2008年09月08日

【マジック裁判・民事】9月2日結審、10月30日いよいよ判決言渡し!!

9月2日、第10回目の口頭弁論が開かれ、原告ら側の最終準備書面が陳述され、結審にいたりました。
前代未聞の裁判でもあり、どのような判決が示されるのかが注目されるところです。
注目の判決は、10月30日午後1時15分より、東京地方裁判所708号法廷にて言い渡されます。
判決言渡し後に、記者会見を開く予定です。

なお、今回こちら側で出した最終準備書面を、長くなりますが貼り付けておきます。
前回の藤山さんの尋問内容を受けて、争点がさらに絞れましたので、まとめ直した形になります。
お時間のあるときにでも、ご一読ください。

平成19年(ワ)第10875号 損害賠償等請求事件
平成19年(ワ)第18783号 損害賠償等請求事件
原 告 ら 土 戸 直 哉 外104名
被 告 ら 日本テレビ放送網株式会社 外1名

原告最終準備書面

                          平成20年8月29日
 東京地方裁判所民事第25部甲1A係御中

             原告ら訴訟代理人弁護士  小  野  智  彦

 「秘すれば花なり、秘せずば花なるべからずとなり。」
                    花伝書(風姿花伝)世阿弥編より
第1 本件の問題点
 1 本件の被告らの報道は、ギミックコインの製造について、貨幣損傷取締法違反の容疑で製造者兼マジシャンが逮捕されたことを契機として、いわゆる犯罪報道の一環としてなされたものであり、その報道の必要性は、報道局の判断によるところが大きいし、珍しい容疑だということであれば、話題性もあることから、契機となった事件を報道すること自体に疑問を差し挟むものではない。
   問題は、犯罪報道としての相当性を超えているのではないか、という点であることは繰り返し述べているところである。
 2 相当性を超えるのではないか、ということで原告らが問題としているのは、いわゆる「種明かし」の部分である。
 (1)まずは、「種」の種類についてである。
    土戸証言からも明らかなように、「種」という言葉には2種類の使われ方がある。一つは「ハード面についての種」であり、もう一つは「ソフト面についての種」である。
    つまり、前者(ハード面)については、ギミックコインで言えば、どういう構造になっているのかということであり、例えばシガースルーコインであれば、コインの真ん中に開閉式の穴が開いている、ということであるとか、フォールディングコインであれば、2つ折り、3つ折りに折れ曲がる構造になっており、折曲がった状態から手を放すと元のコインの状態に戻るとか、そういう客観的なギミックの構造のことである。
    被告テレビ朝日の準備書面(4)によれば、警視庁も(捜査官)が報道陣に対し、「本件コインの損傷状況及びそれと手品との関係を説明したことについて、種明かしになるがやむを得ないことであると認めている」として、土戸本人調書16頁を引用するが、全くの的はずれである。警察が報道陣に説明をしたのは、例えば甲2の4の3,6頁、一番上の2枚の写真については、左側(フォールディングコイン)は、500円玉が3つ折りになる客観的な構造を示しているだけであるし、右側(パンクチャーギミック)は、100円玉に穴があり、そこにボールペンが突っ込まれている客観的な状況を説明しただけである。確かに、マジックに使われるコインという説明をしているのであろうが、これらのコインをどのようにマジックに使うのか、についてまでは説明がなされていない。
    マジックの道具は、往々にしてそうであるが、説明書がなければどのように使ったらよいのかすらわからないものであり、ただ折れ曲がるコインをみせられても、どう使うのかまでは分からないため、マジシャン側(ギミックコイン所有者)も、そこまでの説明であれば、客観的な構造の説明のみで現象と結びついていないために、実害もそれほど大きくなく、公共の福祉のために甘受せざるを得ないと考えられる。
    しかしながら、これらのギミックをどのようにマジックに使うのか、という現象を起こすためのやり方(ソフト面についての種)についてまで説明するのは、マジックそのものを崩壊させるもの以外の何ものでもない。
    つまり、同じ種であっても、原告らが最も問題としているのは、「ソフト面についての種」であって、これは「ハード面についての種」と厳格に区別されなければならない。
    これまで述べてきた「種暴露」の問題における「種」については、いずれも「ソフト面についての種」を前提に主張してきたものである。マジックの現象が「花」たるや、「ソフト面についての種」が秘すればこそなのである。
 (2)次に、テレビ局は、マジックの種(ソフト面についての種)の重要性をしっかりと認識していながら、本件のような「種暴露」を行ったことに悪質性がある。
    20年ほど前、Mr.マリックが日本テレビの番組で、100円玉にタバコを通したマジックを披露したことで、一大センセーショナルが起き、今日に続く超魔術ブーム、クロースアップマジックブームに引き継がれ、これまで何度となく、テレビ局によりマジックの特番が制作されてきた。
    その中には、毎回のようにギミックコインによるトリックがあった。もちろん、その時々の「テレビ局のプロデューサーは、当然それがどういうコインを使っているものであるかは知っていたはずです。知らなければ、カメラ位置も決まらないし、ショートしての構成も作れないわけですから。その番組に関わった何人かの人たちは、それがトリックコインであることはもちろん承知で番組を作っています。ですが、彼らは視聴率を取るためにそのことは言わなかったわけ」なのである(土戸本人調書6頁)。
    ところが、本件では、「本来なら種さえ分からなければ、同じ番組を幾つでも作れるものを、とにかく1回の視聴率を取りたいがために暴露した結果が今回のことだろうと思」われる、とする土戸本人の供述は、合理的である。
    つまりは、確信犯だったわけである。
    さらには、本件報道の取材の一環として、被告らはギミックコインを高い金額を出して購入している。被告らは、視聴率を取るための必要経費と考えれば、ギミックコインにかかる費用など安いものであろうが、マジック愛好家にとっては、ギミックコイン1枚の値段は、相当に高価である。本件のような報道がなされれば、少なくとも今後ギミックコインでは視聴率がとれないと認識していたと合理的に推測され(事実、本件以降、日本円のギミックコインを用いたマジックの番組が制作されていない)、ギミックコインを持っていることの価値、即ち、ギミックコインそのものの財産的価値が著しく減損されることを十分に認識していたはずなのである。つまり、この意味においても確信犯だったのである。
    この点、土戸供述は、非常にわかりやすく解説している(土戸本人調書11頁)。
    「3つめの問題が単なる暴露です。何の理由もなく、マジックの種明かし、あるいはマジックの教室の番組でもないのに、テレビのニュースをつけたら種明かしをやっていた、これが問題です。それを見てるお客さんがその種を知りたいかどうか、実際ほとんどの人は知りたくも何ともないんです。じゃ仮にコインのマジックを、そこで種明かししたからと言って、だれがそれできるんですか。そのコイン、あああれは面白い、じゃ作ってみようって作りますか、作れば犯罪になるんでしょう。じゃ種明かしする理由どこにありますか。じゃインターネットで買えばいい、だけどタバコを通す100円玉が1万円からするんですよ。普通に生活をしてる人がそんなものを買いますか、あり得ないですよね。そんだけの金払ってでもたばこを通したいと思う人のほうが、これはむしろ奇特な人たちです。で、それをなんで報道番組で種明かししますか。全く理解に苦しみます。みんな迷惑をしてます。覚えた視聴者は全然出来ません。種明かし知っただけに終わってしまいます。誰の得になるんですか。だから私はそのことに対しては反対しているんです。3つの種の公開のうち、暴露は一番だれのためにもならないから反対しているんです。」
第2 マジシャン(手品師)に恰も罪があるかのような番組を制作したことについて
 1 甲2の4の3、3頁以下で、隠しカメラにより、庄野氏のお店(フレンチ・ドロップ)に潜入し、庄野氏のシガースルーコインを演じる様を撮影したものを報道した記録がある。
   隠しカメラで潜入しなければならない理由などない。シガースルーコインを製造する場面であれば、まさに犯罪実現行為であるから、これを断って撮影することは不可能であろう。
   しかしながら、シガースルーコインを用いてマジックを演じることは何ら違法でも何でもない。これを隠しカメラで、潜入レポをする必要は全くないのである。
   このような手法は、ギミックコインを用いてマジックを演じるマジシャンが、恰も犯罪実現行為を行っているかのような錯覚を起こさせるような報道の仕方であり、それ故にこの報道番組以後、ギミックコインを用いてマジックをすると、「それって犯罪でしょ。」と白い目で見られ、マジシャンたちは、多大なる精神的苦痛を負ったのであった。
 2 土戸供述の該当箇所を引用する(土戸本人調書19頁)。
   「それはハードの部分の法律違反じゃないですか。ソフトの部分の解説をなぜくどくどなさるんですか。なぜそれをビデオカメラで潜入して撮らなきゃいけないんですか。ビデオカメラで潜入しなくても、お金さえ払えば見られるし、手品見せてくれって言えばいくらでも見られるものを。」
   「(潜入したその映像で、何かからくりが明らかになっていますか。)明らかになっております。だって演出をそこで伝えるんですから。」
   「だからそれをなぜ秘密カメラで撮らなきゃいけないんですか。撮らしてくださいと言って撮れば幾らでも撮れるものじゃないですか。」
   「あたかも手品をすることそのものが間違いのように放送してるではありませんか。」

