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2007年08月14日
【マジック裁判・刑事】ギミックコイン刑事裁判控訴審始まる!!
昨日、午前11時より、ギミックコイン刑事裁判(貨幣損傷等取締法違反および関税法違反被告事件)の控訴審が、東京高等裁判所にて始まりました。
今回の法的主張のポイントは、紙幣との均衡論と、比較法的な視点です。
以下、控訴するにあたって裁判所に提出した、「控訴趣意書」および「補充書」を掲げますので、興味のある方は是非お読み下さい。
なお、裁判官には、コインに手を加えることと、紙幣を破ることと、どちらが犯罪のにおいがするのか区別できるか、そしてそれらをマジックという不思議を演出する芸術に絡めるとどういう印象を実際持つのか、ということを実感してもらうために、紙幣を用いたマジックの実演を試みましたが、残念ながら採用してもらえませんでした。
とはいえ、こちら側から要請した藤山新太郎証人の尋問、被告人質問、書証(アメリカにおける貨幣損傷等取締法の法文等)は採用してもらうことができ、最低限の裁判にはなったように思います。
今回の控訴審では、検察庁の威信もあってか、控訴審の第1回の前に、検察官から「答弁書」がとどき、それとともに、分厚い資料がとどきました。
また、外にも、財務省に対して、貨幣損傷等取締法についての資料がないか、調べてもらっているそうで、是非こちら側もその資料を見てみたいという思いもあり、その資料の検討を待って結審ということになりました。
次回は、9月12日午前11時より、東京高等裁判所718号法廷にて行われます。
では、趣意書の方、また長いですが、心してお読み下さい(笑)。
平成19年(う)第1178号
控 訴 趣 意 書
平成19年6月13日
東京高等裁判所第3刑事部 御中
被告人 A
弁護人 小 野 智 彦
第1 原判決は、法令の適用において誤りがある、つまり、貨幣損傷等取締法及び関税法の本件への適用は不当であって、原審において主張したとおり、無罪であることを確信する。以下、理由を述べる。
第2 貨幣損傷等取締法違反について
1 原審における弁護人の主張は、原判決4頁記載の3点(①乃至③)である。しかしながら、弁護人は、原審における弁論において、貨幣損傷等取締法の適用においては慎重にならなければならない理由として、既に立法の経緯が現在において当てはまらないことを主張すると同時に、現実的に、本法の適用対象がマジック用コイン(以下「ギミックコイン」という)以外に考えられないことからすると、およそ法律は一般的・抽象的なものでなければならないというテーゼ(憲法41条)に反し、法令違憲の可能性すら否定できないことから、その適用には慎重でなければならないとの警鐘を鳴らしたものの、この点についての原判決におけるコメントは全くなかったどころか、安易に立法事実の変遷まで持ち出して、安易に同法の適用をした内容になっている。
以下、原判決のマジックに対する認識不足から曲解された原判決の内容を指摘するとともに、比較法的な観点をも考慮して、詳述することとする。
2 立法事実の変遷について
原判決5頁によれば、「弁護人は、貨幣損傷等取締法が貨幣の券面額よりもその地金自体の価格の方が高く不釣り合いであった時代に貨幣を鋳つぶして地金として販売することを防ぐ目的で制定されたもので、現在はそのような状況はなく、同法はその使命を終えたと主張するが、同法は、日本国政府発行の貨幣に対する信用を維持し、その円滑な流通を確保するとの観点から、特にその貨幣としての経済的価値が比較的低いが故に損傷等されるおそれがあるとしてかかる行為を処罰の対象としたものと解されるから、現在においてもなお一定の存在意義を有しているというべきである。」と判断している。
(1)原判決が「同法は、日本国政府発行の貨幣に対する信用を維持し、その円滑な流通を確保するとの観点から」と指摘し、保護法益を貨幣に対する信用維持及びその円滑な流通の確保と捉えた点についての問題点
ア 紙幣との均衡論
同法の対象は、あくまでも硬貨であって、紙幣は含んでいない点において、仮に同法の保護法益が原判決指摘のような内容のものであるとすれば、片手おちであり、バランスを失することは明らかである。
原判決が指摘するような保護法益は、既に刑法において通貨偽造・変造罪によってカバーされているのであり、かつ、同罪が「行使の目的」を特に構成要件要素として掲げたのは、そのような目的があってはじめて通貨の円滑な「流通」が害される危険が発生するからなのであり、「行使の目的」を構成要件要素としない同法において、さらに貨幣の円滑な「流通」を保護法益とするのは、矛盾である。
