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2008年09月08日

【マジック裁判・民事】9月2日結審、10月30日いよいよ判決言渡し!!

9月2日、第10回目の口頭弁論が開かれ、原告ら側の最終準備書面が陳述され、結審にいたりました。
前代未聞の裁判でもあり、どのような判決が示されるのかが注目されるところです。
注目の判決は、10月30日午後1時15分より、東京地方裁判所708号法廷にて言い渡されます。
判決言渡し後に、記者会見を開く予定です。

なお、今回こちら側で出した最終準備書面を、長くなりますが貼り付けておきます。
前回の藤山さんの尋問内容を受けて、争点がさらに絞れましたので、まとめ直した形になります。
お時間のあるときにでも、ご一読ください。

平成19年(ワ)第10875号 損害賠償等請求事件
平成19年(ワ)第18783号 損害賠償等請求事件
原 告 ら 土 戸 直 哉 外104名
被 告 ら 日本テレビ放送網株式会社 外1名

原告最終準備書面

                          平成20年8月29日
 東京地方裁判所民事第25部甲1A係御中

             原告ら訴訟代理人弁護士  小  野  智  彦

 「秘すれば花なり、秘せずば花なるべからずとなり。」
                    花伝書(風姿花伝)世阿弥編より
第1 本件の問題点
 1 本件の被告らの報道は、ギミックコインの製造について、貨幣損傷取締法違反の容疑で製造者兼マジシャンが逮捕されたことを契機として、いわゆる犯罪報道の一環としてなされたものであり、その報道の必要性は、報道局の判断によるところが大きいし、珍しい容疑だということであれば、話題性もあることから、契機となった事件を報道すること自体に疑問を差し挟むものではない。
   問題は、犯罪報道としての相当性を超えているのではないか、という点であることは繰り返し述べているところである。
 2 相当性を超えるのではないか、ということで原告らが問題としているのは、いわゆる「種明かし」の部分である。
 (1)まずは、「種」の種類についてである。
    土戸証言からも明らかなように、「種」という言葉には2種類の使われ方がある。一つは「ハード面についての種」であり、もう一つは「ソフト面についての種」である。
    つまり、前者(ハード面)については、ギミックコインで言えば、どういう構造になっているのかということであり、例えばシガースルーコインであれば、コインの真ん中に開閉式の穴が開いている、ということであるとか、フォールディングコインであれば、2つ折り、3つ折りに折れ曲がる構造になっており、折曲がった状態から手を放すと元のコインの状態に戻るとか、そういう客観的なギミックの構造のことである。
    被告テレビ朝日の準備書面(4)によれば、警視庁も(捜査官)が報道陣に対し、「本件コインの損傷状況及びそれと手品との関係を説明したことについて、種明かしになるがやむを得ないことであると認めている」として、土戸本人調書16頁を引用するが、全くの的はずれである。警察が報道陣に説明をしたのは、例えば甲2の4の3,6頁、一番上の2枚の写真については、左側(フォールディングコイン)は、500円玉が3つ折りになる客観的な構造を示しているだけであるし、右側(パンクチャーギミック)は、100円玉に穴があり、そこにボールペンが突っ込まれている客観的な状況を説明しただけである。確かに、マジックに使われるコインという説明をしているのであろうが、これらのコインをどのようにマジックに使うのか、についてまでは説明がなされていない。
    マジックの道具は、往々にしてそうであるが、説明書がなければどのように使ったらよいのかすらわからないものであり、ただ折れ曲がるコインをみせられても、どう使うのかまでは分からないため、マジシャン側(ギミックコイン所有者)も、そこまでの説明であれば、客観的な構造の説明のみで現象と結びついていないために、実害もそれほど大きくなく、公共の福祉のために甘受せざるを得ないと考えられる。
    しかしながら、これらのギミックをどのようにマジックに使うのか、という現象を起こすためのやり方(ソフト面についての種)についてまで説明するのは、マジックそのものを崩壊させるもの以外の何ものでもない。
    つまり、同じ種であっても、原告らが最も問題としているのは、「ソフト面についての種」であって、これは「ハード面についての種」と厳格に区別されなければならない。
    これまで述べてきた「種暴露」の問題における「種」については、いずれも「ソフト面についての種」を前提に主張してきたものである。マジックの現象が「花」たるや、「ソフト面についての種」が秘すればこそなのである。
 (2)次に、テレビ局は、マジックの種(ソフト面についての種)の重要性をしっかりと認識していながら、本件のような「種暴露」を行ったことに悪質性がある。