第3 不法行為の特定について
   原告第3準備書面において、放送における不法行為部分の特定をしたが、今回改めて争点が絞れたことから、若干の修正を行う。
【被告日本テレビについて】
 1 甲2の4の2について(ザ・ワイド(2006年11月15日放送)3頁より)
(1)3頁目3行目から5行目まで
   金子氏による、シガースルーコインの種暴露の状況。
   「まずこちらの、百円玉と、たばこにご注目ください。この百円玉にたばこを乗せて、おまじないをしますとごらんのように、たばこが百円玉を貫通しました。おなじみのマジックなんですけれども、実は、裏返しますと、本物の百円玉に真ん中に穴をあけてあるんですね。」(3頁目写真2枚がこれに対応)。
(2)3頁下から2行目以降4頁下から4行目まで
   隠しカメラで、潜入レポを行い、庄野氏の行うシガースルーコインの演技を撮影、放送していること。
2 甲2の4の4(NNN NEWSリアルタイム(2006年11月15日放送)12頁より)
(1)14頁目(2:15)~15頁目(2:32)までの8枚の写真に対応する映像を放映したこと。
   写真は、いずれも100円玉のシガースルーコインの種が暴露されている状況である。レポーターにより、一見本物にみえる100円玉の中央部分を指で押し凹む様を撮すと共に、コインの裏側(仕掛け側)をも撮影し、凹んだ穴の部分がコイン本体を離れ、ヒンジでつながれている状態まで撮影・放映されている。
(2)15頁目(2:46)~16頁目(2:50)までの4枚、及び17頁目4枚の写真に対応する映像を放映するとともに、以下のナレーションを行ったこと。
   写真は、いずれも500円玉のフォールディングコイン(バターコインをフォールディングコインとして使用している。)についての種が暴露されている状況である。2つに折りたたまれる500円玉の様子及び、これがペットボトルの口の部分を通過し、中に入る様が撮影・放映されている。
   ナレーターにより「通るはずのない口をコインが通ってしまうおなじみのマジック。しかし、このコインにもトリックがあった。真ん中に割れ目があるが、ゴムの力でもとに戻る。こうすれば簡単に狭い口も通すことができる。」(16頁最終行から17頁3行目にかけて)とのナレーションが行われた。
(3)20頁目4枚の写真に対応する映像を放映すると共に、以下のナレーションを行ったこと。
   写真は、いずれも近藤氏による100円玉シガースルーコインの種が暴露されている状況を撮影・放映したものである。
   「このように、たばこがあっさり通ってしまうんですが、これをもっていたり販売をしても、罪には問われません。この仕掛けは、このようにたばこを差し込みますと、ふたがばねでとめてあって、それがこのように開くんですね。簡単な仕組みです。」(20頁1行目~4行目)。
3 甲2の4の5(NEWS ZERO(2006年11月15日放送)21頁より)
   以下のナレーションと共に、23頁から25頁(3:20 その2)にいたるまでの写真に対応する映像が放映されたこと。
   「インターネットで高額な値段で売買されているマジック用の硬貨。私たちはその幾つかを入手した。百円硬貨にたばこを通すマジック。この場合、硬貨の真ん中に丸い穴があり、ワイヤーで動く仕掛けになっている。こちらは五百円硬貨が、ペットボトルの小さな飲み口から入ってしまうマジック。折れ曲がるように細工され、ゴムでもとに戻るようになっていた。そして、十円硬貨が消えてしまうマジックでは・・・。十円と五百円が表裏になっていて、もう一方の硬貨と合わさると、五百円硬貨ができあがる。通常のものとマジック用のものを比べてみても、全く見分けがつかないほど精巧につくられている。」(23頁1行目~25頁2行目まで)とのナレーション部分。
  ① 23頁(2:29)(2:35)の写真
    100円玉シガースルーコインの種が暴露されている状況。丁寧にも「丸い穴がワイヤーで動く」とのテロップまでもが流された。
  ② 23頁(2:49)~24頁(3:01)までの3枚の写真について
    いわゆる500円玉のバターコインをフォールディングコインと同じ使い方によって、ペットボトルの口から折り曲げて中へ入れる様子を撮影したもの。丁寧にも「500円硬貨が折れ曲がる」とのテロップまでもが流された。
  ③ 24頁(3:04)~25頁(3:20)までの8枚の写真
    500円玉と10円玉によるスコッチ&ソーダの種が暴露されている様(3:04)では、500円玉と10円玉が示されており、これをかぶせると10円玉が500円玉の中に組み込まれる様が、(3:11)~(3:14)までの3枚の写真によって示されている。なお、10円玉の裏側には500円玉の表(桐側)が張り合わされており、500円玉の中に組み込まれたときには、裏を見せても普通の500円玉にしかみえないような仕掛けになっている。その部分の暴露されている様が、(3:15)~(3:20)の4枚の写真によって示される。なお、マジシャンの間では、特にシークレット度の高いギミックである。
4 甲2の4の7(スッキリ!!(2006年11月16日放送)36頁より)
(1)以下のナレーションと共に、36頁目(0:25)(0:30)の写真に対応する映像を放映したこと。
   「百円硬貨にたばこを通すマジック。この場合、硬貨の真ん中に丸い穴があり、ワイヤーで動く仕掛けになっています。」(36頁7行目~8行目)
   写真は、100円玉シガースルーコインの種が暴露されている状況である。丁寧にも「100円硬貨にタバコを通すマジック 硬貨の真ん中に丸い穴を作りワイヤで動く仕掛けに」とのテロップまで入れる過剰な報道である。
(2)以下のナレーションとともに、37頁目(0:38)(0:39)の写真に対応する映像を放映したこと。
   「こちらは、五百円硬貨がペットボトルの小さな飲み口から入ってしまうマジック。硬貨が折れ曲がるように細工され、ゴムの仕掛けでもとに戻るようになっています。」(36頁最終行~37頁2行目)
   写真は、いわゆる500円玉のバターコインをフォールディングコインと同じ使い方によって、ペットボトルの口から折り曲げて中へ入れる様子を撮影したものである。丁寧にも「500円硬貨がペットボトルに入るマジック 硬貨が折れるように細工されゴムの仕掛けで元に戻る」とのテロップまでもが流された。
(3)以下のナレーションとともに、37頁目(0:45)~38頁(0:58)までの8枚の写真に対応する映像を放映したこと。
   「そして、十円硬貨が消えてしまうマジックでは、十円と五百円が裏表になっていて、それぞれを合わせると五百円硬貨ができ上がる、という仕組み。」(37頁3行目~最終行)。
   写真は、500円玉と10円玉によるスコッチ&ソーダの種が暴露されている様子である。(0:45)では、500円玉と10円玉が示されており、これをかぶせると10円玉が500円玉の中に組み込まれる様が、(0:48)~(0:54)までの3枚の写真によって示されている。なお、10円玉の裏側には500円玉の表(桐側)が張り合わされており、500円玉の中に組み込まれたときには、裏を見せても普通の500円玉にしかみえないような仕掛けになっている。その部分の暴露されている様が、(0:54)~(0:58)の4枚の写真によって示される。「10円硬貨が消えるマジック 10円と500円が裏表になっていてそれぞれあわせると500円硬貨に」と懇切丁寧な字幕付きでの解説まで行っている。なお、これは、「スコッチ&ソーダ」と呼ばれるコインであり、マジシャンの間では、特にシークレット度の高いギミックである。
(4)以下のナレーションとともに、38頁目(1:22)(1:25)の写真に対応する映像が放映されたこと。
  「阿部 えー、で、こちらが今VTRにもありましたが、加工されたコインです。例えばこの百円硬貨にたばこを刺すと・・・突き抜ける。
   加藤 えー、よくできてるな。
   阿部 なぜかというと、裏がふた状になっているからなんです。わかりますか。
   加藤 ははあ、単純な仕掛け、仕掛けですよね。」(38頁下から3行目~39頁2行目)
   写真は、100円玉シガースルーコインの種が暴露されている様子である。
(5)以下のナレーションとともに、39頁目5枚の写真および40頁目3枚の写真に対応する映像が放映されたこと。
   「そしてもう1つ、こちらは五百円玉なんですけれども、パキッと折れて中に、ゴムが、透明のゴムが通されているんです。それで形状記憶ができるんですが、普通ならば、このペットボトルの口からは入らない五百円硬貨がこのためきれいに入ってしまう。こういう仕掛けになっているんです。」(39頁3行目~39頁2行目)
   写真(39頁目)は、いずれも500円硬貨のバターコインの種の部分である2枚の破片をゴムでつなぎ合わせて1枚のコインに見立てている構造を、2枚の破片を両側に引っ張ることにより、ゴムの通っている部分までわざわざ見せ、さらには元に戻る様子を撮影したものである。
   写真(40頁目)3枚は、上記バターコインをフォールディングコインとして使用し、種の構造を明かしつつ、ペットボトルの口から500円玉が入る様を撮影したものである。なお、テロップには、「売り上げは3億円!? コインマジックで逮捕」とあり、「!?」という不確実なクエスチョンマークとともに、「逮捕」とは全く関係のない種明かしが意気揚々と行われている。
5 甲2の4の9(ウェークアップ!ぷらす(2006年11月18日放送)56頁より)
(1)以下のナレーションと共に、56頁目(1:15)(1:16)の写真に対応する映像を放映したこと。
   「こんなことができちゃったのも、本物の硬貨に細工がされていたから。」(56頁8行目~9行目)
   写真は、100円玉シガースルーコインの種を暴露しているところを撮影したものである。
(2)57頁の写真2枚に対応する映像を放映したこと。
   写真は、いわゆる500円玉のバターコインをフォールディングコインと同じ使い方によって、ペットボトルの口から折り曲げて中へ入れる様子を撮影したものである。なお、「硬貨に穴開けマジシャン逮捕 売り上げ3億円!!」とのテロップまでもが流され、ギミックコインの売り上げだけで3億円の売り上げがでたとしか解釈できないテロップが流された。

【被告テレビ朝日について】
1 甲2の4の1(ワイド!スクランブル(2006年11月15日放送)1頁より)
  以下のナレーションと共に、1頁目写真3枚に対応する映像を放映したこと。
  いわゆる「バイツアウトコイン」についての種明かしの状況である。
  丸川氏により「一見普通の百円玉にみえますが、実はこうして折れ曲がるように、この縁の部分にゴムが仕込んであるんです。」とナレーションが入ると共に、実際にバイツアウトコインを片手に、折れ曲がる様を映像で放送した。
2 甲2の4の3(スーパーJチャンネル(2006年11月15日放送)6頁より)
  以下のナレーションと共に、8頁目(1:40)~9頁目(1:48)にかけての7枚の写真に対応する映像を放映したこと。
  「龍円 こちら、一見普通の百円玉にみえますが、このようにマジシャンがまるでかみちぎったようにみせる加工がしてありました。」(8頁3行目~9頁1行目)
  龍円氏による100円玉のバイツアウトコインの種を暴露したものである。100円玉が食いちぎられる様を撮影した後、種の部分である「かみちぎったように見せて部分的にコインの裏側へ折り曲げて隠してしまう様」を暴露している部分が放映された。
3 甲2の4の6(やじうまプラス(2006年11月16日放送)27頁より)
(1)以下のナレーションとともに、27頁(0:29)~28頁(0:43)までの8枚の写真に対応する映像が放映されたこと。
   「龍円 こちら一見、普通の百円玉にみえますが、このようにマジシャンがまるでかみちぎったようにみせる加工がしてありました。」(27頁下から3行目~最終行)
   写真は、龍円氏による100円玉のバイツアウトコインの種を暴露したものである。100円玉が食いちぎられる様を撮影した後、種の部分である「かみちぎったように見せて部分的にコインの裏側へ折り曲げて隠してしまう様」を暴露している部分が放映された。
(2)以下のナレーションとともに、33頁目の写真全て及び34頁目(4:04)までの写真に対応する映像が放映されたこと。
   「龍円 こちら一見、普通の百円玉にみえますが、このようにマジシャンがまるでかみちぎったようにみせる加工がしてありました。」(33頁)
   写真は、いずれも龍円氏による100円玉のバイツアウトコインの種を暴露したものである。100円玉が食いちぎられる様を撮影した後、種の部分である「かみちぎったように見せて部分的にコインの裏側へ折り曲げて隠してしまう様」を暴露している部分が放映された。
4 甲2の4の8(ワイド!スクランブル(2006年11月17日放送)44頁より)
  以下のナレーションとともに、50頁目(6:18)(6:20)、(6:26)(6:27)51頁目の写真に対応する映像が放映されたこと。
  「大和田 鮮やかだね。これはあのー、今回問題になった、まあ実際のそのコインなんですけど、まあみてみると、こういうふうに折れるように改造してある。でー、ま、この百、百円玉も普通にみえるんだけど、こう曲がるように改造してある。そして、まぁ、これはもうわかりやすいんですが、百円玉、穴があけてあって、ここにたばこを通したりするように偽造している。」(50頁8行目~51頁2行目)
  写真(6:18)(6:20)は、キャスターの大和田氏が、500円玉のフォールディングコイン(二つ折りタイプ)を折って、種を明かしているシーンが撮影・放映されたものである。
  (6:26)(6:27)の写真は、同じくキャスターの大和田氏が、100円玉のバイツアウトコインの種の部分を折り曲げて種を明かしているシーンである。
  51頁目の写真は、キャスターの大和田氏が100円玉シガースルーコインの中央穴あき部分を強調して、カメラに示しているシーンである。