また、原判決が「特に貨幣としての経済的価値が比較的低いが故に故意に損傷されるおそれがある」と判示したことの意味が不明である。現在の通貨が本位貨幣ではなく、全て補助貨幣であることから、貨幣自体の経済的価値が低いという意味であれば、なぜ硬貨のみが処罰対象とされ、紙幣が処罰対象とされないのかを説明できない。そもそも紙幣は、「紙」なのであり、硬貨の材料となっているアルミ、銅等に比べると、さらに経済的価値は低いものである。
他方、そうではなく、同じ補助貨幣とはいえ、紙幣は高額通貨に使用され、硬貨は低額通貨に使用されるという意味において、硬貨が具現する経済的価値が低いという意味であれば、ことマジックの世界においては、硬貨、紙幣を問わず、真価に加工がされることはよくあることであり、テレビ画面において、セロ氏やミスターマリック氏が、紙幣の一部を破って復元させたり、或いは、火のついたタバコを1万円札に通して焼き切った後に復元させたりした場面を、ほとんどの国民が見たことがあるはずである。貨幣が具現する経済的価値の高低と損傷のされやすさということの間に因果関係が全くないのは、マジックの世界においては高額紙幣を用いた方がより不思議に見えることからも裏付けられるし、また、マジックの世界以外でも、紙幣は破っても銀行へ行けば新しいものに交換してくれるし、半券を持って行っても残存物の価値に応じて換金してくれる扱いがされている事実からしても、容易に説明できるところである。
イ 比較法的な観点
2006年12月に、米国において同様の法律が公布された。内容的には、5セント及び1セント硬貨の輸出、鋳潰し、処理の禁止についての法律である。米国内における報道(U.S.ミントプレス)によれば、金属の価格が急激に上昇した(1セント硬貨は1.12セントの価値が、5セント硬貨は6.99セントの価値がある)ことから、鋳つぶすことを禁止したとのことである。
また、同趣旨の法律は、以前にも、金属の急激な上昇により、1967年から1969年にかけて銀貨の鋳潰しを禁止した法律や、1974年から1978年にかけて1セント硬貨の鋳潰しを禁止した法律があったと報道されている。
米国における同趣旨の法律の制定背景は、まさに本法の立法趣旨(立法経緯)と全く重なるものであり、本法の立法趣旨を原判決のように殊更に曲解する必要は全くないし、原判決のように変更する合理的理由は全くないのである。
むしろ、米国における同趣旨の法律が、立法趣旨が妥当しなくなった時点で廃止されているところからすれば、日本においても同様の立法趣旨が妥当しなくなった時点において廃止されるべきだったのであり、廃止しないでそのまま適用もされないまま今日まで放置されていたことに、国会の法律の廃止をしないという怠惰な不作為状態が継続していたのであって、むしろこのことに問題がある。
米国内においても、当然ギミックコインは存在するが、それでは上記新法によってギミックコインの製造が禁止されるのかというと、もちろんそうではない。
セクション82.2に例外規定が定められており、その(b)において、禁止規定は、教育、娯楽、装飾品、宝飾等の目的のためのこれらのコインの処理については、適用されるべきではない、とされており、ギミックコインが「娯楽目的」にあたることから、その製造は適用対象にはならないという扱いになる。
つまり、上記法律が貨幣制度の維持を目的としており、仮に、原判決と同様に「米国発行の貨幣に対する信用を維持し、その円滑な流通を確保するとの観点」と捉えているとしたとしても、上記適用除外事由にあたる場合には、このような法益は犯されないとの認識に立つものということができ、いずれにしろ本件のような場合に、同法が適用されることにはならないのである。
(2)結論(本法が紙幣を対象としていないこととの理論的な整合性)
あくまでも、本法の保護法益は、原審において弁護人が主張したところにとどまるのであり(貨幣制度に対する信頼の保護は、あくまでも立法経緯で述べた点に限られる)、この範囲において特に硬貨についてのみ規制をかけるべき理由があったと解さなければ、紙幣を対象としていないこととの整合性がとれないのである。
よって、原審のごとく本法の保護法益を広く曲解した原判決は、その解釈において誤りがある。
3 違法性阻却事由の有無について
(1)正当業務行為について
上記のごとく、そもそも教育、娯楽、装飾等の目的によるものは、構成要件から排除されるべきであるし、米国においては適用除外になっているところである。
