、犯罪性を感じるだろうか。むしろ、その現象に対して素直に驚き、現実を忘れて見入ってしまい、そして楽しんでいる姿を認識しているに違いないものと思われる。
    一種の確立したギミックコインによるコインマジックは、マジシャンにとって正当な業務であり、それを遂行する手段であるギミックコインの製造に関連する行為が、実質的な違法とは次元を異にすること、つまり何ら国家社会的な倫理規範に反するようなものではないということをご理解していただくことは、決して難しいことではないものと確信する。
 3 関税法違反も成立しない。
   本件ギミックコインは、関税法に規定される禁制品であるところの「貨幣、紙幣若しくは銀行券又は有価証券の偽造品、変造品及び模造品」の「変造品」には該当しない。
   ここでいう「変造」は刑法等と同様に解されるところ、真正の通貨に変更を加えても、それが、真価の強制通用力を害しない限度にとどまる場合には、変造にならないとされる(注釈刑法(4)・弁6)。
   そして、変造といえる場合の事例として、貨幣の中身をくり抜いたりして、有効量目以下に、その実質を削減した場合が掲げられている。
   本件において輸入しようとしたギミックコインは、いずれもいったん貨幣の中身がくり抜かれているものの、その後スチールあるいはマグネットを埋めることによって、外観、量目ともに真価と区別がつかないものであり、程度の問題としては、貨幣損傷等取締法に規定する「損傷」にあたりうるものではあっても、刑法上の「変造」にまであたりうるものでは決してない。
 4 憲法違反の主張
 (1)手品(またはマジック)をする権利の憲法上の人権性
    手品とは、巧みな手さばきで、人の目をくらまし、不思議なことをしてみせる芸をいう(大辞泉参照・弁7)。
    そして、手品を行うマジシャンは、一つ一つの不思議な現象を組み合わせながら、そこに独自なストーリーをつけて、ひとつのルーティーンとして構成し、不思議な現象とおしゃべりや音楽との相乗効果によって、演じ手の内面的な精神活動を表現していくのである。また、手品は、一般人の固定観念(常識)をこれから崩すことを宣言した上で、本当に崩していくかのごとき現象を起こす、知的なおもしろさを表現するものでもある。さらには、日本の古典でもある和妻といわれる手品では、わび・さびなどの無常観を表現することもある。
    これはとりもなおさず、憲法21条1項で規定される「表現」そのものである。つまり、「表現」とは、「人の内面的な精神活動を外部に(すなわち他者に対して)公表する精神活動であるが、それは単に思想・信条の発表に限定されず、『思想・信条・意見・知識・事実・感情など個人の精神活動にかかわる一切のものの伝達に関する活動』を意味する。」(芦部信喜著 憲法学Ⅲ 240頁・弁8)のである。
    手品の主な役割は、エンターテイメントとしての意味合いが強いが、それだけにとどまらず、不可能を演じることによって、子供達に夢を与えたり、壁にぶつかって苦しんでいる人に勇気を与えたり、あるいは、病院内における患者のリハビリテーションに利用されたり、知能の発育のために利用されたり、また演じるという行為を通じて人を楽しませることができたという自信回復や自己啓発のために利用されたりと、その活躍する場面は非常に多い。プロマジシャンの中には、手品における不思議な現象を用いながら、社会風刺を行い、自らの政治的意見をも表明する方(ケン正木氏・被告Aの師匠)もおり、手品の可能性は無限にある。最近では、人と人とのコミュニケーションツールとしての役割も重要視されているほどである(弁9)。
    一方、手品の歴史は非常に古く、聖書にも例えば、モーゼとアロンがエジプト王に対し人民を解放して他の地へ移り住めるように嘆願した話がある。モーゼの使命が神の命を受けたものであることを証明するため、持っていた杖をヘビに変えたという記述があるほどであり、紀元前からの歴史のある芸術なのである(ターベルコース・イン・マジック第1巻 21頁・弁10)。
    このように、手品を行うことは、歴史性を備え、かつ、それを演じることによって個人の自己実現あるいは自己統治の実現に寄与する性格をも有するものであって、憲法21条1項で規定される表現の自由で保障される基本的人権であることに間違いはない。
    そして、このような個人の人格的利益に密接にかかわる精神的自由権に対する制約は、他者加害を生じるがごとき内在的制約の場合を除いては許されるべきではないのは当然であり、憲法12条・13条等に規定される「公共の福祉」とはそのことを意味するものである(宮沢俊義説・通説)。
    本法による制約目的が何なのか、残念ながら誰も明確に理解できていないのが現状であるし、上記のごとき立法の経緯からしても本法が本件に当てはまらないし、そのような状況の下で制約に従わなければならないことにつき納得できる理由が示されてこなかったこと自体が問題なのである。つまり、規制されるべき合理的な目的自体が欠缼しているのである。
 (2)本件での規制の態様
    本件における公訴事実は、ギミックコインを造るために日本円の真貨を「集めた」行為と、海外に発注し製造して貰ったギミックコインを「輸入」した行為である。
    前述したように、マジック界においては、ギミックコインを日本国内において製造する行為は、法律に触れるという認識があったが故に、合法的に日本円のギミックコインを仕入れるのであれば、海外に発注して輸入すればよい、との認識が通常であった。
    それを裏付けるがごとく、日本を代表するマジシャンであるミスターマリックが、セロが、ヒロ・サカイが、こぞってテレビ番組において日本円によるギミックコインを使って不思議な現象を起こし、それがお茶の間の国民にうけ、現在に至るまで演じ続けられてきたのである。
    そして、先日のフレンチドロップ店主の庄野氏らが、貨幣損傷等取締法違反で逮捕されたときのマスコミによる報道等でも、所持することも、使用することも何ら違法ではないと報道され、局アナがギミックコインを実際に使用して、その種明かし、すなわち、コインの構造を懇切丁寧に解説するということを番組の中でやり始めたという経緯があった。
    ところが、本件のごとき規制のされ方は、これまでのマジック界における認識を全く覆すものである。つまり、海外に発注するためには日本円を集めなければならず、かつ、それを日本で所持、あるいは使用するためにはこれを輸入しなければならないことになる。そのいずれもが法に触れるということになれば、この世の中に日本円によるギミックコインが存在してはならないということになり、上記のようなマジック番組における演技も報道局によるギミックコインを使用しての種明かし的報道も、法律的には成り立ってはならないものとなる。
    つまり、日本円によるギミックコインによるマジックを国が「全面的に」規制するという態様のものとなるのは、説明を要するまでもない。
    先に述べた貨幣損傷等取締法の存在自体に対する疑義、また、同法がギミックコイン作成に対して適用されることに対しての疑義があるにもかかわらず、さらに関税法をも重畳適用することによって、完全に日本円によるギミックコインによるマジックを封鎖するがごとき法律の適用の仕方は、明らかに憲法21条1項で認められた表現の自由を構成する手品を演じる自由を不当に制約するものであり、本件にこれらの法律が適用される限り、違憲と判断されなければならないことは疑う余地もない。
第4 結 論
   以上より、裁判所におかれましては、これまでに述べた趣旨をよく酌み取って頂いた上で、是非とも無罪の判決を賜りたく、弁論する次第である。
                               以    上
 