第4 アメリカ合衆国における貨幣損傷等の取り扱いについて
   被告テレビ朝日が引用した法令に関しては、残念ながら日本における貨幣損傷等取締法の射程範囲と異なるものであり、的はずれである。以下に解説を加える。
   2006年12月に、米国において同様の法律が公布された。内容的には、5セント及び1セント硬貨の輸出、鋳潰し、処理の禁止についての法律である。米国内における報道(U.S.ミントプレス)によれば、金属の価格が急激に上昇した(1セント硬貨は1.12セントの価値が、5セント硬貨は6.99セントの価値がある)ことから、鋳つぶすことを禁止したとのことである。
   また、同趣旨の法律は、以前にも、金属の急激な上昇により、1967年から1969年にかけて銀貨の鋳潰しを禁止した法律や、1974年から1978年にかけて1セント硬貨の鋳潰しを禁止した法律があったと報道されている
   米国における同趣旨の法律の制定背景は、まさに貨幣損傷等取締法の立法趣旨(立法経緯)と全く重なるものである。
   米国内においても、当然ギミックコインは存在するが、それでは上記新法によってギミックコインの製造が禁止されるのかというと、もちろんそうではない。
   セクション82.2に例外規定が定められており、その(b)において、禁止規定は、教育、娯楽、装飾品、宝飾等の目的のためのこれらのコインの処理については、適用されるべきではない、とされており、ギミックコインが「娯楽目的」にあたることから、その製造は適用対象にはならないという扱いになる。
   つまり、上記法律が貨幣制度の維持を目的としており、仮に、原判決と同様に「米国発行の貨幣に対する信用を維持し、その円滑な流通を確保するとの観点」と捉えているとしたとしても、上記適用除外事由にあたる場合には、このような法益は犯されないとの認識に立つものということができ、いずれにしろ本件のような場合に、同法が適用されることにはならないのである。 

第5 マジックは、「秘された」「花」を楽しむ芸術であり、その花の仕組みが暴露されてしまっては、全く成り立たないのである。これは、人間で言うところのプライバシーと同じものであり、これが暴露されてしまっては人格的生存が成り立たないのと同じである。
   花伝書には、「秘事といふことを現はせば、させることにてもなきものなり。これを、させることにてもなしという人は、いまだ秘事といふことの大用知らぬがゆゑなり。」(講談社文庫 川瀬一馬訳:秘事ということの内容を暴露して見れば、たいしたことでもないものである。それを秘事というものはたいしたことでもないと言う人間は、まだ秘事ということの大きな効果を知らないからだ。)とある。
   芸における秘事は、芸人だけが守ろうとしても守れるものではない。秘事を守ることにTV局をはじめとするマスコミも協力しろとは言わないが、積極的に暴露してよいとする合理的な理由は全くないし、本件においても暴露してよい理由は全くない。
   最低限のルールとして、このような秘事を暴露するに当たっては、それを守っていこうとする専門の団体、それぞれの芸能界があり、マジックの世界においても、(社)日本奇術協会、SAM等の団体があるのだから、事前のお伺いを立てるべきであったし、そうすべき義務が被告らにあったと認定することは、社会通念上当然のことである。
   本件において、御庁におかれては、このような被告らの義務違反を見過ごすことがないよう、公正かつ文化的な判決を求める次第である。
以   上

投稿者 ono : 11:37 | コメント (4)

2008年07月09日

【マジック裁判・民事】尋問実施!!

昨日、東京地裁にて、マジック裁判のクライマックスである、藤山新太郎さんの本人尋問が行われました。

この尋問は、多くの方が気に掛けて下って人気事件となり、傍聴券発行事件となりました。朝早くから、多くの方が裁判所前で、傍聴券をもらうために並んで頂き、誠にありがとうございました。
日本奇術協会からは、笑太夢さんが、また、日大の神部先生も傍聴にいらしてくれました。

前回の裁判で、手品の実演を申請し、却下されてしまいましたが、この藤山さんの尋問の中で、どうしてもせざるを得ないような状況に持ち込み、この事件の端緒ともなった「パンクチャー」の実演を企み、事前に藤山さんとネタ合わせをし、本番に臨みました。

尋問の内容は、後世に語り継がれるような、非常に熱のこもったものでした。
これまで数々の種明かし番組に対して、一人で抗議をし、謝罪文と和解書を勝ち取ってきた藤山新太郎さんが、なぜ今回はそれをしないで本訴を起こしたのか(謝罪文と和解書を勝ち取った方法についても、尋問の中で種明かしがされました。実にお見事な方法でした。)、テレビ局の今回の報道において、具体的にどういう点に問題点があるか、テレビ局が手品という芸能をどれだけ理解していないで放映しているのか、等々、手品を愛する方が聞いたら、涙を流して聞き入ってしまうような、素晴らしいお話しが聞けました。

お話しの内容は大部に及ぶもので、今、裁判所の方で録音された内容を反訳しているところです。いずれ、何らかの形で皆さんの目に映るような形にしたいと思っています。

結局、パンクチャーの実演が叶いました。この「パンクチャー」は、日本のマジシャンが使い方を誤った(穴の空いた100円玉をお土産として観客にプレゼントした、また売る方も格安で穴の空いた100円玉を大量に販売した)ことによって、今回のような不幸が起きてしまったネタでした。そう言う意味では、もっと売る方も買う方も演じる方も慎重にならなければならなかったように思います。「売れればよい」「受ければよい」という考え方を、手品界でも見直さなければなりませんね。

ということで、次回が、最終回となります。9月2日午後1時30分から、615号法廷です。
これまでのまとめの書類(最終準備書面といいます)を、私の方で作成し、それを提出するという形になります。

投稿者 ono : 17:03 | コメント (0)

2008年06月30日

【マジック裁判・民事】7月8日のマジック裁判の傍聴について(告知)

ブログでも告知しましたように、7月8日午前11時から、藤山新太郎さんの尋問があります。
この裁判のクライマックスでもあり、今まで原告団の一員として名を連ねてはいたけれど、傍聴には行けてないな、なんて方、是非いらしてみませんか?

この裁判ですが、傍聴券発行事件となりました。
原告側で10席、被告側で10席確保し、残り22席を巡っての一般傍聴になります。

当日傍聴にいらっしゃりたいという方、先着順で既に確保している傍聴券(10人分・既に数名分が決まっております。)を差し上げます(つまり、くじ引きで並ぶ必要がありません)。

予め私宛に、ご連絡ください。よろしくお願いします。

一般傍聴の方は、当日早めに裁判所に来て頂き、傍聴券を巡ってのくじ引きにご参加ください。

【追記】
この裁判のこれまでの経緯が、「ザ・マジック 76号」(東京堂出版)と、「プリあらマガジン第3号」に、私の書き下ろしの記事として載っておりますので、興味のある方はお読みください。


投稿者 ono : 18:46 | コメント (0)

2008年05月21日

【マジック裁判・民事】次回いよいよ尋問!!

昨日、10時30分より、裁判(第8回口頭弁論)がありました。足下の悪い中、傍聴に来て頂いた方々、本当にありがとうございます。

原告らとしては、藤山さん、田代さん、中島さん(クライス)の尋問申請をしていたのですが、裁判所の判断としては、陳述書(事前にそれぞれの方からお話しを聞いて、それを書面化し、裁判所に既に提出済みのもの)を検討した上で、藤山さんの尋問のみを採用されました。
また、私の方で、尋問の中で、マジックの実演の申請をしていたのですが、裁判長は、「私としては見せて頂きたいという気がしないでもないのですが、他の裁判官とも合議した結果、そこまでの必要はないとの結論に達しました。」とのこと。「見せて頂きたい。」という本音のところで採用してくれれば良いのに・・・残念です。

今回は、こちらから、先の3名の陳述書を裁判所に事前に提出し、それに対して、日本テレビがそれぞれに反論を加えた書面を出してきました。相変わらず、今までのものと内容的に変わりがなく、どこまで行ってもかみ合わないというか、平行線というか。やはり、マジックを趣味にしないと、こういう問題は本当にわからないんだろうか・・・???そんなに難しい話しをしているわけではないのですが・・・と、途方に暮れてしまいます。

今回は、陳述書の作成に、助太刀してくれた方がいました。
東大の奇術部出身で、大のマジック愛好家でもある、外岡潤弁護士です。強力な助っ人の登場で、私も相談する弁護士相手ができて、非常に助かりました。

次回は、いよいよ藤山さんの尋問です。裁判長は、法廷での発言等から、結構なマジック好きとお見受けできます。実演が無理でも、藤山さんの、あの説得力のある言葉のマジックで、一気に勝負をかけるべく、良い尋問になるよう頑張りたく思います。

ここがこの裁判の一番のハイライトです。是非是非、関係者、興味のある方等々、お誘い合わせの上、傍聴に来て頂いて応援して頂きたく、宜しくお願いします。

7月8日午前11時から(約1時間)、場所は、東京地方裁判所615号法廷(6階)です。

投稿者 ono : 15:50 | コメント (5)

2008年03月17日

【マジック裁判・民事】報告

3月11日に、日本テレビ、テレビ朝日相手の、マジック裁判の弁論手続が行われました。

アンケートに不備があったところに関して、まとめるというのが、こちら側の宿題でしたが、アンケート未提出者に再度アンケートをお願いしたものが、未だ回収できず、その分について次回持ち越しになりました。
こちらからアンケートの再提出をお願いした原告団の方、早急に提出の程、よろしくお願いいたします。
アンケートがないと、請求の理由がなくなってしまいますので、次回その方については、訴えを取り下げざるを得なくなります。ご了承ください。

さて、今回は、以下のような書面を提出してきました。主に、許される種明かしと許されない種明かしの境界について論じました。
何か判らないこと、或いはご意見等がありましたら、お気軽に書き込みあるいは、メールをください。

次回は、4月15日午前10時30分から、東京地裁615号法廷です。
原告団長の藤山新太郎さんもまた、出席してくださいます。裁判終了後、皆さんで懇親ができればと思います。是非、ご参加ください。

平成19年(ワ)第10875号 損害賠償等請求事件
平成19年(ワ)第18783号 損害賠償等請求事件
原 告 ら 土 戸 直 哉 外104名
被 告 ら 日本テレビ放送網株式会社 外1名