米国において適用除外になっているということは、米国においては社会的に見てそもそも違法な行為とはいえないという認識があるからであって、社会的に見て相当な行為であることが明らかであるからである。
国民性等の違いから、多少の価値観の違いはあるものの、社会常識の点において大きな隔たりがあることは、経験則上考えられないところである。
例えば、義務教育中の理科の実験で、アルミに熱を加えるとアルミを構成する分子が分離をはじめ、アルミ自体が軟らかくなるということを証明するために、1円玉をアルコールランプであぶって子供の力でも曲げられるという授業を受けたことがある人は数多くいるものである。しかしながら、この実験を「法律違反だ、刑事罰に値する」などと声高に主張する人はまずいなかろうと思われる。この原理を利用したメタルベンディングというマジックの分野があるが、マジックとして行うと社会的に不相当になるのであろうか。教育の現場にマジックを導入する動きは近時顕著であり、マジックと見せかけて、「実は科学的な根拠があるのです。」というコンセプトで授業を進める先生方も多くいる。NHKの教育番組等においては、米村でんじろう氏が有名である。
弁護人の見解としては、違法性の阻却の前にそもそも片づくはずの問題であると考えているほどであり、何故に「社会的に不相当」なのかの理由が、原判決からは理解できない(原判決は、貨幣損傷等取締法の趣旨をも理由の一つとするが、原判決の認定した趣旨が誤った解釈に基づくものであることは既に述べたとおりである。)。
(2)可罰違法性について
可罰的違法性の問題においても、弁護人は「質的な」可罰的違法性の問題を提起したにもかかわらず、それに対する回答にもなっていない検察官による「量的な」可罰的違法性についての主張をそのまま採用しており、実質的な審理がなされていない、杜撰な判決内容であると言わざるを得ない。
第3 関税法違反について
1 原判決は、関税法が貨幣の変造品を輸入禁止する目的を「貨幣に対する信用を保護し、経済秩序を維持することにある」(6頁)とするが、貨幣損傷等取締法の目的同様、貨幣に対する信用の保護については、どれほどの要保護性があるのか、根拠不明確な電子マネーが乱立状態にある現状から甚だ疑問である。つまり、貨幣への損傷、貨幣の変造等が引き起こす貨幣に対する信用毀損は物理的に限度があるが、むしろ電子マネーが引き起こす貨幣に対する信用毀損の方が、深刻な問題であると思われる。
貨幣等の信用の保護は、偽造貨幣、変造貨幣が流通過程におかれることを目的とすることによって初めて犯される危険に曝されるのであって、抽象的に変造品が存在することによって、貨幣等の信用の保護が犯されるわけではない。ましてや、手品用に使われるギミックコインは、あくまでも手品用にしか利用することができず、かつ、額面の数十倍の価格を費やしてまで購入するものであって、このようなギミックコイン所持者は、誤って流通過程におかないために、専用の小銭入れを用意しているほどである。
このような事情から考えるに、手品用のギミックコインが、仮に同法の「貨幣の変造品」に形式的にあたるとしても、保護法益を犯す抽象的な危険すらないものであることから、やはり構成要件に該当しないと言わざるを得ないのである。
第4 憲法21条1項違反について
1 原判決は、「手品ないしマジックを演じる自由が表現の自由(憲法21条1項)に含まれるものとして保障されるとしても、その自由が公共の福祉による制約を受けるのは当然のこと」とし、立法目的の正当性を論じ、かつ、各罰則規定がその目的達成の手段として必要最小限度の規制と判断している。
(1)立法目的の正当性について
原判決が示した貨幣損傷等取締法および関税法の立法目的が、妥当性を持ち得ないことはすでに述べたとおりである。
また、仮に、万が一、ギミックコインを製造することによって原判決が指摘するような保護法益が侵害される抽象的な危険があるとするのであれば、実際に所持することの方がその危険はより高まるのであって、製造だけを処罰し、所持を処罰しないのは片手落ちのそしりを免れない。
いずれにしろ、原判決が指摘する立法目的は正当性を持たず、元に戻って原審において弁護人が指摘した、貨幣損傷等取締法の立法趣旨が現在においてもはや妥当する立法事実がないことは、原判決が暗に認めているとおりである。
(2)立法目的達成手段の必要最小限性について
原判決によれば、各罰則規定が必要最小限度の規制との判断である。原判決が認定する、各法律の立法目的そのものが妥当なものではないこと、先に述べたとおりであるが、仮に目的そのものが正当であったとしても、必要最小限、つまり、より制限的でない他に選びうる手段がないとは到底言えない。