    20年ほど前、Mr.マリックが日本テレビの番組で、100円玉にタバコを通したマジックを披露したことで、一大センセーショナルが起き、今日に続く超魔術ブーム、クロースアップマジックブームに引き継がれ、これまで何度となく、テレビ局によりマジックの特番が制作されてきた。
    その中には、毎回のようにギミックコインによるトリックがあった。もちろん、その時々の「テレビ局のプロデューサーは、当然それがどういうコインを使っているものであるかは知っていたはずです。知らなければ、カメラ位置も決まらないし、ショートしての構成も作れないわけですから。その番組に関わった何人かの人たちは、それがトリックコインであることはもちろん承知で番組を作っています。ですが、彼らは視聴率を取るためにそのことは言わなかったわけ」なのである(土戸本人調書6頁)。
    ところが、本件では、「本来なら種さえ分からなければ、同じ番組を幾つでも作れるものを、とにかく1回の視聴率を取りたいがために暴露した結果が今回のことだろうと思」われる、とする土戸本人の供述は、合理的である。
    つまりは、確信犯だったわけである。
    さらには、本件報道の取材の一環として、被告らはギミックコインを高い金額を出して購入している。被告らは、視聴率を取るための必要経費と考えれば、ギミックコインにかかる費用など安いものであろうが、マジック愛好家にとっては、ギミックコイン1枚の値段は、相当に高価である。本件のような報道がなされれば、少なくとも今後ギミックコインでは視聴率がとれないと認識していたと合理的に推測され(事実、本件以降、日本円のギミックコインを用いたマジックの番組が制作されていない)、ギミックコインを持っていることの価値、即ち、ギミックコインそのものの財産的価値が著しく減損されることを十分に認識していたはずなのである。つまり、この意味においても確信犯だったのである。
    この点、土戸供述は、非常にわかりやすく解説している(土戸本人調書11頁)。
    「3つめの問題が単なる暴露です。何の理由もなく、マジックの種明かし、あるいはマジックの教室の番組でもないのに、テレビのニュースをつけたら種明かしをやっていた、これが問題です。それを見てるお客さんがその種を知りたいかどうか、実際ほとんどの人は知りたくも何ともないんです。じゃ仮にコインのマジックを、そこで種明かししたからと言って、だれがそれできるんですか。そのコイン、あああれは面白い、じゃ作ってみようって作りますか、作れば犯罪になるんでしょう。じゃ種明かしする理由どこにありますか。じゃインターネットで買えばいい、だけどタバコを通す100円玉が1万円からするんですよ。普通に生活をしてる人がそんなものを買いますか、あり得ないですよね。そんだけの金払ってでもたばこを通したいと思う人のほうが、これはむしろ奇特な人たちです。で、それをなんで報道番組で種明かししますか。全く理解に苦しみます。みんな迷惑をしてます。覚えた視聴者は全然出来ません。種明かし知っただけに終わってしまいます。誰の得になるんですか。だから私はそのことに対しては反対しているんです。3つの種の公開のうち、暴露は一番だれのためにもならないから反対しているんです。」
第2 マジシャン(手品師)に恰も罪があるかのような番組を制作したことについて
 1 甲2の4の3、3頁以下で、隠しカメラにより、庄野氏のお店(フレンチ・ドロップ)に潜入し、庄野氏のシガースルーコインを演じる様を撮影したものを報道した記録がある。
   隠しカメラで潜入しなければならない理由などない。シガースルーコインを製造する場面であれば、まさに犯罪実現行為であるから、これを断って撮影することは不可能であろう。
   しかしながら、シガースルーコインを用いてマジックを演じることは何ら違法でも何でもない。これを隠しカメラで、潜入レポをする必要は全くないのである。
   このような手法は、ギミックコインを用いてマジックを演じるマジシャンが、恰も犯罪実現行為を行っているかのような錯覚を起こさせるような報道の仕方であり、それ故にこの報道番組以後、ギミックコインを用いてマジックをすると、「それって犯罪でしょ。」と白い目で見られ、マジシャンたちは、多大なる精神的苦痛を負ったのであった。
 2 土戸供述の該当箇所を引用する(土戸本人調書19頁)。
   「それはハードの部分の法律違反じゃないですか。ソフトの部分の解説をなぜくどくどなさるんですか。なぜそれをビデオカメラで潜入して撮らなきゃいけないんですか。ビデオカメラで潜入しなくても、お金さえ払えば見られるし、手品見せてくれって言えばいくらでも見られるものを。」
   「(潜入したその映像で、何かからくりが明らかになっていますか。)明らかになっております。だって演出をそこで伝えるんですから。」
   「だからそれをなぜ秘密カメラで撮らなきゃいけないんですか。撮らしてくださいと言って撮れば幾らでも撮れるものじゃないですか。」
   「あたかも手品をすることそのものが間違いのように放送してるではありませんか。」