投稿者 ono : 21:33 | コメント (2)

2007年06月19日

【マジック裁判・民事】マジック裁判の原告団追加募集の件

おかげさまで、5月1日の提訴、記者会見以来、原告団に加わりたいとの申し出を多数受けました。

第1陣は、49名の原告団でしたが、追加分として、今日現在で45名の方が委任状を出してくださいました。

第1回の期日(7/24)までに追加分を提訴し、併合したく思っていますので、一応追加募集の締め切りを、今月いっぱいにしたいと思います。
ご希望の方は、私宛にメールをください。追って、案内、アンケート、委任状の3点セットを添付ファイルで遅らせて頂きます。

後6名で、当初予定していた原告団100名に達します。
是非、よろしくお願いします。

訴訟へのカンパにつきましては、引き続き締め切ることなく受け付けますので、よろしくお願いします。

投稿者 ono : 17:32 | コメント (1)

2007年06月15日

【マジック裁判・民事】マジック裁判、期日決まる!!

先日起こしました、日本テレビ及びテレビ朝日相手の裁判(民事事件)の第1回弁論期日が決まりました。

7月24日 午前11時 東京地方裁判所(法廷は追ってお知らせします)

です。

それと、控訴していた貨幣損傷等取締法違反および関税法違反(ギミックコイン刑事事件)の第1回公判期日も決まりました。

8月13日午前11時 東京高等裁判所718号法廷

です。

いずれも傍聴自由です。藤山新太郎氏がいずれにも出席して下さいます。
裁判所の方で、傍聴される方、また、民事の方で原告団になっている方で裁判に出席される方の人数を把握したいとのことですので、参加したい、傍聴したいという方、メールで一報頂けると助かります。

マジックの奥深さ、エンターテイメント性等、裁判所に良く理解してもらえるよう、全力を尽くしますので、応援のほど、よろしくお願いします。

投稿者 ono : 11:27 | コメント (4)

2007年05月01日

【マジック裁判・民事】日テレ、テレ朝を提訴!!

本日、東京地方裁判所に日本テレビとテレビ朝日を被告とする、損害賠償請求等の訴訟を提起してきました。

午後1時から、東京地方裁判所の司法記者クラブで、記者会見を開き、藤山新太郎氏とともに、今回の事件の経緯、主張の内容等について、説明をしてきました。
13社のマスコミの記者と名刺交換しましたが、記者室は満席状態で、珍しい裁判ということでの注目度はあるようです。
早速、フジテレビの報道で、会見の模様が放送されたようです。

明日5/2午前8時からの、フジテレビ「とくダネ!」という番組で取り上げてくれるようですので、興味のある方はご覧ください。

今日現在での、原告団は49名、請求金額は合計197万7870円(内訳 ギミックコイン価値減損額が50万7870円、慰謝料が1名につき3万円、計147万円)です。

今回の件で、さらに興味を持たれ、自らも原告団に加わりたいという方、是非ご連絡ください。

第1回期日が決まり次第、また公表しますので、是非傍聴にいらして頂けると嬉しく思います。

(5/2 追記)
5/1の夕方から、フジテレビの「スーパーニュース」で会見の模様が報道されたとのことです。
日本奇術協会の協会員でもある、牧原氏は、TVで
「1万円とかかけて買った商品を簡単に放送でバラされてしまうー」
「タネ明かしされてしまうというところで、憤った方は、沢山いたと思います。」
とコメントされていたそうです。まさに、その通りだと思います。

この裁判に協力頂ける方、原告団に参加頂ける方は、私宛にメールをください。
また、この裁判は、皆さんからの寄付によって成り立っています。参加はできないけど、寄付だけはさせていただきたい、という方もいらっしゃります。大変有り難いことだと思います。寄付の希望者も同様に、私宛にメールをください(一口1000円以上、もれなく訴状を差し上げます)。

昨日、今日の報道(TV、新聞、ネット等)を見て、励ましのメッセージを頂いた方々、本当にありがとうございます。原告団一同、力を合わせて頑張って行きたいと思いますので、今後とも注目していてください。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070501-00000108-mai-soci

投稿者 ono : 17:51 | コメント (13)

2007年04月24日

【マジック裁判・民事】5月1日に提訴と記者会見を行います!!