原判決によれば、「確かに、これらの法律により、日本円の貨幣を材料としたギミックコインによるマジックを行うことは事実上困難になる」ことを認定しており、この点においては正しい認識といえる。
しかしながら、そもそも規制手段の必要最小限性を検討すべきところ、原判決は「これらの法律は、マジックを演じる自由を直接規制するものではないから、マジックを演じる自由に対する公共の福祉に基づくやむを得ない制約」と全く的はずれな判断を示しているのである。
過去において、特に貨幣損傷等取締法が適用された事例は、本件及びギミックコインの作成についての事件に限られ、しかも、いずれも遡ること1年以内に起訴された事例であり、現在この法律は、実質的にはマジック規制立法としての役割を担わされており、多いに問題であることは、すでに原審の弁論において述べたとおりである。
そして、「演じる自由そのものを規制するものではない」というのは、もはや詭弁であり、演じる道具の作成、輸入がいずれも規制されているということは、もはや演じる手段がないということであり、ひいては演じる機会が奪われたということに等しいのであり、コインマジックの一分野とはいえ、ギミックコインを用いたコインマジックの重要性に鑑み、その規制はコインマジックを演目に加えるマジシャンにとって、耐え難い制約なのである。
すでに米法との関係でみたように、教育、娯楽、装飾、宝飾の目的の鋳つぶしの場合には、貨幣損傷等取締法の目的である貨幣制度の維持は守られることから、少なくともこのような目的か否かの境界線が明確になれば、敢えてこれらの目的の場合の鋳つぶし(損傷を含む)を罰則によって規制する必要はないものと考えられる。
そして、そのような境界線を明確にするための手段は、許可制、免許制、登録制を導入することで十分に可能なのである。
同様に製造そのものを処罰する法律として、大麻取締法が存在し、同法は免許制(第2章)を採用し、第3条第1項において「大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。」と規定し、罰則も、同法24条により、「みだりに」との要件を掲げて免許を得た者を適用除外し、かつ、「営利の目的で」と要件を絞る等、刑法の謙抑主義的思想を良く反映しているし、どういう場合に罪になるのかどうかという明確性も確保されており、国民の行動予測性も担保されており、罪刑法定主義(憲法31条)の観点からも妥当な規制手段といえる。
しかしながら、貨幣損傷等取締法の場合には、そのような限定がないどころか、貨幣損傷等取締法および関税法の各規定が表現の自由に対する規制としての側面を有しているにもかかわらず、そして、そのような精神的自由権を規制する法律については、その萎縮的効果を国民に及ぼさないようにするべく、国民の行動予測性がたつように、その規定の内容は明確でなければならず、また、明確であったとしてもその適用対象が過度に広汎であってはならないにもかかわらず、何等の限定を付けずに「損傷」の一言で行為を規制する同法の規定は、そもそも憲法21条1項、31条に違反すると解すること(法令違憲)が十分可能である。
いわんや、上記のような免許制等を採用することにより、同法が保護しようとする法益は十分に確保できるのであって、より制限的でない他に選びうる手段が存在することが明らかである以上、必要最小限の規制とは断じて言えるものではないのであり、適用違憲であることに疑いはない。
なお、エンターテイメント界における「表現」の重要性が再認識されている昨今において、その法律的保護は十分になされるべきであり、これまで日本国内において軽視されてきたことに対する運動の一環として、NPO法人エンターテイメント・ロイヤーズ・ネットワーク(弁護士久保利英明会長)が設立され活動されているほどであり(弁護人もその一員)、そのような意識すらない昭和22年制定の法律が今なおそのままの姿で残っていること自体が問題であるし、いわんやそのような法律を適用するなどは言語道断であるといわなければならないことを付言しておく。
第5 結論
以上のとおり、原判決には法令の適用において誤りがあることを、御庁におかれましては慎重に検討して頂いた上で、本件への貨幣損傷等取締法及び関税法の適用が不当であることを判断して頂き、原判決破棄の上、是非とも無罪判決を頂きたい。
以 上
平成19年(う)第1178号
控訴趣意書補充書
平成19年8月2日
東京高等裁判所第3刑事部 御中
被告人 A
弁護人 小 野 智 彦
第1 マジック用ギミックコインの流通の可能性
1 マジシャン気質について
裁判所には、マジシャンの気質というものをまず理解して頂きたい。