原告第3準備書面

                          平成20年2月29日
 東京地方裁判所民事第25部甲1A係御中

             原告ら訴訟代理人弁護士  小  野  智  彦

第1 ギミックコインの価値についての補足
 1 被告日本テレビは、「ギミック部分の価値」ないし「魔法を起こせる付加価値」について、パブリック・ドメインに属することを根拠に経済的には「0円」として、恰も原告らに経済的な損害がないかのごときまやかしの主張を繰り返している。
   しかしながら、原告らは、1枚のコインに対して、数千円あるいは数万円を投じているのである。ギミックコインが取引市場にある限り、需要と供給のバランスの中で、価格が設定され、お互いの自由意思の中で設定された価格に金銭を投じるのは、実に資本主義自由経済のもとでは当然の話であり、パブリック・ドメインに属しているかどうかとは、全く次元を異にするものである。
   知的財産権そのものを考えたときに、原価に上乗せされる価値は、その発案者に帰属されるべきであり、その上乗せされた価値が発案者以外の第三者に帰属されることは、いわゆる海賊コピーなどのケースの場合、第三者の側の抗弁として、パブリック・ドメインであることを主張する余地はあろう。
   しかしながら、本件で問題となっているギミックコインは、いうならばパブリック・ドメインであることを前提に、供給側が原価を大幅に上回る価格を設定し、需要側(原告ら)がその価格を納得の上で支払ったものであり、それによって、供給側が儲けることは何ら法的には問題ない。
   種が知られていない、という暗黙の了解のうちに、「ギミックコインの価値」ないし「魔法を起こせる付加価値」に期待して、供給側の設定した高額な料金を支払って、ギミックコインを所有している以上、このような「ギミックコインの価値」ないし「魔法を起こせる付加価値」が、こともあろうに公の電波を使って、不用意な種暴露をされることによって、ギミックコインを使ったマジックを演じる機会が極端に減ったどころか、演じること自体が不可能となったことは疑いようがなく、これをもって財産的価値の減損と称したまでである。
   被告日本テレビは、意図的に「パブリック・ドメイン」を引き合いに出し、知的財産権特有の議論に引きずり込もうとする、論点のすり替えを行っているものである。
 2 70%についての説明
   客観的に、ギミックコインの付加価値が70%といえる根拠というのは、正直なところ難しいと言わざるを得ない。
   訴状で述べた「ギミックコイン所有者意見の平均値」、第1準備書面で述べた「製造業者の卸値プラスアルファ」等の説明は、それなりに説得力があるものと思われる。
   本来であれば、例えば、500円玉のエキスパンデットシェルであれば、1枚のコインの中身をくり抜いているだけであるから、材料費は500円である。フォールディングコインやシガレットスルーコイン、バイツアウトコインであれば、500円玉を2枚を形が合うように削り、恰も1枚であるかのごとき組み合わせによって、ギミックコインができあがっており、これらに関しては材料費は1000円である。
   ギミックコインの所有者にしてみれば、材料費以外はすべてギミックであるがゆえの価値に相当すると考えるのが、最も単純といえる。しかしながら、このようなギミックコインを実際に製造した業者の仕事に対する感心、このような珍しいコインを所有しているという所有欲を満たしている部分、10年後にまた使用できるかも知れないという淡い期待等々から、材料費プラスアルファの部分に見いだす価値は、人それぞれによって異なるのは至極当然のことである。
   であれば、既に述べた説明によって、付加価値が70%と算定することは、むしろ合理的な算定であると考える。
 3 取引価格について
   被告日本テレビは、準備書面(4)において、本件報道によってギミックコインの取引価格がかえって上昇していることを根拠に、原告らの損害がないことを主張するようであるが、誠に身勝手な主張である。
   本件報道がもたらしたものは、「日本円によるギミックコインは法に触れるやばいものである。」ということを世間に知らしめ、それにかこつけて得意げに種を暴露したことにある。この際、種の暴露についてはおいておくとして、少なくとも本件報道の後、日本円によるギミックコインは、正規のルートでは手に入らなくなった。被告らが調査しているようなマジックショップは、軒並み日本円のギミックコインの取り扱いを中止した。
   現在手にはいるとすれば、被告日本テレビが調査したとおり、ヤフーオークションくらいであろう。手に入らないと思えば、どうしても欲しい人はいくらお金を出してでも手に入れる。アンダーグランドで取引されるようになれば、供給者間のバランスも崩れることから、当然に値段もつり上がる。かといって、被告らによって「違法な存在」とレッテルを貼られた日本円のギミックコインを、価格が上がったからと言って、ヤフーオークションに所持者が出品するのが通常である、といえるのであれば、確かに被告日本テレビの主張は成り立つ。しかしながら、「違法な存在」とのレッテルを付けられたものをヤフーオークションに出品するような不道徳な人間はむしろ少数であり、事実、本訴原告らのギミックコイン所有者は、誰一人としてオークションに出品したものはいない。
   被告日本テレビの取引価格についての主張は、いかにもナンセンスである。
 4 なお、被告テレビ朝日が、準備書面(1)において、「そもそも本件コインは、いずれも貨幣損傷等取締法違反の違法行為によりマジック用コインとして加工されたもので、社会的にその存在及び価値を肯定することができないものである。したがって、仮に本件コインのマジック用コインとしての使用価値が減殺されたとしても、原告らに損害が発生したということはできない。」との主張は、上記補足説明からして、全く見当はずれのものである。また、そもそも本件で問題としているギミックコインは、日本円に限るものではなく、その意味でも的はずれである。

第2 種明かしについて
 1 被告らは、手品の種は調べれば分かるし、道具を購入すればついてくるものだし、「絶対的な秘密」には当たらず、種明かしは「秘密の暴露」には当たらない、との主張を相変わらずしている。しかしながら、「種明かし」には、大きく分けると3つの意義があり、それらを混同して使用しているものであることから、この点について考察することとする。
 2 種明かしの意義
   種明かしには、①いわゆる「レクチャー」と言われるものであり、特定のマジックを習いたいという人に、通常有料で教授する場合(教授の態様は、講習会方式、本による場合、DVDによる場合等がある)、②手品の道具(ネタ)等を購入したときに付いてくる「解説」、そして、③単なる「暴露」の場合(興味本位の場合を含む)が挙げられる。特に③の場合を、英語では「exposure」と表現しており、言い得て妙である。
 (1)①について
    乙イ1、乙イ4、乙ロ9は、これに分類される。特に乙イ4、乙ロ9に掲げられている「コインマジック事典」は、日本においては、コインマジックを学習する上で必携、必読の書であり、この本を手にして初めてギミックコインの存在や各種技法の存在を知ることになる。但し、いずれも外国のコインを基準に説明してあり、日本円のギミックがあることは明かされていない。大手書店でしか手に入らない。
    乙イ1については、初心者用の入門書であり、一般の書店にて販売されたとしても、プロマジシャンやマニアのアマチュアマジシャンにとって、その活動の妨害になるようなものではなく、むしろ、マジックを啓蒙する上で、それに必然的に伴う種明かしとして、奇術界においてその種が明かされることが暗黙のうちに了解されているような内容のものである。
    さらに、マニアやプロマジシャン向けの講習会やDVD、書籍の販売等もされる。これらは一般書店では手に入らず、また、DVDもレンタル屋で借りられず、値段も高額になる。
    このように、実際にマジックを演じたい、真剣に勉強したいという方に対して、有料にて、その段階に応じた種を教授することは、全く問題がない。それを学習した人は、当然に演じようとするマジックの種を自ら暴露するはずがないからである。なぜなら、観客が驚いてくれなくなるからである。
    被告らの行った種明かしとは、明らかに次元を異にするものであり、これと同列に論じようとする被告らの考え方は、全く理解できない。
 (2)②について
    道具を買って、「解説」がないのでは意味がないのは当然である。プラモデルを買って、その作り方についての「説明書」がなければ作れないのと同じである。パソコンを買って、操作の仕方についての「説明書」がないのと同じである。当然に許される種明かしである。
    また、手品の道具の使い方を知っている人に「解説」が不要なことは、既にプラモデルの作り方やパソコンの操作の仕方について知っている人にとって、「説明書」が不要なことと同様である。だからといって、「説明書」は入らないからその分値段を下げろ、という訳にもいかないことも、同様である。
    乙イ6の1、乙ロ3~8の説明書については、これに分類される。
    被告らの行った種明かしとは、明らかに次元を異にするものであり、これと同列に論じようとする被告らの考え方は、全く理解できない。
 (3)③について
世界の2大マジック協会である、IBM(International Brotherhood of Magicians)およびSAM(The Society of American Magicians)が共同で承認している倫理規定には、
   「(1)奇術のあらゆる原理や、奇術の現象・イリュージョンに用いられる手段を、故意に世間に暴露することに反対する。」と条文化されている。
    また、全世界で有名なアメリカの会員制マジッククラブである、マジックキャッスルの倫理規定には、
   「1.マジックに使用されるあらゆる原理や方法が、いかなる口頭、書面、電子コミュニケーション手段においても故意かつ不必要に一般へ種明かしされることに反対する。」とある。
    つまり、上記①、②に該当しないものは、これに分類されるのである。乙イ2は、その典型である。また、訴状にて紹介した、2001年6月16日から被告日本テレビにてシリーズ化して放送された、「噂の覆面マジシャンが禁断のトリック大暴露」などという番組を放映したのも、まさにこの典型である。
    なぜパブリック・ドメインになっている手品の種も含めて、不必要な暴露にマジシャン達が反対するのかと言えば、マジシャンはその秘密(種)を手に入れる為に労力を使うし、財力も使うのである。手に入れた後も労力を使って、手順構成をするからなのである。
    レクチャー、あるいは道具を買ったときの解説によって秘密を手に入れた場合、誰も損害を被るものはいない。しかしながら、そのような態様ではなく、一般人が欲してもいないのに、ただ興味本位で種を「暴露」されたら、マジシャンにとって迷惑この上ない話であるし、一般人にとっても手品が楽しく見られなくなるという被害を被ることとなる。
    本件の被告らによる報道は、まさにマジシャンにとっても、一般人にとっても迷惑なものであり、被告らのみの自己満足による報道であり、その種明かしの態様は、「暴露」以外の何ものでもなかったのである。
    エンターテイメントとして確立されているマジックは、種の秘密が守られて初めて成り立つものであり、安易な種明かしをもって「正当な業務行為」というのでは、マジック業界は常にマスコミの脅威によって怯えなければならなくなるのである。
    なぜ、種明かしがいけないのか、については、「マジック種明かしの真実」と題する書面において、ウォルター・ブラニー氏によって紹介されているあるマジシャンからの手紙の内容が参考になる。
 2 先に紹介した、「噂の覆面マジシャン」による種暴露については、実は世界中で問題になったし、被告日本テレビも当然知っているものと思われる。
   この覆面マジシャンは、ヴァレンチノという名のブラジル出身のマジシャンであったが、このことをきっかけにブラジル連邦警察によって拘留の上、国外退去処分にさせられた経緯がある。
   アメリカにおいても、このヴァレンチノの暴露が番組で放送されたことに伴い、世界のマジシャンの代表である、ジョエル・バウアーが、公開のテレビ番組でヴァレンチノと対決し、現職の裁判官であるラリー・エルダーがその番組の中で、裁きを下すという、「モラル法廷」という番組が2001年5月に放送された。
   同裁判官のコメントの中で、先の「暴露」が何故行けないのかについて、端的に触れている箇所があるため、ここに引用する。
  「ジョエルがいい指摘をしましたが、あなたが公開してきた''ネタ''というのは、一生懸命努力すれば手に入れることができるものです。この、''一生懸命努力する''というのが大切なキーポイントです。''一生懸命努力する''ということとはどういうことか。マジシャンたちは、それこそ何百時間もかけて芸を完成させようとします。そして努力する理由は、マジシャンたちがマジックの持つ不思議さを保ちたいからなのです。」
   結局、同番組の中で、ヴァレンチノは、2000ドルの支払いを命じられることになった(「ヴァレンチノ対マジシャンたちの『モラル法廷』での判決」と題する書面参照)。
   本裁判においても、十分に参考になる内容である。