お待たせしました。

昨年11月のギミックコイン製造者の逮捕に伴う、テレビ局の報道において、犯罪報道の枠を超えて、あたかもギミックコインの種を暴露することを目的とした報道がなされたことに対して、ギミックコイン所持者のギミックコインの価値を減損させたこと、及び、各マジシャンの受忍限度を超える怒り、名誉権侵害を理由とする、損害賠償および謝罪を求める裁判を、いよいよ5月1日に提訴する運びとなりました。

そして、それに伴い、同日(5/1)午後1時より、東京地方裁判所2Fの司法記者室において、記者会見を開くことになりました。

今回、原告団に名前を連ねて頂いた方は、今日現在で48名にのぼり、まだまだ増える予定でいます。まだ間に合いますので、是非、原告団に加わって頂ければと思います。

そして、協力頂いた方がたに、是非一緒に記者会見に臨みませんか?
私と、藤山新太郎氏が中心となって記者会見を行いますが、席をたくさん作ってもらいますので、一緒に記者会見される側の席に座って、怒りを現して見ませんか?

もし、ご希望の方がいらっしゃれば、私宛に連絡をください。
よろしくお願いします。

なお、ご協力頂いた方(原告団の方)で、訴状の内容等をごらんになりたい方は、連絡を頂ければ、添付ファイルにしてお送りします。

投稿者 ono : 18:37 | コメント (2)

2007年04月22日

【マジック裁判・刑事】アメリカでも貨幣の鋳つぶしが禁止に!!

昨年の12月の記事ですが、アメリカのUSA TODAYという新聞で、こんな記事を見つけました。

http://www.usatoday.com/money/2006-12-14-melting-ban-usat_x.htm

アメリカでは、金属の高騰によって、ニッケルコインやペニーコインの原価が額面を超えるようになったとのことで、利益を得るため(for profit)の鋳つぶし(melt down)が法律で禁止されるようになったそうです。

先日、裁判所は、貨幣損傷等取締法の立法趣旨がすでに使命を終えたという私の主張に対して、新たな趣旨を展開されました(「日本国政府発行の貨幣に対する信用を維持し、その円滑な流通を確保するとの観点から、特にその貨幣としての経済的価値が比較的低いが故に故意に損傷等されるおそれがあるとしてかかる行為を処罰の対象としたものと解される」)。

しかしながら、米国の例をみても、本法律の元々の立法経緯をみても、裁判所が新たに展開された立法趣旨などは、微塵も検討されていないのです。それは当たり前です。それらの法益は、刑法上、通貨偽造・変造罪で考慮されているからなのです。アメリカでも同じなのです(http://www.usmint.gov/consumer/18USC331.cfm?flash=yes)。
要は、裁判所の判断は、有罪にするための屁理屈であることが、この記事からもよくわかりました。

それにしても、アメリカでも同じような法律が制定されたということで、ギミックコインに対する影響が出るのかどうか、興味深い反面、アメリカのような文化に理解のあるお国柄(少なくとも日本よりは)においては、そんな心配は全くないのかな、という羨望のような思いが交錯します。

投稿者 ono : 15:56 | コメント (0)

2007年04月16日

【マジック裁判・刑事】貨幣損傷等取締法違反の判決!

新聞報道等ですでに御存じの方もおられると思いますが、http://www.47news.jp/CN/200704/CN2007041301000656.html先日のブログで書きました、貨幣損傷等取締法違反、及び関税法違反被告事件の刑事裁判の判決がでました。
結論としては、有罪判決でした。藤山さんの演じた手品に嬉々として喜んで居られた裁判官の判決としては、あまりにも普通すぎる内容で、残念な内容です。

弁護人の主張に対する判断について、裁判所が判決において示された部分を全文引用します。

弁護人の主張というのは、判決の内容を引用すると以下のとおりです。
1 貨幣損傷等取締法違反について
①貨幣損傷等取締法の立法経緯に照らし、同法は補助貨幣を地金として販売又は使用する目的で損傷等する行為を処罰するものであるから、マジック用品として販売するために貨幣を切削等することは「損傷」に当たらない。
②真貨を加工したマジック用コイン(いわゆるギミックコイン)の製造はギミックコインによる演技というマジシャンにとっての正当業務行為(刑法35条)に必要不可欠な行為であるから違法性が阻却される。
③ 本件は可罰的違法性がない。
2 関税法違反について
  本件ギミックコインは関税法が輸入してはならない貨物として規制する「貨幣の変造品」には当たらない。
3 憲法21条1項違反について
  貨幣損傷等取締法違反と関税法を重畳的に適用することは、日本円のギミックコインによるマジックを封鎖することになり、表現の自由(憲法21条1項)に含まれる手品を演じる自由を不当に制約するので、本件にこれらの法律を適用する限りにおいて違憲である。