第3 不法行為の特定について
   原告第3準備書面において、放送における不法行為部分の特定をしたが、今回改めて争点が絞れたことから、若干の修正を行う。
【被告日本テレビについて】
 1 甲2の4の2について(ザ・ワイド(2006年11月15日放送)3頁より)
(1)3頁目3行目から5行目まで
   金子氏による、シガースルーコインの種暴露の状況。
   「まずこちらの、百円玉と、たばこにご注目ください。この百円玉にたばこを乗せて、おまじないをしますとごらんのように、たばこが百円玉を貫通しました。おなじみのマジックなんですけれども、実は、裏返しますと、本物の百円玉に真ん中に穴をあけてあるんですね。」(3頁目写真2枚がこれに対応)。
(2)3頁下から2行目以降4頁下から4行目まで
   隠しカメラで、潜入レポを行い、庄野氏の行うシガースルーコインの演技を撮影、放送していること。
2 甲2の4の4(NNN NEWSリアルタイム(2006年11月15日放送)12頁より)
(1)14頁目(2:15)~15頁目(2:32)までの8枚の写真に対応する映像を放映したこと。
   写真は、いずれも100円玉のシガースルーコインの種が暴露されている状況である。レポーターにより、一見本物にみえる100円玉の中央部分を指で押し凹む様を撮すと共に、コインの裏側(仕掛け側)をも撮影し、凹んだ穴の部分がコイン本体を離れ、ヒンジでつながれている状態まで撮影・放映されている。
(2)15頁目(2:46)~16頁目(2:50)までの4枚、及び17頁目4枚の写真に対応する映像を放映するとともに、以下のナレーションを行ったこと。
   写真は、いずれも500円玉のフォールディングコイン(バターコインをフォールディングコインとして使用している。)についての種が暴露されている状況である。2つに折りたたまれる500円玉の様子及び、これがペットボトルの口の部分を通過し、中に入る様が撮影・放映されている。
   ナレーターにより「通るはずのない口をコインが通ってしまうおなじみのマジック。しかし、このコインにもトリックがあった。真ん中に割れ目があるが、ゴムの力でもとに戻る。こうすれば簡単に狭い口も通すことができる。」(16頁最終行から17頁3行目にかけて)とのナレーションが行われた。
(3)20頁目4枚の写真に対応する映像を放映すると共に、以下のナレーションを行ったこと。
   写真は、いずれも近藤氏による100円玉シガースルーコインの種が暴露されている状況を撮影・放映したものである。
   「このように、たばこがあっさり通ってしまうんですが、これをもっていたり販売をしても、罪には問われません。この仕掛けは、このようにたばこを差し込みますと、ふたがばねでとめてあって、それがこのように開くんですね。簡単な仕組みです。」(20頁1行目~4行目)。
3 甲2の4の5(NEWS ZERO(2006年11月15日放送)21頁より)
   以下のナレーションと共に、23頁から25頁(3:20 その2)にいたるまでの写真に対応する映像が放映されたこと。
   「インターネットで高額な値段で売買されているマジック用の硬貨。私たちはその幾つかを入手した。百円硬貨にたばこを通すマジック。この場合、硬貨の真ん中に丸い穴があり、ワイヤーで動く仕掛けになっている。こちらは五百円硬貨が、ペットボトルの小さな飲み口から入ってしまうマジック。折れ曲がるように細工され、ゴムでもとに戻るようになっていた。そして、十円硬貨が消えてしまうマジックでは・・・。十円と五百円が表裏になっていて、もう一方の硬貨と合わさると、五百円硬貨ができあがる。通常のものとマジック用のものを比べてみても、全く見分けがつかないほど精巧につくられている。」(23頁1行目~25頁2行目まで)とのナレーション部分。
  ① 23頁(2:29)(2:35)の写真
    100円玉シガースルーコインの種が暴露されている状況。丁寧にも「丸い穴がワイヤーで動く」とのテロップまでもが流された。
  ② 23頁(2:49)~24頁(3:01)までの3枚の写真について
    いわゆる500円玉のバターコインをフォールディングコインと同じ使い方によって、ペットボトルの口から折り曲げて中へ入れる様子を撮影したもの。丁寧にも「500円硬貨が折れ曲がる」とのテロップまでもが流された。
  ③ 24頁(3:04)~25頁(3:20)までの8枚の写真
    500円玉と10円玉によるスコッチ&ソーダの種が暴露されている様(3:04)では、500円玉と10円玉が示されており、これをかぶせると10円玉が500円玉の中に組み込まれる様が、(3:11)~(3:14)までの3枚の写真によって示されている。なお、10円玉の裏側には500円玉の表(桐側)が張り合わされており、500円玉の中に組み込まれたときには、裏を見せても普通の500円玉にしかみえないような仕掛けになっている。その部分の暴露されている様が、(3:15)~(3:20)の4枚の写真によって示される。なお、マジシャンの間では、特にシークレット度の高いギミックである。
4 甲2の4の7(スッキリ!!(2006年11月16日放送)36頁より)