マジックを演じる者をマジシャンと言うが、マジシャンという生き物は、およそ投資に見合った回収というものを考えず、考えるとするならば自ら演じたマジックによって、どれだけお客さんや周りの方が喜んでくれるかという、一点に尽きる。
いわゆるマジックを演じるだけで生計が成り立つ専業プロマジシャンは、残念ながら多くないため、世の中のマジシャンの大半はアマチュアマジシャンである。
マジックの道具は、得てして高額であり、特にギミックコインに関しては、一般人から見たら想像もつかないくらいの金額である。しかしながら、無理をしてでも、アマチュアマジシャンはこれを購入するのである。アマチュアであるが故に、これに投下した資本を回収する術は全くない。ただ単に、周りの人間を楽しませよう、周りの人間の笑顔が見たいという、純粋な気持ちから、一般人から見たらばかばかしいと思うような高額の出費も惜しまないのが、マジシャンの気質である。
2 マジック道具を販売する側の気質(特に被告人の場合)
販売する側であった被告人は、やはりマジックを演じる側の人間、つまりマジシャンであるが故に、マジシャン気質を良く理解している。また、そういうマジシャンの気質を良く理解しているが故に、ギミックコインが欲しいと頼まれれば、喜んで探してきて提供してあげたいとの姿勢の元に、仕入れ、販売を行ってきた。
このようなマジシャンの気質を理解した、道具の提供者として、マジシャンを応援したい気持ちは、これまでギミックコインの製造、輸入によって刑事裁判になった例がなかったことからしても、決して責められるようなものではない。
3 日本円のギミックコインの販売方法について
販売する側としては、通常、ギミックコインを買いに来たお客様に対しては、外国のコインをまず勧めるとのことである。なぜなら、値段的に見て日本円に比べると手軽であること、そして、日本円のギミックコインの存在が外国のコインに比べて知られておらず、不必要に日本円のギミックコインを勧めることはかえってマジシャンの首を絞めることになることからである。
4 以上のことから、日本円のギミックコインを購入する人というのは、相当程度のマジックマニアと呼ばれる人たちであり、ギミックコインを一旦購入したならば、それをマジックを演じる道具としてのみ使うことを予定しているのであって、また、後生大事にそのコインを保管する人たちであって、実社会において不必要に、ギミックコインが出回り、真価との混同が生じるような状況はおよそ考えられないのである。
つまり、ギミックコインが真価と共に流通する可能性はないことから、本件のごとき被告人の行為は、何ら法益侵害を犯していないものである。
第2 必要最小限度の規制か否か
1 マジック関係者、また、弁護人としても、貨幣損傷等取締法を全面廃止して、ギミックコインが全面的に解禁になり、いつでもどこでも誰でもが容易に日本円のギミックコインが入手できるようになることを歓迎しているわけではない。
これまでのところ、マジック業界(販売側)としては、日本円のギミックコインによる現象の不思議さが強烈であることから、そのネタの不思議さを保つために、その機密性を保持しなければならず、そのための手段として、値段を高く設定するという状況にあった。
今回、原審判決により、改めて有罪判決が下りたことにより、市場にある日本円によるギミックコインは、ますます闇取引の対象となり、値段も破格につり上がった金額で取引されるようになっている。果たして、有罪判決を下すことにより、闇取引の世界へ追いやることが解決になるのだろうか。
2 アメリカにおける同法の規定では、適用除外の場合を明確に規定し、一つは教育、娯楽、装飾品、宝飾の目的、或いは、単にコインの金属部分の価値から利益を得る手段として用いるものではないと明確にされる限り、適用されないと規定することにより、境界線を明確に引くことによって一つの解決を図っている。マジックの先進国であるアメリカ合衆国の配慮である。
また、同法は、財務省長官により発行された免許を有する場合には、同様に適用除外になっている。一律に禁止するのではなく、免許制を採用することによって、必要最小限度の制限とする措置がとられており、あたかも趣意書で弁護人が指摘した、大麻取締法と同様の構造であり、比較法的に見ても、貨幣損傷等取締法に同様の規定をおけない理由はない。
3 これらの点を勘案するならば、セクション82.2(b)(c)に相当する規定の置かれていない貨幣損傷等取締法は、必要最小限度の制限を超えるものとして、原審において主張したのと同じく、憲法21条1項違反であるとの判断を免れないものである。
以 上
投稿者 ono : 2007年08月14日 18:07