裁判所の判断は以下の通りです。
1(貨幣損傷等取締法違反)について
  ①について、貨幣損傷等取締法の文言上、同法が処罰の対象とする行為が補助貨幣を地金として販売又は使用する目的によるものに限られないことは明きらかであり、また、「損傷」という文言の通常の意義に照らして、本件ギミックコインのように貨幣の片面を削る等の行為が貨幣の損傷に当たることもまた明きらかである。弁護人は、貨幣損傷等取締法が貨幣の券面額よりもその地金自体の価格の方が高く不釣り合いであった時代に貨幣を鋳つぶして地金として販売することを防ぐ目的で制定されたもので、現在はそのような状況はなく、同法はその使命を終えたと主張するが、同法は、日本国政府発行の貨幣に対する信用を維持し、その円滑な流通を確保するとの観点から、特にその貨幣としての経済的価値が比較的低いが故に故意に損傷等されるおそれがあるとしてかかる行為を処罰の対象としたものと解されるから、現在においてもなお一定の存在意義を有しているというべきである。
  ②について、刑法35条の「正当な業務による行為」といえるためには、当該行為が法秩序全体の見地から見て社会的に相当と認められることが必要であるところ、前記のとおりの貨幣損傷等取締法の趣旨のほか社会通念に照らすと、マジシャンのギミックコインによる演技自体はともかく、日本円の真貨を材料とするギミックコインの製造や輸入については社会的に相当とは認めがたいのであって、本件のごとくマジック用品として販売するためにギミックコインを製造する目的で貨幣を集める行為は正当な業務による行為ということはできない。
  ③については、本件において被告人3名が損傷する目的で集めた貨幣は500円貨幣50枚、100円貨幣50枚及び10円貨幣100枚の合計200枚であり、損傷の程度も内部をくり抜くなど著しいものであって、可罰的違法性がないとはいえない。
2(関税法違反)について
  関税法上の輸入してはならない貨物である「貨幣の変造品」の「変造」とは刑法148条1項等における「変造」と同様に、真正な通貨にその特徴を保持しつつ変更を加えることをいうと解されるところ、被告人3名が輸入しようとしたギミックコインは、一見真正な通貨としての外観を有しながら、実際には貨幣の片面全体を切削したり、貨幣の内部を削って磁性体を間に入れたりするなど重大な変更を加えており、貨幣としての強制通用力を失う程度にその実質を削減されたものであるから、「貨幣の変造品」に当たるというべきである。
3(憲法21条1項違反)について
  手品ないしマジックを演じる自由が表現の自由(憲法21条1項)に含まれるものとして保障されるとしても、その自由が公共の福祉による制約を受けるのは当然のことである。そして、貨幣損傷等取締法の目的は上記のとおり貨幣に対する信用を維持し、その円滑な流通を確保することにあり、また、関税法が貨幣の変造品を輸入禁止する目的も同様に貨幣に対する信用を保護し、経済秩序を維持することにあると解され、いずれの目的も正当であり、各罰則規定はその目的達成の手段として必要最小限度の規制ということができる。確かに、これらの法律により、日本円の貨幣を材料としたギミックコインによるマジックを行うことは事実上困難になるが、これらの法律は、マジックを演じる自由を直接規制するものではなく、また、コインを使用したマジック全般が制約されることになるわけではないから、マジックを演じる自由に対する公共の福祉に基づくやむを得ない制約というべきであって、適用違憲の問題は生じない。

とのことだそうです。
 私の主張したところのうち、上記のような判断の妨げになるところは、触れることもなくスルーしているところも多々あり、また、マジックの奥深さ(色々な意味で)を理解していないが故の判断でもありますので、まだまだ控訴審で十分に戦う余地が残されている、というのが率直な感想です。

 なお、例の日テレ・テレ朝裁判の法ですが、現在記者会見に大物マジシャンの同席をお願いするべく、動いております。その関係で、提訴が来週くらいにずれ込むことになりそうです。原告団に参加したいという方、まだまだ間に合いますので、是非私宛に問い合わせ下さい。


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関連記事のリンク(4月20日追記)

【ライブドア ニュースより】
http://news.livedoor.com/article/detail/3126143/

【日刊スポーツ 阿曽山大噴火コラムより】
http://www.nikkansports.com/general/asozan/2007/asozan086.html

投稿者 ono : 19:12 | コメント (6)

2007年04月12日

【マジック裁判・刑事】いよいよ明日、ギミックコイン刑事裁判、判決言渡!!

先日ブログに書きました、ギミックコインの発注、輸入をしたあるプロマジシャンの刑事裁判(貨幣損傷等取締法違反、関税法違反)の公判で、憲法違反を理由に無罪主張をした件の判決が、明日言い渡されます。

この裁判自体は、3月6日に行われたのですが、そのときに傍聴マニアとして有名な阿曽山大噴火という大川興業の芸人が来ており、そのときの模様を、TBSラジオのストリームという番組でしゃべっていました(3/30放送)。

その時の放送が、ネットからダウンロードして聞けますので、お聞きになってみて下さい。

http://tbs954.cocolog-nifty.com/st/2007/03/330_d986.html

多少脚色されていますが、許せる範囲ですし、なかなかよくレポートされていると思います。

この判決の注目点は、結果はもちろんですが、私の方で主張した無罪の理由(憲法違反に限らず、色々な主張をしました。詳しくは、先日の私のブログをご参照下さい。)に対して、どのような裁判所の見解が示されるか、ということになります。

判決を受取次第、できる限り判決内容を公開したく思っていますし、興味のある方は是非、傍聴に来てください。
裁判官が、言い渡しに時間を30分間もとるという異例な扱いです。判決内容まですべて朗読されることになり、裁判所の見解がその場でわかるかと思います。ただ、満席になることが予定されますので、早めに裁判所に来られることをお勧めします。

東京地方裁判所 801号法廷。午後2時30分から午後3時までと指定されています。

それと同時に、来週中くらいに、日本テレビ、テレビ朝日のギミックコインのタネ暴露報道に対する損害賠償請求の裁判を起こす予定です。記者会見を開いて、マジックに対する法的保護の稀薄性を放置していてはいけない、またそのことを良いことにそれにただ乗りして視聴率を稼ぐようなことをしてはならない、ということを訴えていきたいと思っています。

また、記者会見等の具体的な日取り等が決まりましたら、ブログにてお知らせします。

投稿者 ono : 14:41 | コメント (3)

2007年03月06日

【マジック裁判・刑事】ギミックコインの刑事裁判、判決は4月13日!