(1)以下のナレーションと共に、36頁目(0:25)(0:30)の写真に対応する映像を放映したこと。
   「百円硬貨にたばこを通すマジック。この場合、硬貨の真ん中に丸い穴があり、ワイヤーで動く仕掛けになっています。」(36頁7行目~8行目)
   写真は、100円玉シガースルーコインの種が暴露されている状況である。丁寧にも「100円硬貨にタバコを通すマジック 硬貨の真ん中に丸い穴を作りワイヤで動く仕掛けに」とのテロップまで入れる過剰な報道である。
(2)以下のナレーションとともに、37頁目(0:38)(0:39)の写真に対応する映像を放映したこと。
   「こちらは、五百円硬貨がペットボトルの小さな飲み口から入ってしまうマジック。硬貨が折れ曲がるように細工され、ゴムの仕掛けでもとに戻るようになっています。」(36頁最終行~37頁2行目)
   写真は、いわゆる500円玉のバターコインをフォールディングコインと同じ使い方によって、ペットボトルの口から折り曲げて中へ入れる様子を撮影したものである。丁寧にも「500円硬貨がペットボトルに入るマジック 硬貨が折れるように細工されゴムの仕掛けで元に戻る」とのテロップまでもが流された。
(3)以下のナレーションとともに、37頁目(0:45)~38頁(0:58)までの8枚の写真に対応する映像を放映したこと。
   「そして、十円硬貨が消えてしまうマジックでは、十円と五百円が裏表になっていて、それぞれを合わせると五百円硬貨ができ上がる、という仕組み。」(37頁3行目~最終行)。
   写真は、500円玉と10円玉によるスコッチ&ソーダの種が暴露されている様子である。(0:45)では、500円玉と10円玉が示されており、これをかぶせると10円玉が500円玉の中に組み込まれる様が、(0:48)~(0:54)までの3枚の写真によって示されている。なお、10円玉の裏側には500円玉の表(桐側)が張り合わされており、500円玉の中に組み込まれたときには、裏を見せても普通の500円玉にしかみえないような仕掛けになっている。その部分の暴露されている様が、(0:54)~(0:58)の4枚の写真によって示される。「10円硬貨が消えるマジック 10円と500円が裏表になっていてそれぞれあわせると500円硬貨に」と懇切丁寧な字幕付きでの解説まで行っている。なお、これは、「スコッチ&ソーダ」と呼ばれるコインであり、マジシャンの間では、特にシークレット度の高いギミックである。
(4)以下のナレーションとともに、38頁目(1:22)(1:25)の写真に対応する映像が放映されたこと。
  「阿部 えー、で、こちらが今VTRにもありましたが、加工されたコインです。例えばこの百円硬貨にたばこを刺すと・・・突き抜ける。
   加藤 えー、よくできてるな。
   阿部 なぜかというと、裏がふた状になっているからなんです。わかりますか。
   加藤 ははあ、単純な仕掛け、仕掛けですよね。」(38頁下から3行目~39頁2行目)
   写真は、100円玉シガースルーコインの種が暴露されている様子である。
(5)以下のナレーションとともに、39頁目5枚の写真および40頁目3枚の写真に対応する映像が放映されたこと。
   「そしてもう1つ、こちらは五百円玉なんですけれども、パキッと折れて中に、ゴムが、透明のゴムが通されているんです。それで形状記憶ができるんですが、普通ならば、このペットボトルの口からは入らない五百円硬貨がこのためきれいに入ってしまう。こういう仕掛けになっているんです。」(39頁3行目~39頁2行目)
   写真(39頁目)は、いずれも500円硬貨のバターコインの種の部分である2枚の破片をゴムでつなぎ合わせて1枚のコインに見立てている構造を、2枚の破片を両側に引っ張ることにより、ゴムの通っている部分までわざわざ見せ、さらには元に戻る様子を撮影したものである。
   写真(40頁目)3枚は、上記バターコインをフォールディングコインとして使用し、種の構造を明かしつつ、ペットボトルの口から500円玉が入る様を撮影したものである。なお、テロップには、「売り上げは3億円!? コインマジックで逮捕」とあり、「!?」という不確実なクエスチョンマークとともに、「逮捕」とは全く関係のない種明かしが意気揚々と行われている。
5 甲2の4の9(ウェークアップ!ぷらす(2006年11月18日放送)56頁より)
(1)以下のナレーションと共に、56頁目(1:15)(1:16)の写真に対応する映像を放映したこと。
   「こんなことができちゃったのも、本物の硬貨に細工がされていたから。」(56頁8行目~9行目)
   写真は、100円玉シガースルーコインの種を暴露しているところを撮影したものである。
(2)57頁の写真2枚に対応する映像を放映したこと。
   写真は、いわゆる500円玉のバターコインをフォールディングコインと同じ使い方によって、ペットボトルの口から折り曲げて中へ入れる様子を撮影したものである。なお、「硬貨に穴開けマジシャン逮捕 売り上げ3億円!!」とのテロップまでもが流され、ギミックコインの売り上げだけで3億円の売り上げがでたとしか解釈できないテロップが流された。