第3 原告らマジシャンに対する人格権侵害について
   原告らは名誉毀損のみを主張しているわけではない。今回の、被告らによる不当な種暴露により、原告らをはじめとするマジシャンは、怒りを表しているのである。
   これまで、様々な形で、TV局の番組によって、種が明かされてきたし、それに対して各マジシャンが苦情を申し立てたり、異議を申し立てたりしてきたが、本件のごとく裁判にまでなることはなかった。というのも、エンターテイメントとして番組が作成されたり、あるいは、教育目的で番組が構成されたりという面も少なからずあり、あるいは、番組作成にマジシャンの関与があったり、マジシャン自身による種明かしであったりということがあり、それぞれが怒りを抑えて裁判沙汰にはしてこなかった。
   しかしながら、本件では100名以上のマジシャンが立ち上がった。つまり、「受忍限度を超えた」のである。被告らの放映した番組を見て、どれだけのマジシャンが愕然とし、怒りを覚えたか。そして、立ち上がり本訴に至ったのである。
   被告らはこのような自体を招くことを全く予想だにしなかったのだろうか。そして、犯罪報道とは関係のない種明かしを得意げに報道して、何が「正当な行為」なのだろうか。刑事事件における被疑事実は、あくまでも「貨幣を損傷」したことであるのに、その損傷した貨幣の形態を撮影・放映するくらいならまだしも、それにかこつけてマジックの種を説明することは、明らかに「相当な範囲」を超えるものである。真に報道の為に、その種明かしがどれほど必要不可欠なものであったかを、原告らに納得がいくように説明を求める次第である。

第4 被告日本テレビの指摘するアンケートの疑問点について
   前回の口頭弁論終了後、指摘されたところに関しては、電話にて聞き取ったり、資料を送ってもらったり、アンケートの再提出を依頼したりしたが、今日現在、未だ該当者全員からの回答が戻ってきていない為、今しばらくお時間をいただきたい。
   アンケート未提出の方の訴えの取り下げ等も含めて、検討のうえ次回までに提出する。
   なお、アンケートにおいて手品歴の欄を設けたのは、あくまでも参考までであり、手品を愛する心にその歴が関係しないことは明きらかである。

以  上

投稿者 ono : 13:50 | コメント (2)

2008年01月15日

【マジック裁判・民事】続報!

今日、日本テレビ及びテレビ朝日相手の裁判がありました。
前回、こちら側で「何(どの文言)が不法行為か」を特定し、それに対しての反論が今回の法廷で出されました。

相手方の主張は、手品の種は調べればわかるし、道具を購入すればついてくるものだし、「絶対的な秘密」には当たらず、種明かしは「秘密の暴露」には当たらない、との主張を相変わらず続けています。

ここには、2つの問題があります。
ひとつは、種明かしの意味をはき違えていることです。
種明かしには、3種類あります。概ね、以下のような趣旨です。
ひとつは、レクチャーとして指導目的で種を「教える」場合。
ひとつは、学習目的でお金で種を買う場合。
もう一つは、単なる「暴露」の場合(興味本位の場合を含む)。最後の場合を、特に英語では''exposure''と表現しています。的を得た表現だと思います。

つまり、マジシャンは秘密を手に入れるために労力を使うのです。財力も使うのです。手に入れた後も労力を使って手順構成をするのです。
指導・学習目的で秘密を手に入れた場合、誰も損害を被るものはいません。
しかしながら、そのような目的なしに、一般人が欲してもいないのに、ただ興味本位で種を「暴露」されたらどうでしょうか。マジシャンにとっても迷惑な話ですし、一般人にとっても手品が楽しく見られなくなるという被害を被ります。
明らかに一線を画するのです。なぜ、そのようなことがテレビ局はわからないのでしょうか?

もうひとつの問題は、種明かし全般を、知的財産権の問題としてこの訴訟において問題視しているわけではないということです。
仮に、ギミックコインの発案者がいたとしても、その発案自体がパブリックドメインになっていることは、こちらは認めているのです。ただ、パブリックドメインになったとしても、手品としての特殊性から、種の部分は重要な要素を占めるし、かつ、種があるからこそ不思議な現象を引き起こす道具は、原価でとりひきされることはあり得ず、財産的な価値を持つのであって、この財産的な価値を不当な種明かし報道によって侵害された、と主張しているのです。どうも、テレビ局側は、この点をはき違えているのか、わざと論点のすり替えをしようとしているのかわかりませんが、パブリックドメインになっているから保護されるような価値はないのだ、という主張を繰り返しているのです。

次回の裁判は、こちら側から以上のようなテレビ局側からの主張に対して、反論を加えることになっています。

それと並行して、原告団の方々からいただいたアンケートについて、日本テレビから疑問点がだされました。こちらについて対処させて頂くべく、私の方からまた原告団の方々にお手紙が届き、それに対して返信をして頂くという、お手間を取らせることになります(全員ではありません)。
よろしくご協力下さい。

次回、こちら側が、この裁判でどのような証人を立てるのかについて申請をすることになっています。
原告団の方の中から、また、それ以外の関係者の方から、私からお願いをさせていただくことになるかと思います。
そちらの方も、是非ご協力頂きたく宜しくお願いします。

次回は、3月11日午前10時30分から、東京地方裁判所615号法廷です。
ご興味のある方は、傍聴してください。原告団代表の藤山新太郎氏も出席されますので、裁判後にお茶会が開かれる予定です。

投稿者 ono : 17:37 | コメント (2)

2007年11月27日

【マジック裁判・民事】続報!

第4回口頭弁論が、今日ありました。
謝罪請求の内容特定、および、放送における不法行為部分の特定が、本日の検討事項でした。

謝罪請求の内容については、以下のようにしました。
「1 被告日本テレビ放送網株式会社は、「ザ・ワイド」「NNN NEWSリアルタイム」「NEWS ZERO」「スッキリ!!」「ウェークアップ!ぷらす」の各々の番組内において、「平成18年11月中旬頃に放送した、貨幣損傷等取締法違反に基づくマジシャンら逮捕事件の犯罪報道において、犯罪報道そのものとは直接関係のない、ギミックコインの種を不必要に暴露してしまったことにつき、多くのマジシャンに迷惑を掛け、不快な思いをさせてしまったことを、深く謝罪します。」とのコメントを各々の番組のメインキャスターによって口頭で、及び、テロップにてそれぞれ2度ずつ放送せよ。
 2 被告株式会社テレビ朝日は、「ワイド!スクランブル」「スーパーJチャンネル」「やじうまプラス」の各々の番組内において、「平成18年11月中旬に放送した、貨幣損傷等取締法違反に基づくマジシャンら逮捕事件の犯罪報道において、犯罪報道そのものとは直接関係のない、ギミックコインの種を不必要に暴露してしまったことにつき、多くのマジシャンに迷惑を掛け、不快な思いをさせてしまったことを、深く謝罪します。」とのコメントを各々の番組のメインキャスターによって口頭で、及び、テロップにてそれぞれ2度ずつ放送せよ。」

懸案の訴額、それに伴う印紙代についてですが、もし相手方が言うような莫大な額が算定されるようでは、マスコミによる被害にあった人間の謝罪要求を事実上封鎖することになる・・・と意見を書いたところ、それを受けてくれたのか、算定不能により、現在納めている印紙代で結構との決定をいただきました。有り難い話です。

不法行為の特定の方ですが、今回改めて、下記の資料をもとに検討してみましたが、悪意としか思えない、ギミックコインの暴露放送に改めて怒りを覚えました。放送内容を、文字と写真にして客観化すると、今までみえてこなかったものが、改めてみえてきたようなところが多分にありました。

実は、今回、相手方(日テレおよびテレ朝)の放送内容について、放送画面をキャプチャリングして書面に起こす作業、および、業者にお願いした反訳書面のDVDとの付き合わせ作業を、原告団の有志の一人(長沼さん)が、ボランティアで頑張ってやってくれました。2日間に亘り、私の事務所に詰めてもらい、無理をきいてもらって、相当良いものができあがり、裁判所、原告、被告らの共通の資料ができあがりました。
59頁にもわたる文書の作成、本当にありがとうございました。この場を借りてお礼を申し上げます。

今後、また、ご協力をお願いすることがあるかと思います。その時には、他の方々も協力していただけると、嬉しく思います。宜しくお願いします。

次回は、年明けの、1月15日午前10時30分より、東京地方裁判所615号法廷にて行われます。

PS なお、貨幣損傷等取締法違反の刑事事件の方ですが、最高裁判所に上告しました。年末までに上告趣意書を書き上げることになっていますので、完成しましたら、またアップしたいと思います。

投稿者 ono : 17:33 | コメント (2)

2007年10月09日

【マジック裁判・刑事】ギミックコインの刑事裁判、明日(10/10)判決言い渡し!!

いよいよ、ギミックコインの刑事裁判(貨幣損傷等取締法違反、関税法違反被告事件)の、控訴審における判決言い渡しが、明日、午前10時から、東京高等裁判所718号法廷にて行われます。

今回のポイントは、アメリカにおける同種の法律との比較法的な視点、また、紙幣との均衡論の視点を新たに加え、その点についてどのような判断が下されるのかが、注目点です。

高裁の法廷は広いですので、お時間のある方はお誘い合わせの上、是非傍聴にいらっしゃってください。
判決の言い渡しは、30分以内で終わると思います。

投稿者 ono : 17:12 | コメント (1)

2007年09月13日

【マジック裁判・民事】経過報告!

9/11、日本テレビ、テレビ朝日相手の民事裁判がありました(第2回口頭弁論)。

書面のやりとりと、手続き上の問題点について話し合いが多少ありました。

我々が懸念するのは、謝罪要求の点です。
当然、今回参加して頂いている方々の大きな希望の一つでもあるわけですが、テレビの番組の中で謝罪の放送を求める場合、その放送に係る費用が訴額ということになります。我々は、その訴額に対応する印紙を裁判所に払わなければなりません。

この点については、色々な考え方や運用があるようです。
一つは、自局の放送で謝罪放送をするわけだから、放送にかかる費用はゼロだという考え方、一つは、費用計算が難しいことから、算定不能ということで訴額160万円に固定してしまうという考え方。今のところ、裁判所には、算定不能ということでお願いし、訴額160万円に対応した印紙を納めていますが、実際にこちら側が求めている謝罪の内容をそのまま放送すると、その計算してはじき出される金額は、莫大な額になるだろう、との相手方の意見でした。

裁判所には、算定不能のまま運用して頂きたい旨お願いしていますが、もし莫大な金額が計算され、それに伴う印紙代を納めろ、ということになった場合には、皆様からお預かりしている寄付金では、到底まかないきれない状況に陥ることになります。
その場合、新たに寄付を募るか、謝罪要求について取り下げるか、苦渋の選択をせざるを得なくなります。藤山氏と相談しながら、また、皆さんのご意見を聞きながら、進めていきたいと考えています。

次回は10月30日午前10時30分から、同じく東京地方裁判所615号法廷で行われます。

色々と準備をしなければならない関係上、誰かボランティアでお手伝いして頂ける方がいらしたら、是非ご連絡ください。

9/12、ギミックコインの刑事事件の控訴審がありました(第2回公判)。

検察官提出にかかる証拠の取り調べだけが行われ、結審しました。
ギミックコインの製造について行政特区の申請をしたところ、財務省によって拒否されたわけですが、その時の財務省の回答内容が証拠として提出されました。

こちらの方、次回判決の言い渡しになります。
10月10日午前10時。10が3つ並びました。
場所は、今回と同じ、東京高等裁判所 718号法廷です。

第1審の判決に対して、猛烈に反論を加えましたし、新たな視点を出したところもありますので、それらについてどのような判断を下すのかが見物です。
勝にしろ負けるにしろ、第1審の時の判決よりは、まともな内容の判決になることを期待しています。

投稿者 ono : 14:56 | コメント (0)

2007年09月10日

【マジック裁判・民事】日程告知!