一つ前のブログに書きました、ある東京のマジシャンが、ギミックコインを海外に発注するために日本の貨幣を集め、かつ、海外で製造してもらったギミックコインを日本に輸入したという行為が、貨幣損傷等取締法違反および関税法違反で起訴された刑事裁判の初公判が、今日、東京地方裁判所でありました。

ここのブログで宣告していたとおり、無罪主張をしてきました。
理由としては、以下の4つです。
1つ目は、そもそも、貨幣損傷等取締法の「損傷」に該当しないし、関税法の「変造」貨幣にも該当しない。
2つ目は、ギミックコインを発注、輸入する行為は、マジシャンの正当な業務行為の一環として行うものであり、違法性がない。
3つ目は、仮に違法であったとしても、可罰的な程度ではなく、社会的に不相当な行為とはいえず、同様に違法性が阻却される。
4つ目は、本件のようにギミックコインを海外に発注し、輸入する行為まで規制されたのでは、日本円によるギミックコインは世の中にあってはいけないことになり、これはマジシャンに対する日本円のギミックコインによるマジックを禁止することになり、これは手品を演じる自由、すなわち憲法上認められた表現の自由に対する不当な制限であり、本件にこれらの法律が適用される限りで、違憲である。
というものです。

いずれ、法廷で述べた弁論(15ページ相当)を公開しますので、詳しいことはその中でお読みいただければと思います。

それより何より裁判自体は、非常によい裁判でした。
無罪主張、憲法違反の主張に対して、裁判官が非常に良く耳を傾けてくれました。

今日の裁判の目玉は、証人としての藤山新太郎さんの証言が聞けること、そして、前代未聞の法廷においてマジックの実演を実現させることでした。

こちらから、書証として11種類(ボボのモダンコインマジックや、ホーカス・ポーカス・ジュニアの写し、ダイバーノンの略歴、ターベルコースの写し等々いろんなものを出しました。)、証人として藤山さんを、検証として藤山さんによるコインマジックの実演を請求しました。
案の定、検察官は国会の議事録と法律のコンメンタールを同意したのみで、後はすべて関連性がないとのことで不同意でした。
しかしながら、関連性がある旨を具体的に私の方で説明すると、裁判官は検察官の意見をすべて退け、結局すべての書証を証拠として採用してくれました。

藤山さんの証人申請も、検察官は必要性がない旨意見を述べていましたが、弁護側が主張する違法性の阻却に関すること、また、憲法違反の主張にも関連することを裁判所が理解してくれ、採用してもらいました。
それよりなにより、これは私もびっくりしたのですが、「マジックの現象を口頭で説明するのは難しいため、実際に目の前で見て頂きたい。そのために、法廷で手品の実演をさせて頂きたい。つまり、検証の請求をさせていただきたい。」という請求をしたところ、裁判官は、「検証ということになると手続き的にいろいろと面倒なところがあるので、証人尋問の中で必要な場面で手品を演じるということでいかがですか?」と実演することを認めてくださったのです。

もちろん、検察官からは、「手品の実演をするというのは、前例のないことですし、事実を語るという証人尋問としての性格にそぐわない。」と反対意見を述べておられましたが、その意見を退け、藤山さんによるギミックコインを使ったマジックの実演がなんと実現されたのでした。シェルコインを使ったコインの変化の現象を見せて頂きました。

藤山さんの証言は、実に見事でした。そして、打ち合わせになかった事実が明らかになりました。それは、和妻の世界では、実は江戸時代から、一文銭のギミックコインがあったという事実であり、その奇術が未だに行われているということでした。日本における日本円によるギミックコインの歴史が、こんなに古くあることを初めて知りました。

被告人らの法廷における受け答えも実に立派でした。ギミックコインを国内で作ることは何となく法律に引っかかるということは知っていたが、海外に発注する行為まで法律に引っかかるということは、全く思っていなかったこと。ましてや、集める行為が法律に引っかかることなど夢にも思っていなかったことをハッキリと供述することができました。
また、なぜ法律に引っかかるかもしれないと思いながらも、マジック業界においてギミックコインが売られ続けられてきたのかということについて、規制される合理的な理由が見いだせないからだ、ということもそれぞれに主張することができました。その通りだと思います。規制される理由に納得するからこそ、人はその規制に従うのであって、納得のできないものに対して規制される謂われはないのです。

もちろん、なぜマジシャンは日本円のギミックコインを使いたがるのか、という問いに対して、ダイ・バーノンの''Be Natural !''という教えがあり、非常に説得力があることをマジシャンは肌を持って感じていることも供述できました。

検察官は、まさかこのような展開になるとは思っていなかったようで、法廷においてその準備不足が露見された格好になり、しどろもどろといった感じで、被告人サイドの情熱に圧倒されている感じでした。

検察官によるありきたりの論告に続いて、私の方で15ページにわたる弁論を読み上げました。時間の関係で骨子だけでしたが、傍聴人から後から聞いた話では、私の読み上げる弁論に、裁判官は一つ一つ頷きながら、一生懸命聞いてくださっていたとのことです。

最後の締めで、「無罪の判決を賜りたく、弁論する次第です」と述べたところで、傍聴席から拍手が起きました。こんな経験は初めてです。正味、2時間30分の裁判でした。

判決は、4月13日午後2時30分から、30分掛けて行われることになりました。どこまでこちら側の主張を裁判所が酌み取ってくださるのか、今から待ち遠しい限りです。
良い判決をいただけるよう、願うばかりです。

投稿者 ono : 20:59 | コメント (8)

2007年02月13日

【マジック裁判・刑事】憲法違反による無罪主張!