【被告テレビ朝日について】
1 甲2の4の1(ワイド!スクランブル(2006年11月15日放送)1頁より)
  以下のナレーションと共に、1頁目写真3枚に対応する映像を放映したこと。
  いわゆる「バイツアウトコイン」についての種明かしの状況である。
  丸川氏により「一見普通の百円玉にみえますが、実はこうして折れ曲がるように、この縁の部分にゴムが仕込んであるんです。」とナレーションが入ると共に、実際にバイツアウトコインを片手に、折れ曲がる様を映像で放送した。
2 甲2の4の3(スーパーJチャンネル(2006年11月15日放送)6頁より)
  以下のナレーションと共に、8頁目(1:40)~9頁目(1:48)にかけての7枚の写真に対応する映像を放映したこと。
  「龍円 こちら、一見普通の百円玉にみえますが、このようにマジシャンがまるでかみちぎったようにみせる加工がしてありました。」(8頁3行目~9頁1行目)
  龍円氏による100円玉のバイツアウトコインの種を暴露したものである。100円玉が食いちぎられる様を撮影した後、種の部分である「かみちぎったように見せて部分的にコインの裏側へ折り曲げて隠してしまう様」を暴露している部分が放映された。
3 甲2の4の6(やじうまプラス(2006年11月16日放送)27頁より)
(1)以下のナレーションとともに、27頁(0:29)~28頁(0:43)までの8枚の写真に対応する映像が放映されたこと。
   「龍円 こちら一見、普通の百円玉にみえますが、このようにマジシャンがまるでかみちぎったようにみせる加工がしてありました。」(27頁下から3行目~最終行)
   写真は、龍円氏による100円玉のバイツアウトコインの種を暴露したものである。100円玉が食いちぎられる様を撮影した後、種の部分である「かみちぎったように見せて部分的にコインの裏側へ折り曲げて隠してしまう様」を暴露している部分が放映された。
(2)以下のナレーションとともに、33頁目の写真全て及び34頁目(4:04)までの写真に対応する映像が放映されたこと。
   「龍円 こちら一見、普通の百円玉にみえますが、このようにマジシャンがまるでかみちぎったようにみせる加工がしてありました。」(33頁)
   写真は、いずれも龍円氏による100円玉のバイツアウトコインの種を暴露したものである。100円玉が食いちぎられる様を撮影した後、種の部分である「かみちぎったように見せて部分的にコインの裏側へ折り曲げて隠してしまう様」を暴露している部分が放映された。
4 甲2の4の8(ワイド!スクランブル(2006年11月17日放送)44頁より)
  以下のナレーションとともに、50頁目(6:18)(6:20)、(6:26)(6:27)51頁目の写真に対応する映像が放映されたこと。
  「大和田 鮮やかだね。これはあのー、今回問題になった、まあ実際のそのコインなんですけど、まあみてみると、こういうふうに折れるように改造してある。でー、ま、この百、百円玉も普通にみえるんだけど、こう曲がるように改造してある。そして、まぁ、これはもうわかりやすいんですが、百円玉、穴があけてあって、ここにたばこを通したりするように偽造している。」(50頁8行目~51頁2行目)
  写真(6:18)(6:20)は、キャスターの大和田氏が、500円玉のフォールディングコイン(二つ折りタイプ)を折って、種を明かしているシーンが撮影・放映されたものである。
  (6:26)(6:27)の写真は、同じくキャスターの大和田氏が、100円玉のバイツアウトコインの種の部分を折り曲げて種を明かしているシーンである。
  51頁目の写真は、キャスターの大和田氏が100円玉シガースルーコインの中央穴あき部分を強調して、カメラに示しているシーンである。