民事裁判 9/11 午後1時30分より 615号法廷(東京地方裁判所)
藤山新太郎氏も原告代表者として出廷します。

刑事裁判 9/12 午前11時 718号法廷(東京高等裁判所)
検察官より、書証の取り調べ請求があります。ギミックコインの製造について、行政特区申請がなされており、それに対する財務省の回答が証拠として提出される予定です。
その後、結審になると思います。

お時間がありましたら、是非傍聴にいらしてください。
いずれも、東京霞ヶ関の裁判所で、同じ建物内です。(営団線A1出口をでますと、目の前が裁判所です)

投稿者 ono : 16:43 | コメント (2)

2007年08月18日

【マジック裁判・民事】 藤山新太郎氏による意見陳述全容! 

7月24日に行われました、日本テレビおよびテレビ朝日に対して提訴された、種暴露裁判の第1回口頭弁論のときに、原告団を代表し、藤山新太郎氏による、冒頭の意見陳述を行いました。

マジック関係者(傍聴人)一同、法廷で藤山氏の陳述を聞きながら、頷くばかりであり、法的な観点から離れた、マジシャン側の生の声を、とても説得力のある言葉でお話ししてくださいました。

裁判の冒頭で、このような意見陳述が行われることは異例でもあり、原告団側の重要な問題提起としての裁判という場において、このような意見陳述を行うことを許可して頂いた、裁判所に感謝しています。

以下、藤山氏による意見陳述の全容を引用します。

                           意 見 陳 述
                                              藤 山 新太郎

 私は本名を土戸直哉と申します。芸名は藤山新太郎と申しまして、もう40年以上もマジシャンとして活動しております。私は社団法人奇術協会の副会長を務めております。と同時にSAM、これはソサエティオブアメリカンマジシャンズと申しまして、世界で最も古いマジックの団体の日本局の総支配人をしています。今回はSAMのメンバーが主体となって告訴に踏み切っており、私はその代表者としてここに来ております。
 
 私は20代の時から日本奇術協会の役員をしており、その頃からテレビ局の種明し番組があると抗議に出掛けておりました。出掛けて行くと多くは謝罪文を出すなど対応をしてはくれましたが、セクションが違えばたちまちまた種明しを繰返すといった事の連続で、鼬ごっこを繰り返すばかりでした。
 また表向きは丁重に謝罪はしても、帰り際に廊下にまで追い掛けてきて「こんな事を繰り返しているとテレビに出られないようにするぞ」と脅しを掛けてくるプロデューサーもありました。実際タレントはテレビ局にとっては出入りの業者も同じ事で、使わないと言われれば何の抵抗も出来ません。全く弱い立場の者が抗議に行くのですから捗々しい結果がでなかったのも当然と言えます。
 しかし、今回このように正規の手続きをもって告訴出来た事は、それだけで一歩前進したと考えて良く、何らかの進展があるものと大いに期待しております。
 
 今回のニュース報道は、明らかにニュースの枠を逸脱した内容に問題があります。確かに、貨幣の変造は現段階では違法です。しかし、そのコインを使ってマジシャンがマジックをする事は違法でしょうか?違法ではないはずです。貨幣の変造をニュース報道するなら、その素材を公表するだけで充分なはずです。それを使い方や、演技にまで立ち入って種明しするのは明らかに行き過ぎでしょう。
 仕掛けは、ただ演じただけでは一瞬の不思議に過ぎません。そこに手順を作りストーリーを作って初めて、不思議が観客の面白さに変わるのです。そこにマジシャンは苦心をし、僅か2~3分の演技でも、手順を作り上げるまでには2年も3年もかかるのです。ところがその核となる種仕掛を暴露され、やり方まで種明しされては、マジシャンのかけた時間や工夫が無駄になります。仮に仕掛けを作った業者が違法であったとしても、その演技や工夫までも種明しする資格が誰にありますか。
 マジックは、その仕掛が秘密であるから価値があります。それは、推理小説の真犯人が最後まで分からないから推理小説の本が売れるのと似ています。もし作家が何年もかけて作り上げた本を、テレビで小説の中の真犯人の名前を先に言ってしまったらどうなりますか。その瞬間からその本は売上ダウンになるでしょう。それは作家にとって、明らかなる生活権の侵害です。今回の報道はそれと全く同じ事をマジシャンに対してしたのです。
 
 もし推理小説の真犯人をテレビ局が明かしたなら、出版社は直ちに損害賠償の請求を起こすでしょう。しかし、マジシャンはそれができません。タレントは、テレビ局から見たなら使う立場で、出入りの業者と同じです。テレビ局を抗議すると言う事は、仕事を失う事になるのです。
 初めにあなたがたは「何でここに呼ばれたのか分からない」とおっしゃいました。しかし、テレビで露骨な種明しをされればマジシャンが迷惑する事は、子供でも分かる事です。誰が考えても分かる事が、なぜあなたがたには分からないのですか、それは分からないのではなくて、テレビ局はマジシャンが弱者である事、仕返しが出来ない事を知って種明しをしているのです。これはいじめなのです。
 
 あなたがたのニュース番組では、「いじめはいけない」と報道しませんか。しますよね、そうした報道をするあなたがたが、なぜいじめをしますか?あなたがたはなぜいじめがなくならないかご存知ですか?答えは簡単です。あなたがたが弱者に無理解だからです。弱い者が弱いと知って、弱いものの生活を平気で犠牲にしている。そして、そこに罪の意識を持たない。これがいじめなのです。
 しかし、マジシャンがいつまでも黙っているわけではありません。人は生存権のぎりぎりまでも侵されれば、誰でも怒ります。どんなに弱い人間でも立ち向かいます。今回の裁判はマジシャンのギリギリの選択なのです。

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2007年08月14日

【マジック裁判・刑事】ギミックコイン刑事裁判控訴審始まる!!

昨日、午前11時より、ギミックコイン刑事裁判(貨幣損傷等取締法違反および関税法違反被告事件)の控訴審が、東京高等裁判所にて始まりました。

今回の法的主張のポイントは、紙幣との均衡論と、比較法的な視点です。
以下、控訴するにあたって裁判所に提出した、「控訴趣意書」および「補充書」を掲げますので、興味のある方は是非お読み下さい。

なお、裁判官には、コインに手を加えることと、紙幣を破ることと、どちらが犯罪のにおいがするのか区別できるか、そしてそれらをマジックという不思議を演出する芸術に絡めるとどういう印象を実際持つのか、ということを実感してもらうために、紙幣を用いたマジックの実演を試みましたが、残念ながら採用してもらえませんでした。

とはいえ、こちら側から要請した藤山新太郎証人の尋問、被告人質問、書証(アメリカにおける貨幣損傷等取締法の法文等)は採用してもらうことができ、最低限の裁判にはなったように思います。

今回の控訴審では、検察庁の威信もあってか、控訴審の第1回の前に、検察官から「答弁書」がとどき、それとともに、分厚い資料がとどきました。

また、外にも、財務省に対して、貨幣損傷等取締法についての資料がないか、調べてもらっているそうで、是非こちら側もその資料を見てみたいという思いもあり、その資料の検討を待って結審ということになりました。