東京の某マジシャンに対しても、ギミックコインの製造を海外の業者に発注するために日本のコインを集めたこと、そして、変造されたコインを輸入しようとしたという理由で、貨幣損傷等取締法違反および関税法違反という罪名で、先日東京地方裁判所に起訴され、当職がその弁護人に就任しました。

 ギミックコインによるマジックは、相当の歴史がありますし確立されたマジックの一分野でもあります。また、日本においてはやはり日本のコインによって演じたいという方が多数いらっしゃると思います。
 ところが、上記のようなやられ方をされると、事実上、日本円によるギミックコインを入手する方法が途絶えることになり、パフォーマーもこれを演じることができなくなってしまいます。

 貨幣損傷等取締法というのは、コインに金等が含まれていた時代に、コインの額面以上の価値がコイン自体に含まれ、これを貨幣としてではなく、鋳つぶして金として売った方が利益になると考える人たちを規制する法律でした。
 もはや、このような状況のないこの法律は、使命を終えたといっても過言ではなく、そのような意味のない法律を、日本円によるギミックコインによる実演を規制する手段になっているのは、決して見逃すことができるものではありません。

 手品を実演する権利は、憲法上、表現の自由(憲法21条1項)の一種として認められると考えます。上記のごとき国家による法律の適用の仕方は、日本のマジシャンが自国のコインで、古来よりコインマジックの一分野として築き上げられてきた、トリックコインという分野を、なぜ国家は規制をするのか、このような規制の仕方は、マジックを演じる自由(憲法上認められた人権)を制約するものであり、明らかにこの表現の自由を制約するもので、憲法違反であると考えます。
 そこで、この刑事裁判では、やった事実は認めるものの(被告人は法を犯したということは十分反省しており、被告人が無罪を争うわけではありません。あくまでも弁護人としての意見です)、法律の適用の仕方が憲法違反である旨を理由として、無罪主張をしようという方針でおります。
 
 ちなみに、上記刑事裁判、3月上旬に東京地方裁判所で開かれます。某重鎮のマジシャンにも証言台に立って頂くようお願いしてあります。興味のある方、傍聴したいという方、個別にメールをいただければ、日時、法廷番号をお教えします(傍聴席が24席しかないそうですので、傍聴できない可能性もあります)。

投稿者 ono : 21:03 | コメント (2)

2006年12月19日

マジック裁判その後

先日、JCMA(日本クロースアップマジシャンズ協会)主催のマジックサークルにおいて、本件マジック裁判の説明会を行いました。

SAMジャパン支配人の藤山新太郎氏とともに、これまでの経緯の説明と、本件報道の問題点、貨幣損傷等取締法そのものの問題点、今後私たちが裁判の中で目指すもの等、多くの皆さんと議論させて頂きました。

会場には、30人以上のマジック愛好家が来てくださり、熱心に話を聞いてくださいました。一通り話し終えたときには、ほぼ皆さんが、本件裁判に参加表明してくださいました。

これまでの経緯について補足します。
これまでは、日本テレビを中心に話が進んできましたが、同様に内容証明を提出したテレビ朝日からは全く回答がなく、不誠実であるため、こちらも被告にさせて頂くことになりました。

訴訟の内容としては、ギミックコインのエンドユーザーを中心に構成し、不用意な種明かしによる、価値減少行為を不法行為と見て裁判を起こすというものです。たとえば、推理小説を買ってきて、さて読み始めようとしたら、「その犯人は、○○だよ。」と言われたら、もう読む気がしませんし、読む価値もありません。立派な価値減少行為です。
ギミックコインは、日本円でも外国コインでもかまいません。同じ話ですから。持っている方は、是非一緒に参加しましょう。

また、「マジシャンら逮捕」という見出しも、故意にマジシャンの名誉を傷つけるものです。厳密には、ギミックコインの製造者とその製造を指示した者が逮捕されたのであって、あたかもギミックコインを操るマジシャンらが、皆犯罪者のごとく扱われたような感覚が強いところです。
こちらの方も、同様に責任追及していくつもりですので、ギミックコインを持っていないマジシャンも、同様に参加して頂ければと思います。

貨幣損傷等取締法そのものも、その立法趣旨は、コインに価格以上の価値ある金、銀等が含まれていた時代に、コインを鋳つぶして金、あるいは銀として売ることを防止するということにあったのですが、現在ではそのような背景事実が皆無であるため、もはやこの法律の使命は終わったと評しても過言ではないと考えます。
法律というのは、およそ一般的、抽象的な性質を持っていなければなりません。つまり、適用対象とされる人、事件が、不特定であることが必要です。そうでなければ、ねらい打ちの弊害があるからです。
現在、この法律が適用される余地があるとすれば、ギミックコイン製造者以外にはありえません。とするならば、もはやこの法律は、先の一般的・抽象的な性格がなくなっており、憲法論的にみても存在意義が疑わしいものでもあります。

今後、この裁判で目指す道については、藤山新太郎さんが語られていたように、「今後、マジックに関する放送をする場合で、かつ、その中に種明かしが含まれる場合には、事前にその放送の是非を、SAMなり協会なりに問い合わせ、その容認を得ること。」との一文を、裁判上の和解調書によって勝ち取ることにつきると思われます。

マジック裁判に関しての案内、アンケート、訴訟委任状は、私宛(onotomo@nifty.ne.jp)にメールをいただければ、添付ファイルにしてお送りします。100人以上の原告団を形成したく思っています。是非、参加のほどご検討ください。

PS 東京堂出版から出ている「ザ・マジック」という雑誌の第70号(最近出たものです)58頁に関連記事が出ております。書店等でお読みになって頂けると幸甚です。

投稿者 ono : 17:12 | コメント (0)

2006年11月28日

日本テレビからの回答および今後の対応について

先日、日本テレビからの回答がきました。予想はしていましたが、愕然とするような、全くマジックに対する無理解な回答で、情けなくなるような回答内容でした。

中心部分を抜粋すると
「今回の取材・放送は、大阪市内のマジックバーのオーナーらが貨幣損傷等取締法違反容疑で逮捕された事件にあわせて、日本円の硬貨を加工したマジック商品が広く販売されている実態を報道したものです。この点について他意はなく、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。」
とのことでした。