第4 アメリカ合衆国における貨幣損傷等の取り扱いについて
   被告テレビ朝日が引用した法令に関しては、残念ながら日本における貨幣損傷等取締法の射程範囲と異なるものであり、的はずれである。以下に解説を加える。
   2006年12月に、米国において同様の法律が公布された。内容的には、5セント及び1セント硬貨の輸出、鋳潰し、処理の禁止についての法律である。米国内における報道(U.S.ミントプレス)によれば、金属の価格が急激に上昇した(1セント硬貨は1.12セントの価値が、5セント硬貨は6.99セントの価値がある)ことから、鋳つぶすことを禁止したとのことである。
   また、同趣旨の法律は、以前にも、金属の急激な上昇により、1967年から1969年にかけて銀貨の鋳潰しを禁止した法律や、1974年から1978年にかけて1セント硬貨の鋳潰しを禁止した法律があったと報道されている
   米国における同趣旨の法律の制定背景は、まさに貨幣損傷等取締法の立法趣旨(立法経緯)と全く重なるものである。
   米国内においても、当然ギミックコインは存在するが、それでは上記新法によってギミックコインの製造が禁止されるのかというと、もちろんそうではない。
   セクション82.2に例外規定が定められており、その(b)において、禁止規定は、教育、娯楽、装飾品、宝飾等の目的のためのこれらのコインの処理については、適用されるべきではない、とされており、ギミックコインが「娯楽目的」にあたることから、その製造は適用対象にはならないという扱いになる。
   つまり、上記法律が貨幣制度の維持を目的としており、仮に、原判決と同様に「米国発行の貨幣に対する信用を維持し、その円滑な流通を確保するとの観点」と捉えているとしたとしても、上記適用除外事由にあたる場合には、このような法益は犯されないとの認識に立つものということができ、いずれにしろ本件のような場合に、同法が適用されることにはならないのである。 