次回は、9月12日午前11時より、東京高等裁判所718号法廷にて行われます。

では、趣意書の方、また長いですが、心してお読み下さい(笑)。

平成19年(う)第1178号

控 訴 趣 意 書

平成19年6月13日

東京高等裁判所第3刑事部 御中
被告人      A  

弁護人  小 野 智 彦

第1 原判決は、法令の適用において誤りがある、つまり、貨幣損傷等取締法及び関税法の本件への適用は不当であって、原審において主張したとおり、無罪であることを確信する。以下、理由を述べる。
第2 貨幣損傷等取締法違反について
 1 原審における弁護人の主張は、原判決4頁記載の3点(①乃至③)である。しかしながら、弁護人は、原審における弁論において、貨幣損傷等取締法の適用においては慎重にならなければならない理由として、既に立法の経緯が現在において当てはまらないことを主張すると同時に、現実的に、本法の適用対象がマジック用コイン(以下「ギミックコイン」という)以外に考えられないことからすると、およそ法律は一般的・抽象的なものでなければならないというテーゼ(憲法41条)に反し、法令違憲の可能性すら否定できないことから、その適用には慎重でなければならないとの警鐘を鳴らしたものの、この点についての原判決におけるコメントは全くなかったどころか、安易に立法事実の変遷まで持ち出して、安易に同法の適用をした内容になっている。
   以下、原判決のマジックに対する認識不足から曲解された原判決の内容を指摘するとともに、比較法的な観点をも考慮して、詳述することとする。
 2 立法事実の変遷について
   原判決5頁によれば、「弁護人は、貨幣損傷等取締法が貨幣の券面額よりもその地金自体の価格の方が高く不釣り合いであった時代に貨幣を鋳つぶして地金として販売することを防ぐ目的で制定されたもので、現在はそのような状況はなく、同法はその使命を終えたと主張するが、同法は、日本国政府発行の貨幣に対する信用を維持し、その円滑な流通を確保するとの観点から、特にその貨幣としての経済的価値が比較的低いが故に損傷等されるおそれがあるとしてかかる行為を処罰の対象としたものと解されるから、現在においてもなお一定の存在意義を有しているというべきである。」と判断している。
 (1)原判決が「同法は、日本国政府発行の貨幣に対する信用を維持し、その円滑な流通を確保するとの観点から」と指摘し、保護法益を貨幣に対する信用維持及びその円滑な流通の確保と捉えた点についての問題点
   ア 紙幣との均衡論
     同法の対象は、あくまでも硬貨であって、紙幣は含んでいない点において、仮に同法の保護法益が原判決指摘のような内容のものであるとすれば、片手おちであり、バランスを失することは明らかである。
     原判決が指摘するような保護法益は、既に刑法において通貨偽造・変造罪によってカバーされているのであり、かつ、同罪が「行使の目的」を特に構成要件要素として掲げたのは、そのような目的があってはじめて通貨の円滑な「流通」が害される危険が発生するからなのであり、「行使の目的」を構成要件要素としない同法において、さらに貨幣の円滑な「流通」を保護法益とするのは、矛盾である。
     また、原判決が「特に貨幣としての経済的価値が比較的低いが故に故意に損傷されるおそれがある」と判示したことの意味が不明である。現在の通貨が本位貨幣ではなく、全て補助貨幣であることから、貨幣自体の経済的価値が低いという意味であれば、なぜ硬貨のみが処罰対象とされ、紙幣が処罰対象とされないのかを説明できない。そもそも紙幣は、「紙」なのであり、硬貨の材料となっているアルミ、銅等に比べると、さらに経済的価値は低いものである。
     他方、そうではなく、同じ補助貨幣とはいえ、紙幣は高額通貨に使用され、硬貨は低額通貨に使用されるという意味において、硬貨が具現する経済的価値が低いという意味であれば、ことマジックの世界においては、硬貨、紙幣を問わず、真価に加工がされることはよくあることであり、テレビ画面において、セロ氏やミスターマリック氏が、紙幣の一部を破って復元させたり、或いは、火のついたタバコを1万円札に通して焼き切った後に復元させたりした場面を、ほとんどの国民が見たことがあるはずである。貨幣が具現する経済的価値の高低と損傷のされやすさということの間に因果関係が全くないのは、マジックの世界においては高額紙幣を用いた方がより不思議に見えることからも裏付けられるし、また、マジックの世界以外でも、紙幣は破っても銀行へ行けば新しいものに交換してくれるし、半券を持って行っても残存物の価値に応じて換金してくれる扱いがされている事実からしても、容易に説明できるところである。
   イ 比較法的な観点
     2006年12月に、米国において同様の法律が公布された。内容的には、5セント及び1セント硬貨の輸出、鋳潰し、処理の禁止についての法律である。米国内における報道(U.S.ミントプレス)によれば、金属の価格が急激に上昇した(1セント硬貨は1.12セントの価値が、5セント硬貨は6.99セントの価値がある)ことから、鋳つぶすことを禁止したとのことである。
     また、同趣旨の法律は、以前にも、金属の急激な上昇により、1967年から1969年にかけて銀貨の鋳潰しを禁止した法律や、1974年から1978年にかけて1セント硬貨の鋳潰しを禁止した法律があったと報道されている。
     米国における同趣旨の法律の制定背景は、まさに本法の立法趣旨(立法経緯)と全く重なるものであり、本法の立法趣旨を原判決のように殊更に曲解する必要は全くないし、原判決のように変更する合理的理由は全くないのである。
     むしろ、米国における同趣旨の法律が、立法趣旨が妥当しなくなった時点で廃止されているところからすれば、日本においても同様の立法趣旨が妥当しなくなった時点において廃止されるべきだったのであり、廃止しないでそのまま適用もされないまま今日まで放置されていたことに、国会の法律の廃止をしないという怠惰な不作為状態が継続していたのであって、むしろこのことに問題がある。
     米国内においても、当然ギミックコインは存在するが、それでは上記新法によってギミックコインの製造が禁止されるのかというと、もちろんそうではない。
     セクション82.2に例外規定が定められており、その(b)において、禁止規定は、教育、娯楽、装飾品、宝飾等の目的のためのこれらのコインの処理については、適用されるべきではない、とされており、ギミックコインが「娯楽目的」にあたることから、その製造は適用対象にはならないという扱いになる。
     つまり、上記法律が貨幣制度の維持を目的としており、仮に、原判決と同様に「米国発行の貨幣に対する信用を維持し、その円滑な流通を確保するとの観点」と捉えているとしたとしても、上記適用除外事由にあたる場合には、このような法益は犯されないとの認識に立つものということができ、いずれにしろ本件のような場合に、同法が適用されることにはならないのである。         
 (2)結論(本法が紙幣を対象としていないこととの理論的な整合性)
    あくまでも、本法の保護法益は、原審において弁護人が主張したところにとどまるのであり(貨幣制度に対する信頼の保護は、あくまでも立法経緯で述べた点に限られる)、この範囲において特に硬貨についてのみ規制をかけるべき理由があったと解さなければ、紙幣を対象としていないこととの整合性がとれないのである。
    よって、原審のごとく本法の保護法益を広く曲解した原判決は、その解釈において誤りがある。
 3 違法性阻却事由の有無について
 (1)正当業務行為について
    上記のごとく、そもそも教育、娯楽、装飾等の目的によるものは、構成要件から排除されるべきであるし、米国においては適用除外になっているところである。
    米国において適用除外になっているということは、米国においては社会的に見てそもそも違法な行為とはいえないという認識があるからであって、社会的に見て相当な行為であることが明らかであるからである。
    国民性等の違いから、多少の価値観の違いはあるものの、社会常識の点において大きな隔たりがあることは、経験則上考えられないところである。
    例えば、義務教育中の理科の実験で、アルミに熱を加えるとアルミを構成する分子が分離をはじめ、アルミ自体が軟らかくなるということを証明するために、1円玉をアルコールランプであぶって子供の力でも曲げられるという授業を受けたことがある人は数多くいるものである。しかしながら、この実験を「法律違反だ、刑事罰に値する」などと声高に主張する人はまずいなかろうと思われる。この原理を利用したメタルベンディングというマジックの分野があるが、マジックとして行うと社会的に不相当になるのであろうか。教育の現場にマジックを導入する動きは近時顕著であり、マジックと見せかけて、「実は科学的な根拠があるのです。」というコンセプトで授業を進める先生方も多くいる。NHKの教育番組等においては、米村でんじろう氏が有名である。
    弁護人の見解としては、違法性の阻却の前にそもそも片づくはずの問題であると考えているほどであり、何故に「社会的に不相当」なのかの理由が、原判決からは理解できない(原判決は、貨幣損傷等取締法の趣旨をも理由の一つとするが、原判決の認定した趣旨が誤った解釈に基づくものであることは既に述べたとおりである。)。
 (2)可罰違法性について
    可罰的違法性の問題においても、弁護人は「質的な」可罰的違法性の問題を提起したにもかかわらず、それに対する回答にもなっていない検察官による「量的な」可罰的違法性についての主張をそのまま採用しており、実質的な審理がなされていない、杜撰な判決内容であると言わざるを得ない。
第3 関税法違反について
 1 原判決は、関税法が貨幣の変造品を輸入禁止する目的を「貨幣に対する信用を保護し、経済秩序を維持することにある」(6頁)とするが、貨幣損傷等取締法の目的同様、貨幣に対する信用の保護については、どれほどの要保護性があるのか、根拠不明確な電子マネーが乱立状態にある現状から甚だ疑問である。つまり、貨幣への損傷、貨幣の変造等が引き起こす貨幣に対する信用毀損は物理的に限度があるが、むしろ電子マネーが引き起こす貨幣に対する信用毀損の方が、深刻な問題であると思われる。
   貨幣等の信用の保護は、偽造貨幣、変造貨幣が流通過程におかれることを目的とすることによって初めて犯される危険に曝されるのであって、抽象的に変造品が存在することによって、貨幣等の信用の保護が犯されるわけではない。ましてや、手品用に使われるギミックコインは、あくまでも手品用にしか利用することができず、かつ、額面の数十倍の価格を費やしてまで購入するものであって、このようなギミックコイン所持者は、誤って流通過程におかないために、専用の小銭入れを用意しているほどである。
   このような事情から考えるに、手品用のギミックコインが、仮に同法の「貨幣の変造品」に形式的にあたるとしても、保護法益を犯す抽象的な危険すらないものであることから、やはり構成要件に該当しないと言わざるを得ないのである。
第4 憲法21条1項違反について
 1 原判決は、「手品ないしマジックを演じる自由が表現の自由(憲法21条1項)に含まれるものとして保障されるとしても、その自由が公共の福祉による制約を受けるのは当然のこと」とし、立法目的の正当性を論じ、かつ、各罰則規定がその目的達成の手段として必要最小限度の規制と判断している。
 (1)立法目的の正当性について
    原判決が示した貨幣損傷等取締法および関税法の立法目的が、妥当性を持ち得ないことはすでに述べたとおりである。
    また、仮に、万が一、ギミックコインを製造することによって原判決が指摘するような保護法益が侵害される抽象的な危険があるとするのであれば、実際に所持することの方がその危険はより高まるのであって、製造だけを処罰し、所持を処罰しないのは片手落ちのそしりを免れない。
    いずれにしろ、原判決が指摘する立法目的は正当性を持たず、元に戻って原審において弁護人が指摘した、貨幣損傷等取締法の立法趣旨が現在においてもはや妥当する立法事実がないことは、原判決が暗に認めているとおりである。
 (2)立法目的達成手段の必要最小限性について
原判決によれば、各罰則規定が必要最小限度の規制との判断である。原判決が認定する、各法律の立法目的そのものが妥当なものではないこと、先に述べたとおりであるが、仮に目的そのものが正当であったとしても、必要最小限、つまり、より制限的でない他に選びうる手段がないとは到底言えない。
    原判決によれば、「確かに、これらの法律により、日本円の貨幣を材料としたギミックコインによるマジックを行うことは事実上困難になる」ことを認定しており、この点においては正しい認識といえる。
    しかしながら、そもそも規制手段の必要最小限性を検討すべきところ、原判決は「これらの法律は、マジックを演じる自由を直接規制するものではないから、マジックを演じる自由に対する公共の福祉に基づくやむを得ない制約」と全く的はずれな判断を示しているのである。
    過去において、特に貨幣損傷等取締法が適用された事例は、本件及びギミックコインの作成についての事件に限られ、しかも、いずれも遡ること1年以内に起訴された事例であり、現在この法律は、実質的にはマジック規制立法としての役割を担わされており、多いに問題であることは、すでに原審の弁論において述べたとおりである。
    そして、「演じる自由そのものを規制するものではない」というのは、もはや詭弁であり、演じる道具の作成、輸入がいずれも規制されているということは、もはや演じる手段がないということであり、ひいては演じる機会が奪われたということに等しいのであり、コインマジックの一分野とはいえ、ギミックコインを用いたコインマジックの重要性に鑑み、その規制はコインマジックを演目に加えるマジシャンにとって、耐え難い制約なのである。
    すでに米法との関係でみたように、教育、娯楽、装飾、宝飾の目的の鋳つぶしの場合には、貨幣損傷等取締法の目的である貨幣制度の維持は守られることから、少なくともこのような目的か否かの境界線が明確になれば、敢えてこれらの目的の場合の鋳つぶし(損傷を含む)を罰則によって規制する必要はないものと考えられる。
    そして、そのような境界線を明確にするための手段は、許可制、免許制、登録制を導入することで十分に可能なのである。
    同様に製造そのものを処罰する法律として、大麻取締法が存在し、同法は免許制(第2章)を採用し、第3条第1項において「大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。」と規定し、罰則も、同法24条により、「みだりに」との要件を掲げて免許を得た者を適用除外し、かつ、「営利の目的で」と要件を絞る等、刑法の謙抑主義的思想を良く反映しているし、どういう場合に罪になるのかどうかという明確性も確保されており、国民の行動予測性も担保されており、罪刑法定主義(憲法31条)の観点からも妥当な規制手段といえる。
    しかしながら、貨幣損傷等取締法の場合には、そのような限定がないどころか、貨幣損傷等取締法および関税法の各規定が表現の自由に対する規制としての側面を有しているにもかかわらず、そして、そのような精神的自由権を規制する法律については、その萎縮的効果を国民に及ぼさないようにするべく、国民の行動予測性がたつように、その規定の内容は明確でなければならず、また、明確であったとしてもその適用対象が過度に広汎であってはならないにもかかわらず、何等の限定を付けずに「損傷」の一言で行為を規制する同法の規定は、そもそも憲法21条1項、31条に違反すると解すること(法令違憲)が十分可能である。
    いわんや、上記のような免許制等を採用することにより、同法が保護しようとする法益は十分に確保できるのであって、より制限的でない他に選びうる手段が存在することが明らかである以上、必要最小限の規制とは断じて言えるものではないのであり、適用違憲であることに疑いはない。
    なお、エンターテイメント界における「表現」の重要性が再認識されている昨今において、その法律的保護は十分になされるべきであり、これまで日本国内において軽視されてきたことに対する運動の一環として、NPO法人エンターテイメント・ロイヤーズ・ネットワーク(弁護士久保利英明会長)が設立され活動されているほどであり(弁護人もその一員)、そのような意識すらない昭和22年制定の法律が今なおそのままの姿で残っていること自体が問題であるし、いわんやそのような法律を適用するなどは言語道断であるといわなければならないことを付言しておく。
第5 結論
   以上のとおり、原判決には法令の適用において誤りがあることを、御庁におかれましては慎重に検討して頂いた上で、本件への貨幣損傷等取締法及び関税法の適用が不当であることを判断して頂き、原判決破棄の上、是非とも無罪判決を頂きたい。
以 上