藤山新太郎氏曰く、「これは弱いものいじめである。」
まさにその通りである。マスコミという社会的権力によって、一個人の職業マジシャンおよびマジック愛好家のマジックを演じる自由が、種明かし行為によって、相当な制約を受けたのである。
また、中高生や大学生が、お小遣いやお年玉、アルバイトで一生懸命貯めたお金で、念願のギミックコインを購入し、「これでみんなを驚かしてやろう。楽しませてやろう。」とワクワクしているところに、好むと好まざるとを問わず、何らの視聴者の積極的なアクセスなくして、種明かし報道がされ、コインの使い道が殆どなくなってしまった・・・という悲劇があちらこちらで起きているのである。

たとえが適切かどうかわからないが、ミステリー小説を買った側から、「その結末はこうで、犯人は誰なんだよ。」とささやかれたらどう思うだろうか。誰もその小説を買おうとも思わないし、せっかく買っても読もうとも思わないだろう。仮に小説自体の文章力や構成等に価値を見いだすにしても、一番の面白い部分についての価値は無きに等しい。

ギミックコインについても、正に同じである。
コインマジックについては、もちろんスライハンドによるテクニカルなマジックもあるが、ギミックコインによる現象は絶対に説明の付かない超常現象を起こすことができ、プロマジシャンでも所々スパイスとして、手順の中に取り入れて演じるものである。

上記回答を受領後、SAMジャパンの藤山新太郎氏と田代茂氏とともに会合を持ち、日本テレビに対して提訴する方向で考えをまとめた(詳しい内容についてはお問い合わせください)。

できるだけ多くのプロマジシャンの方々、また、できるだけ多くのマジック愛好家の皆さん、さらには、ギミックコインをお持ちの方々の参加をここで呼びかけます。そして、一緒に裁判の原告団の一員になって戦いましょう。

ザ・マジックの次号に、今回の事件についての経緯が1頁割かれて記載されています。

今後は、アメリカのSAM本部の協力も求めつつ、また、アメリカのマジック界の注目も集めつつ進めていくことになるでしょう。ある意味、前代未聞の裁判になるかと思います。

自分も当事者になって一緒に戦おうという方、是非私宛にメールをください。
onotomo@nifty.ne.jp
折り返し、お返事を差し上げます。

よろしくお願いします。

投稿者 ono : 14:27 | コメント (16)

2006年11月20日

放送局への抗議文を内容証明にて提出!!

日テレの目に余る報道内容に対し、まずは第1弾として、抗議文を内容証明で送りつけました。
アメリカマジシャンズ協会日本支部(SAMジャパン)の代表を務められる、藤山新太郎氏と協力しながら、11月16日夕刻に内容証明を送付し、翌17日には日本テレビ宛てに配達されています。

特に、15日に放映されていた「ザ・ワイド」、「ニュースZERO」において、問題になった空手コインに限らず、全く関係のないシガースルーコイン、ホールディングコイン、シェルコイン、スコッチ&ソーダ等、その仕組みやら現象やらを報道し、種明かしが主目的であるかの如き報道がなされたことに対しての抗議です。

また、翌16日には、テレビ朝日に対して、15日放送の「スクランブル」「Jチャンネル」において、ギミックコインの種明かしをしたことに対して抗議の内容証明を送付しました。

なかでも、日本テレビの報道は、他局と比しても比べものにならないほど悪質であることは、マジック愛好家であれば誰しもがよく理解できるはずのものです。

マジックは、タネが明かされないことを前提に成り立つ芸術であることは、誰しもが認めるところです。また、このような不思議な現象が起きることに対して、ネタに対して多額の金額を支払うわけです。そして、どうすれば不思議な現象が起きるかということは、マジックに携わる人たちの間では、サーストンの3原則の一つにあるように、「絶対にタネを明かすべからず」という掟にもなっており、これが守られているからこそ、現在においてもマジックは一般大衆のエンターテイメントとして維持され続けているわけですし、これを専門に見せる職業マジシャンも存在するわけです。

しかしながら、日本テレビのした報道は、これらに真っ向から反するものでした。散々、前田知洋さんを持ち上げてマジックで視聴率を稼ぎ、一時期のブームが去りはじめると、今度は種明かしをすることで視聴率を稼ぐ・・・。以前も、マリックさんの超魔術ブームで散々視聴率を稼いでおきながら、そのブームが去ろうとすると今度は種明かしで視聴率を稼いだこともあった・・・。また、訳のわからないマスクマジシャンによる種明かしを放映したのも日本テレビである。マジック界をどう思っているのか、また、何度このようなことを繰り返せばよいのか。

このような種明かし的報道により、マジック界の外部的名誉がどれだけ低下したか想像に難くなく、また、一生懸命お金を貯めてギミックコインを買った方達は、心ない日本テレビの報道のお陰で、その利用価値が殆ど無に帰してしまった、、、この責任をどう取ってくれるのだろうか。

もちろん、犯罪に手を染めてまで人を楽しませようとするマジシャン、偽造コインを作らせるために協力を惜しまないマジシャンというようなレッテルをこれらの報道によって貼られてしまい、この報道後営業をしにくくなった職業マジシャンの方もたくさんいる。彼らの休業損害を補償する覚悟で報道を行ったのだろうか。

少なくとも、日本テレビに対しては、先の抗議文(内容証明)が到達後1週間以内に、なぜ犯罪事実だけの報道にとどまらず、上記のような種明かし的報道をしたのかについての説明を求めました。11/17に到達された証明書がございますので、1週間以内に回答がくれば、またご報告をさせていただきます。

投稿者 ono : 12:44 | コメント (8)

2006年11月16日

ギミックコイン事件のテレビ報道について

日本テレビは、余程種明かしが好きなようである。以前もマスクマジシャンを登場させて、タネの暴露番組を放送していた。

昨日の貨幣損傷等取締法違反によるマジシャンの検挙についても、犯罪報道を通り超えて、あたかも種明かしを主体とする報道に打って変わり、奇術界から反発の声が聞こえてきている。