第5 マジックは、「秘された」「花」を楽しむ芸術であり、その花の仕組みが暴露されてしまっては、全く成り立たないのである。これは、人間で言うところのプライバシーと同じものであり、これが暴露されてしまっては人格的生存が成り立たないのと同じである。
   花伝書には、「秘事といふことを現はせば、させることにてもなきものなり。これを、させることにてもなしという人は、いまだ秘事といふことの大用知らぬがゆゑなり。」(講談社文庫 川瀬一馬訳:秘事ということの内容を暴露して見れば、たいしたことでもないものである。それを秘事というものはたいしたことでもないと言う人間は、まだ秘事ということの大きな効果を知らないからだ。)とある。
   芸における秘事は、芸人だけが守ろうとしても守れるものではない。秘事を守ることにTV局をはじめとするマスコミも協力しろとは言わないが、積極的に暴露してよいとする合理的な理由は全くないし、本件においても暴露してよい理由は全くない。
   最低限のルールとして、このような秘事を暴露するに当たっては、それを守っていこうとする専門の団体、それぞれの芸能界があり、マジックの世界においても、(社)日本奇術協会、SAM等の団体があるのだから、事前のお伺いを立てるべきであったし、そうすべき義務が被告らにあったと認定することは、社会通念上当然のことである。
   本件において、御庁におかれては、このような被告らの義務違反を見過ごすことがないよう、公正かつ文化的な判決を求める次第である。
以   上

投稿者 ono : 2008年09月08日 11:37

コメント

小野さんの書かれた準備書面をみながら
いろいろツテをたよりに得たタネあかし映像を見た正直な感想は

「ニュースとはいえここまでしていいの?」です

日本の法律は意外と目が粗く
どちらにも解釈できるようにできているものが多いですね
マスメディアの報道が解釈の方向を決め付けてしまうのはあまりいいことではありません

「報道の自由」と「芸(職業上)の秘事」
それよりも「めずらしい事例」ということで
格好の報道ネタにされてしまったのがやるせないですね・・・


投稿者 希美 : 2008年09月09日 05:57

面白ければ何でも良い、という風潮が、マスコミに限らずあるように思います。
面白いことは、裏で泣いてる人がいるかも知れない、ということを一度立ち止まって考えることが必要ですね。

投稿者 小野 : 2008年09月09日 16:13

裁判長すぎ

投稿者 東洋 : 2008年09月20日 16:54

数字(視聴率)の為ならなんでもやります!byTV朝日
…って感じだね。

投稿者 社怪人 : 2008年09月23日 01:02

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