平成19年(う)第1178号
控訴趣意書補充書
      平成19年8月2日
東京高等裁判所第3刑事部 御中
                     被告人     A

  弁護人  小  野  智  彦

第1 マジック用ギミックコインの流通の可能性
 1 マジシャン気質について
   裁判所には、マジシャンの気質というものをまず理解して頂きたい。
   マジックを演じる者をマジシャンと言うが、マジシャンという生き物は、およそ投資に見合った回収というものを考えず、考えるとするならば自ら演じたマジックによって、どれだけお客さんや周りの方が喜んでくれるかという、一点に尽きる。
   いわゆるマジックを演じるだけで生計が成り立つ専業プロマジシャンは、残念ながら多くないため、世の中のマジシャンの大半はアマチュアマジシャンである。
   マジックの道具は、得てして高額であり、特にギミックコインに関しては、一般人から見たら想像もつかないくらいの金額である。しかしながら、無理をしてでも、アマチュアマジシャンはこれを購入するのである。アマチュアであるが故に、これに投下した資本を回収する術は全くない。ただ単に、周りの人間を楽しませよう、周りの人間の笑顔が見たいという、純粋な気持ちから、一般人から見たらばかばかしいと思うような高額の出費も惜しまないのが、マジシャンの気質である。
 2 マジック道具を販売する側の気質(特に被告人の場合)
   販売する側であった被告人は、やはりマジックを演じる側の人間、つまりマジシャンであるが故に、マジシャン気質を良く理解している。また、そういうマジシャンの気質を良く理解しているが故に、ギミックコインが欲しいと頼まれれば、喜んで探してきて提供してあげたいとの姿勢の元に、仕入れ、販売を行ってきた。
   このようなマジシャンの気質を理解した、道具の提供者として、マジシャンを応援したい気持ちは、これまでギミックコインの製造、輸入によって刑事裁判になった例がなかったことからしても、決して責められるようなものではない。
 3 日本円のギミックコインの販売方法について
   販売する側としては、通常、ギミックコインを買いに来たお客様に対しては、外国のコインをまず勧めるとのことである。なぜなら、値段的に見て日本円に比べると手軽であること、そして、日本円のギミックコインの存在が外国のコインに比べて知られておらず、不必要に日本円のギミックコインを勧めることはかえってマジシャンの首を絞めることになることからである。
 4 以上のことから、日本円のギミックコインを購入する人というのは、相当程度のマジックマニアと呼ばれる人たちであり、ギミックコインを一旦購入したならば、それをマジックを演じる道具としてのみ使うことを予定しているのであって、また、後生大事にそのコインを保管する人たちであって、実社会において不必要に、ギミックコインが出回り、真価との混同が生じるような状況はおよそ考えられないのである。
   つまり、ギミックコインが真価と共に流通する可能性はないことから、本件のごとき被告人の行為は、何ら法益侵害を犯していないものである。

第2 必要最小限度の規制か否か
 1 マジック関係者、また、弁護人としても、貨幣損傷等取締法を全面廃止して、ギミックコインが全面的に解禁になり、いつでもどこでも誰でもが容易に日本円のギミックコインが入手できるようになることを歓迎しているわけではない。
   これまでのところ、マジック業界(販売側)としては、日本円のギミックコインによる現象の不思議さが強烈であることから、そのネタの不思議さを保つために、その機密性を保持しなければならず、そのための手段として、値段を高く設定するという状況にあった。
   今回、原審判決により、改めて有罪判決が下りたことにより、市場にある日本円によるギミックコインは、ますます闇取引の対象となり、値段も破格につり上がった金額で取引されるようになっている。果たして、有罪判決を下すことにより、闇取引の世界へ追いやることが解決になるのだろうか。
 2 アメリカにおける同法の規定では、適用除外の場合を明確に規定し、一つは教育、娯楽、装飾品、宝飾の目的、或いは、単にコインの金属部分の価値から利益を得る手段として用いるものではないと明確にされる限り、適用されないと規定することにより、境界線を明確に引くことによって一つの解決を図っている。マジックの先進国であるアメリカ合衆国の配慮である。
   また、同法は、財務省長官により発行された免許を有する場合には、同様に適用除外になっている。一律に禁止するのではなく、免許制を採用することによって、必要最小限度の制限とする措置がとられており、あたかも趣意書で弁護人が指摘した、大麻取締法と同様の構造であり、比較法的に見ても、貨幣損傷等取締法に同様の規定をおけない理由はない。
 3 これらの点を勘案するならば、セクション82.2(b)(c)に相当する規定の置かれていない貨幣損傷等取締法は、必要最小限度の制限を超えるものとして、原審において主張したのと同じく、憲法21条1項違反であるとの判断を免れないものである。
以  上
 
   

投稿者 ono : 18:07 | コメント (0)

2007年07月23日

【マジック裁判・民事】マジック裁判、明日(7/24)第1回弁論です!

いよいよ、日本テレビ及びテレビ朝日相手に起こした、不当な種暴露放送事件の第1回の口頭弁論(裁判)が、明日行われます。日時、場所は、以下の通りです。

東京地方裁判所 615号法廷
午前11:00~

この法廷には、40席の傍聴席があるとのことです。
傍聴される方は、時間ギリギリに来られると、入れない可能性もありますので、余裕を持ってお越し下さい。

なお、明日は、藤山新太郎さんに、訴状陳述にあたって、裁判所への意見陳述をしていただく予定です。
説得力のある藤山節が聞けるかも知れません(あくまでも裁判所が許可してくれないとできませんが・・・)。

日本テレビ、テレビ朝日から、答弁書が届いています。
テレビ朝日は、全くの強気で、全面否認ですし、日本テレビに至っては、藤山さんのレクチャー本を持ち出して、「原告代表者だって種明かししてるじゃないか。」と。
全く持って、的はずれな反論で、情けなくなるばかりか、開いた口が塞がりません。

今後の展開で、原告団に加わって頂いた皆さんに、色々とご協力いただくことがあるかもしれませんが、その時にはよろしくお願いします。

(答弁書の内容については、後日、要旨をアップしたく思います。)

なお、原告団第2陣は、昨日までの段階で、56名の応募がありました。
第1陣とあわせて、合計105名となりました。ありがとうございました。
第2陣は、近日中に提訴することになります。提訴しましたら、またご報告します。

投稿者 ono : 14:36 | コメント (2)

2007年07月02日

【マジック裁判・刑事】ギミックコイン刑事裁判における弁論要旨、全文掲載!

ザ・マジックの72号の「そもそもプロというものは」の項において、藤山新太郎氏が、刑事裁判において私が読み上げた「弁論」について、非常に褒めていただき、その内容を是非、外のマジック関係者にも読ませてやってくれないか、とのお話がありましたので、ここに実名だけを伏せて、全文を掲載することにします。

なお、この刑事裁判の控訴審は、8月13日に行われ、すでに控訴趣意書(1審における弁論に相当するもの)はすでに書き上げ、裁判所に提出済みです。
こちらの方も、以下に示す弁論要旨とはまた違った角度で再検討をさせて頂いており、こちらの方もいずれ公開したく思っています。

長いですので、心してお読み下さい(笑)。

平成19年(特わ)第76号 貨幣損傷等取締法違反、関税法違反被告事件

弁 論 要 旨

                           平成19年3月6日

 東京地方裁判所刑事第10部 御中

                    被 告 人     A
                    被 告 人     B
                    被 告 人     C

                    弁 護 人  小  野  智  彦

第1 総 論
   本件においては、具体的事実については争わないものの、以下のごとき法律上の主張により、本件被告人らの行為は、無罪であると考える。
   ただ、本件において被告人らは、法を犯したことについて素直に反省していることから、被告人らの意向に沿ってまず情状論を述べ、その後に弁護人の意見としての法律上の主張を行うこととする。
第2 情 状
 1 被告人らは、本件につき、発覚当初から捜査官の取り調べに対しても全て正直に話しをし、隠し立てをすることはなかった。取り調べ、店舗での立ち会い、押収への協力等、一連の捜査に対して協力的な態度をとることが、まずは法を犯してしまった者のすべき努めであると自覚し、それに沿って行動してきたことは、被告人らの反省として十分に酌むべき事情である。
 2 被告人らの罪の意識及びこれに関する調書の記載の信用性について
   被告人らの本件に対する罪の意識は、国内においてギミックコインを製造することが法に触れるくらいの意識しかなく、また、製造したとしても本当に逮捕され、処罰されたという情報を聞いたことがなく、聞いたとしてもそれは噂の域を出るものではなかった。ましてや、本件のごとく、ギミックコインを海外に発注することが罪に当たるかどいうかということまで明確な知識はなく、国内製造よりもさらにグレーゾーンくらいの意識しかなかったのが正直なところである。
   この点、平成18年12月5日付員面調書(被告人A)9枚目に
  「以前、加工した日本の貨幣を売ると罪になるという話を聞いたことがあるから、輸入して売るのは危ないと思うが、大丈夫か」との記載があるが、司法警察員の先導による追認という面があり、被告人Aの真の供述性という意味では、信用性が低い。
   また、同様に、平成18年10月18日付東京税関による調書(被告人A)4枚目に
  「日本円の真貨で作ったギミックコインを輸入することは違法であることが分かっていました」とあるが、これに関しては、財務事務官から、「本件は、韓国の貨幣を500円に似せて偽造した案件と同じように扱わざるを得ないが、もし輸入することが違法であることを最初からわかっていたと答えたら、変造コイン扱いにしてやる。」という趣旨のことを言われ、少しでも罪が軽くなるのならばと応じたものであり、この供述の信用性も疑わしい。
   平成18年12月21日付検面調書(被告人A)4枚目に
  「私は、本物の日本円の硬貨に加工したマジック用コインを輸入するというのは、何らかの法律に触れるだろうと思いました」という記載が、一番被告人Aの真の供述に近いものである。
   同様のことは、被告人Bの平成18年11月6日付東京税関による調書2枚目に
  「私たちは、ギミックコインを日本に輸入することが法律に違反することだと判っていました」とあり、
   また、平成18年12月4日付員面調書2枚目には
  「当然、日本国内で日本国政府発行の貨幣を損傷することが違法なわけですから、海外で加工して日本に輸入した場合も法律に違反すると言うことは知っておりました」とあるが、マジック関係者の認識としては、むしろ逆であり、国内で製造しては法律に引っかかる可能性があるため、安全のために海外の業者が加工したものであれば大丈夫、というのが一般的であったのであり、これらの供述部分も、捜査官の先導的な作文を追認したものであって、信用性がないことは被告人Aの場合と同じである。
   こちらも、平成18年12月25日付検面調書2枚目で
  「日本円のギミックコインを持っていることが罪になるのか、売ることが罪になるのか、作ることが罪になるのかといった詳しいことまでは分かりませんでしたが、いずれにしても、日本円のギミックコインが、何らかの形で法に触れるということが分かりました。」というのが一番近いものと思われる。ただ、この供述からも分かるとおり、本来罪にならない所持や売却行為まで法に触れるかも知れないと供述しているとおり、その「分かりました」という表現も罪の意識を明確に持っていたわけではないのが現状である。
   被告人Cについても、平成18年1