まず、用語等の誤解があるようなので、少し解説をする。
今回の事件は、あくまでも貨幣に穴を開けたりしたという、貨幣自体を傷つけたことが問題とされているのであって、別に偽造コインを作ったわけでも変造コインを作ったわけでもない。
「偽造」というのは、偽物に手を加えて真価の如き外観を作り上げたことを言い、「変造」は真価に手を加えて別の価値のある貨幣に作り替えることを言う。お札にゼロを一つ付け加えるというようなものだが、現行の貨幣ではあまり当てはまる余地はない。

偽造や変造したコインを売ったりするのは違法だが、傷んだコインを持っていることも、手品で使うことも、誰かに売ることも全く違法とは関係がない。
したがって、マジシャンは、今まで通り日本円のギミックコインで演技ができるし、使わなくなったコインを欲しい人に譲ってあげることも問題ない。

さて、本題のテレビ報道である。

余程、手品のタネが視聴率がとれるのか、検挙の報道以来、ひっきりなしにテレビで取り上げられる。
本件で問題になったギミックコインに限らず、ありとあらゆるギミックコインを紹介し始め、それぞれのコインの仕組みを事細かに紹介し、かつ、素人であるキャスターがこれを実際に演じてみせる・・・というお粗末なもの。

犯罪報道であれば、犯罪事実が何だったのかが重要であって、手品の種明かしは全く関係ないはずである。
いわんや、これらを使った手品は、何十年も前から奇術界においては行われており、現在も普通にレパートリーに入っているマジシャンは多い。日本円を使わなくても、アメリカのコインで同様のネタはたくさんあり、これらの種明かし的報道によって、手品の命とも言われるタネが公になってしまった。

世の中にマジシャンという職業人が多数おり、これらのタネの秘密が守られることを前提に、生業を立てている。格別な不思議を演じることができるギミックコインのタネが明かされることの影響は、ただギミックコインを演じられなくなるというだけの話ではない。他の演じる手品にも、「どうせ下らないタネなんだろう。」などという気持ちを見る側に抱かせる。種明かしは、夢を売るマジシャンの存在意義を抹殺しかねないほどの影響をもっているものだと思われる。
その辺をテレビ局は、認識しているのだろうか。余りにも意識レベルの低さに、ただただ呆然とする。

今後、ある奇術団体を通じて、正式に抗議を申し入れることになるだろう。関係者各位に、また、愛好家の皆さんに協力をお願いすることがあると思いますが、その時はご協力をお願いしたい。

投稿者 ono : 14:18 | コメント (8)

2006年11月15日

500円硬貨を加工容疑、マジシャンら4人逮捕

http://www.asahi.com/national/update/1115/TKY200611150235.html
より。

要は、ギミックコイン(貨幣に仕掛けを施すために手を加えたもの)を製造した業者が、貨幣損傷等取締法違反で逮捕されたとのこと。

ちなみに、貨幣損傷等取締法違反とは、以下の条文からなっている。
1 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶしてはならない。
2 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶす目的で集めてはならない。
3 第1項又は前項の規定に違反した者は、これを1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

ここでいう貨幣とは、狭義の貨幣を指しますので、紙幣は含まず、硬貨のみということになります。

マジック愛好家を自負する弁護士として、本件事件を見聞きした感想としては、
「いたって、無粋かつ、ナンセンスである」
というだけです。

この法律自体の妥当性がどの程度あるのか(紙幣は損傷しても良くて、硬貨は駄目というのも、バランスを欠きます)よくわかりませんが、その点は置いておくとして。

本件の場合、硬貨を悪の目的に使うのであれば格別、みんなを喜ばすための改良です。ただ単に形あるものを駄目にしたという訳ではありません。私物であれば、物の効用を喪失させれば、それは器物損壊といって、立派な犯罪になります。しかしならが、手を加えて(加工して)新たな物に作り出した場合には、そこに新たな価値が付加されます。器物損壊の射程ではなくなります。
本件の場合、まさにマジックで人を喜ばせる道具となるように加工されただけなのです。何も単に通過としての利用価値を喪失させたのではなく、マジックの道具として需要のある人に対して、そのような道具に加工して供給しただけなのです。
マジック界では、古くからギミックコインによるマジックがアートとして確立しているのです。二川さんのコインマジック事典、ボボさんのモダン・コインマジック(洋書)等を見ても、クラシックなマジックの一範疇として必ず紹介されています。そのようなアートを表現する道具になっただけなのです。

この法律は、属地主義といって、基本的に国内においてなされた行為について処罰されるものであって、海外で同じ行為がなされても、処罰の対象になりません。したがって、容易にくぐれるような法律なのです。
このような法律を持ち出して、ギミックコインの製造を国内においてのみ取り締まろうというのは、あたかも國の恣意によるアートの締め出しではないかと思いますし、憲法違反だとも思います。

マジックを演じる行為は表現の自由そのものですが、その道具を作り出す行為は、マジックを演じる上で不可欠の行為であり、憲法的には表現の自由の精神に照らして十分に尊重されるべき行為であると考えます。
従いまして、このような表現の自由の精神に照らして十分に尊重されるべき行為を、法律の恣意的運用によって規制をするのは、憲法に違反する重大な行為であると思うのです。

私の考えでは、確かに同法律の構成要件にはあたるものの、違法性はなく、無罪だと考えます。仮に、手品道具を作る場合も含めて全てこの法律の対象になるのだとすれば、この法律自体が憲法に反し、法令違憲になるべきものだと考えます。

結果勝てるかどうかわかりませんが、ぜひともマジック界発展のために、法廷闘争に持ち込んで無罪を争っていただきたいものです。

投稿者 ono : 16:55 | コメント (6)